blueball.gif (1613 バイト)  はじめに  blueball.gif (1613 バイト)


『隋唐演義』は、隋の天下統一から唐玄宗の時代に起こった安禄山の乱までを物語化した小説である。物語の前半から中盤にかけては主に隋末唐初の動乱期を舞台に、主人公・秦叔宝や程咬金、単雄信、羅士信といった「瓦崗塞の健男児」たち、或いは花木蘭(ディズニー映画「ムーラン」の主人公としておなじみ。)・花又蘭の姉妹、竇線娘といった女傑たちの縦横無尽に活躍するさまを描いている。主人公・秦叔宝は隋将の張須陀や、瓦崗塞の李密といった群雄のもとを渡り歩くが、最終的に李世民に仕え、唐の天下統一に力を尽くすことになる。

物語の後半では、則天武后の簒奪と、玄宗と楊貴妃との愛、そして安禄山の乱を虚実を織り交ぜて描いている。前後約180年間の歴史を描いた長編であるが、登場人物の輪廻転生を軸にしてうまく話をつなげている。

『隋唐演義』の、特に前半部分に出てくる人物やエピソードは中国ではよく知られており、京劇の題材にもなっているが、日本でも近年訳本が出版されて、その存在が認知されるようになった。訳本は、田中芳樹氏の手により翻訳された徳間書店版(全五巻)と、安能務氏訳の講談社版(全三巻)が出版されているが、どちらもあまり出来は良くない。(最後の「覚書」で、この二種の訳本を詳しく紹介する予定である。)しかし徳間書店版が比較的原典に忠実であると思われるので、こちらをベースにして今回のダイジェストを作成していくことにした。


blueball.gif (1613 バイト)  登場人物紹介  blueball.gif (1613 バイト)


瓦崗寨の健男児

秦叔宝…諱は瓊(けい)。義侠心あふれる豪傑で、物語の前半の主人公。孝行者として有名で、戦場では二本のkan2.gif (136 バイト)(かん)を振り回す。

単雄信(ぜんゆうしん)…秦叔宝等多くの豪傑と交わりを結ぶ豪族。兄の仇である李淵一家と敵対。

程咬金(ていこうきん)…諱は知節。秦叔宝の幼なじみ。粗野でひょうきんな性格の豪傑。

李密…字は玄邃(げんすい)。野心あふれる隋末の群雄の一人。瓦崗寨の主・teki.gif (122 バイト)(てきじょう)を殺して寨主の地位を奪い、魏公となるが、後に部下を見捨てて唐に降伏。

王伯当…諱は勇。秦叔宝の友人で、篤実な性格。李密の才能に惚れ込み、彼と行動を共にする。

徐懋功(じょぼうこう)…諱は世勣(せいせき)。十代で瓦崗寨に身を投じて軍師となり、唐に降伏後も李淵・李世民から重んじられて唐の宿将となる。国姓を授けられ、後に李勣と会盟。

羅士信…勇敢な少年で、秦叔宝の義弟となる。後に王世充の手に掛かって壮絶な最期を遂げる。

魏徴…元々は道士であったが、縁あって瓦崗寨に身を投じる。唐に降伏後も文官として李世民から重んじられた。

寧夫人…秦叔宝の母。動乱を逃れて息子を育て上げた。

秦懐玉…秦叔宝の息子。関羽の子孫・関大刀の協力を得て羅士信の仇を討つ。

隋朝の君臣・后妃

楊堅(文帝)北周の外戚であったが、禅譲を受けてを建国し、天下を統一した。

独孤皇后…文帝の皇后。嫉妬深い性格で、夫が皇帝となった後も妾を持つことを許さなかった。

楊広(煬帝)…文帝の次男。父母に取り入り、兄・楊勇を陥れて皇太子となる。即位後は外征・土木工事を繰り返し、更に十六院夫人と総称される美女達との陥落に耽って民衆の恨みを買った。

楊素宇文述とともに腹黒い謀臣で、楊広の立太子に尽力。越公に封じられる。

張須陀…隋の名将で、反乱軍の鎮圧に力を尽くす。来護児とともに秦叔宝の庇護者となる。

蕭皇后…煬帝の皇后で、穏やかな性格。夫と添い遂げることが叶わず、隋の滅亡後は数奇な運命を辿る。

朱貴児…煬帝の寵姫の一人。煬帝と来世も結ばれて夫婦となることを天に誓った。

袁紫煙…隋の名臣・楊義臣の姪で、女官として煬帝に仕える。天文を見て占うことが得意。隋の滅亡後は徐懋功の妻となる。

王義…煬帝の側近で忠義者。主君から姜亭亭を妻として与えられた。

趙王…煬帝と沙夫人の間に生まれた子。隋滅亡後は突厥の地に亡命し、後に正統河汗となる。

隋末の群雄・女傑

羅芸…幽州を占拠する豪族。秦叔宝の叔父にあたり、彼の庇護者となる。後に唐に降る。

羅成…羅芸の跡取りで、秦叔宝の従弟にあたる。敵方の竇線娘・花又蘭と恋に落ちる。

王世充…隋末の群雄で、鄭王となる。腹黒い陰険な人物として知られる。

宇文化及…隋の謀臣・宇文述の子。傲慢な性格で、動乱に応じて煬帝を弑して国を建てる。

竇建徳(とうけんとく)…隋末の群雄で、国を建てる。義侠として民衆に慕われた。

竇線娘…竇建徳の娘で、勇安公主とも呼ばれる。娘子軍を率いる女傑。敵将の羅成と恋に落ちる。

花木蘭…年老いた父に代わり、男装して突厥の兵として従軍。後に夏に降り、竇線娘と義姉妹の契りを結ぶ。その後突厥の河汗から妾となるよう強要されるが、それを拒むために自害した。

