封神演義 


3 「太公望、世に出る」


はてさて、崑崙山(こんろんざん)に住まう元始天尊は、自分の弟子の一人である姜子牙(きょうしが=後の太公望)に、人間界に戻るよう命じた。時に仙人達が千五百年に一度の殺戒を犯す時期が近付いており、の王朝交代をめぐる戦いに便乗してこれを解消させることになった。仙界を二分する闡教(せんきょう)截教(せつきょう)、そして人道(仏教)の指導者達は、この殷周革命による戦死者から人間・仙人を問わず三百六十五名を選び出し、神に任命することを取り決めたのだった。姜子牙の宰相としてを滅ぼし、最終的に神々を任命する封神の儀を執り行うことが運命づけられているのであった。姜子牙、七十二歳の時のことである。

下山した姜子牙は、旧友の宋異人をたよって色々な商売を始めるが、どれもうまくいかない。しかし占い師になったところ、よく当たると評判になった。そこへ妲己の義姉妹である玉石の琵琶の精が人間に化けてひやかしに現れた。姜子牙はその正体を見破って退治し、この事件がきっかけになっての下大夫に取りたてられた。

紂王妲己は相変わらず酒池肉林のぜいたくにふけり、残虐なふるまいを繰り返した。姜子牙鹿台(ろくだい)の建築に反対したことから朝廷を追われ、姫昌の領地である西岐へと亡命した。上大夫の楊任(ようじん)も紂王を諌めて目をえぐられたが、すんでの所で清虚道徳真君に救われた。

姫昌の長男・伯邑考は七年たっても父が戻って来ないので、父の赦免を願いに朝歌に赴いた。妲己は美少年である伯邑考を愛人にしようとするが、すげなく拒絶されてしまう。これを恨みに思った妲己伯邑考を殺させ、彼の肉を使って作った料理を姫昌に無理矢理食べさせたのだった。西岐に残った家臣達のはたらきによって姫昌は赦免され、更に文王(ぶんのう)と名乗ることが許された。しかし紂王の気が変わり、の軍隊に追われることになる。そこを七年前に養子にし、修業によって怪物のような姿になった雷震子に救われ、無事西岐に帰り着いたのであった。そして姫昌伯邑考の肉を吐き出し、それらはウサギとなって去って行った。

さて、朝歌を逃げ出した姜子牙はといえば、han.gif (129 バイト)(ばんけい)という所に隠れ住み、毎日釣りをしてくらしていたのだが、ある日、武吉(ぶきつ)という木こりが誤って役人を殺してしまい、刑を受けるところを術を使って助けてやり、彼を弟子にした。その頃姫昌は、自分を補佐すべき賢人が現れることを暗示する夢を見た。そしてその賢人を捜し求め、木こりの仕事に戻っていた武吉を発見したことからついにhan.gif (129 バイト)で釣り糸を垂れる姜子牙と巡り逢ったのである。姜子牙姫昌の祖父・太公がまち望んでいた賢人であることから太公望と呼ばれ、西岐の宰相の地位に就いた。

その頃、朝歌では妲己が部下の妖狐たちを仙人に化けさせて鹿台での宴に招いた。この仙人たちの正体を知った武成王の黄飛虎紂王の叔父の比干(ひかん)は、この妖狐たちを殺させた。これを知って怒り狂った妲己は、まずは知恵袋として義姉妹の胡喜媚(こきび=九首の雉の精)を呼び寄せ、芝居をうって比干の心臓を引き裂かせてしまう。その直後、太師の聞仲(ぶんちゅう)が外征を終えて朝歌に戻って来たが、紂王の暴虐と朝政の乱れに驚き、紂王を諌めて体制の建て直しを計る。しかし折り悪しく東海平霊王が反乱を起こし、聞仲はその鎮圧のために再び朝歌を発った。

姜子牙は、北伯侯の祟侯虎紂王の暴政に加担していることを知り、姫昌を説得して祟侯虎討伐の軍を起こした。祟侯虎の弟・祟黒虎の協力を得て彼を討ち取ったが、彼の生首を見たことが原因で姫昌は病にかかり、とうとう息をひきとってしまった。姫昌の次男・姫発(きはつ)が父の後を継ぎ、武王と名乗った。


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