花又蘭…花木蘭の妹。死んだ姉と同様、竇線娘の義妹となるが、線娘の思い人である羅成に惚れられる。

唐王朝の君臣

李淵(高祖)…元々は隋の臣で唐公に封じられていたが、動乱に応じて反乱を起こす。隋の恭帝の禅譲を受けて大唐の皇帝となり、天下を統一。

李建成…李淵の長子で、皇太子。温厚な性格。李元吉とともに玄武門の変で誅殺される。

李世民(太宗)…李淵の次子。幼少の頃から才気にあふれ、父を焚き付けて隋に謀反させる。唐王朝の実質的な建国者で、兄弟を倒して唐の第二代皇帝となる。

李元吉…李淵の末子で、斉王に封じられる。兄の李建成とともに李世民を打倒しようとするが、逆に李世民に誅殺される。

平陽公主…李淵の長女。女ながらに武勇に秀で、娘子軍を指揮する。

柴紹…字は嗣昌。貴公子然とした人物で、李淵の娘の平陽公主を娶った。

尉遅敬徳(うっちけいとく)…胡族出身の猛将で、諱は恭。初め群雄の劉武周に仕え、秦叔宝と激烈な一騎打ちを繰り広げた。後に唐に降り、数々の軍功を建てる。

李靖…字は薬師。軍才に優れているが、長らく不遇の時を過ごす。李世民に仕えてから才能を発揮し始め、唐の宿将となる。

薛仁貴…諱は礼。高麗討伐に軍功を建てて太宗に見出される。

長孫無忌…唐の名臣で、妹は太宗の皇后。宰相として甥の高宗を操ろうとするが、則天武后との政争に敗れた。

武韋の禍

則天武后…元の名前は武照。太宗の妃であったが、高宗の寵愛を受けて皇后となる。気弱な夫に代わって政務を執り、遂には唐王朝を廃して周王朝を建て、中国史上唯一の女帝となった。

高宗…太宗の子。気が弱く、棚ボタで皇帝となれた。

太平公主…高宗と則天武后の間に生まれた娘。母と同様男勝りの性格。

武三思…則天武后の甥にあたり、権勢を振るう。好色な人物。

李敬業…李勣の孫。則天武后の専横に憤り、駱賓王(らくひんのう)らとともに反乱を起こした。

薛懐義…好色な破戒僧。則天武后の愛人となるが、傲慢な振る舞いが多く、誅殺される。

張易之・張昌宗…美少年の兄弟。則天武后に寵愛され、権勢を得る。

狄仁傑…則天武后に見出された官僚。有能で硬骨漢として知られる。

中宗…高宗と則天武后との間に生まれた子で、唐の第四代皇帝。母に皇位を廃される。

韋后…中宗の皇后。則天武后と同様、政権を握ろうとする。

上官婉児…則天武后と韋后に仕えた女官。文才に秀でている。

睿宗…中宗の弟で、唐の第五代皇帝。兄と同様母に皇位を奪われる。

玄宗期の人々

玄宗(李隆基)…睿宗の第三子で、武氏・韋后の勢力を討伐するのに功績があり、皇太子に任じられる。後に即位して善政を敷くが、政務に飽きて道楽に凝るようになる。

高力士…玄宗の忠実な側近である宦官。終生玄宗に付き従った。

梅妃…玄宗の寵姫であったが、楊貴妃が後宮に入ってからは寵愛を失う。

楊貴妃…諱は玉環、道号は太真。玄宗に寵愛されて終生添い遂げることを誓うが、安禄山の乱から逃れる途中、馬嵬坡で絞殺される。

楊国忠…楊貴妃の一族の男性。安禄山・李林甫と権勢を競い合う。

李林甫…有能であるが、陰険な性格の宰相。

安禄山…胡族出身で、玄宗・楊貴妃に気に入られて三つの節度使に任じられる。権力を一手に握るべく謀反を決意。

李白…詩仙と名高い酒好きの詩人。玄宗に気に入られるが、李林甫らに疎まれて宮中を去る。

張果・葉法善・羅公遠…玄宗に仕えた仙人。数々の奇跡を起こし、玄宗の尊崇を受けた。

秦国模・秦国…秦叔宝の玄孫にあたる兄弟。科挙に主席で合格し、玄宗の知遇を得る。

郭子儀…唐の武将。罪を得て死刑になるところを李白に助けられる。後に安禄山の乱の鎮圧に尽力。

肅宗…玄宗の子で、唐の第七代皇帝となる。李泌らの協力によって長安を奪回。


『隋唐演義』目次へ    ダイジェストへ