blueball.gif (1613 バイト)  隋唐演義  blueball.gif (1613 バイト)


4 瓦崗寨起つ


さて秦叔宝は五百の兵を引き連れて開河都護麻叔謀のもとに到着し、大運河の工事に従事することになったが、麻叔謀は腹黒いことで有名な人物。当然秦叔宝とはそりが合わず、彼を免職にしてしまった。彼も役人稼業に嫌気が刺していたところだったので、これ幸いと帰郷してしまった。秦叔宝は再三の仕官の誘いにも応じず、数年の間隠居を決め込んだ。その間、妻の張氏との間に長男・懐玉が生まれた。

煬帝はと言えば、相変わらず政治を省みることなく遊び暮らしていたが、ある日突然、激しい頭痛が彼を襲い、昏倒してしまった。これはもちろん、仙人の皇甫君煬帝の本体である大ネズミの頭を打たせたからである。皇后の蕭氏以下、妃たちは付きっきりで看病したが、一向に良くなる気配が無い。そこで朱貴児は自ら腕の肉を切り取り、それを薬湯に混ぜて煬帝に飲ませたところ、一気に病状が回復した。

煬帝は病状が改まると、今までの所業を反省せずにまたもや庭園に遊行し、十六院夫人と芝居や乗馬を楽しむといった遊蕩を繰り返す。中でも煬帝は自分の肉を捧げてくれた朱貴児を愛しく思い、遊行からの帰りに馬上で、朱貴児と「願わくは今世だけでなく、来世でも夫婦とならん。」と天に誓いを立てた。

大運河が完成させたことを知ると、煬帝は早速江南への巡幸の準備をさせ、それとは別にに朝貢を行わない高麗(ここでは高句麗のこと)の征伐を諸臣に命じた。大運河工事のために人夫が駆り出されたと思ったら今度は高麗征伐のための徴兵が行われる。これによって朝は完全に民心を失ってしまった。そして瓦崗寨(がこうさい)のteki.gif (122 バイト)(てきじょう)、義士として名高い竇建徳(とうけんとく)、劉武周梁師都李軌といった群雄が各地で立ち上がり、朝への反旗を翻したのである。

乱世の波は秦叔宝のもとにも訪れる。隠居から五年後に、単雄信の紹介を受けたと称して徐懋功(じょぼうこう)という青年が彼を訪ねて来た。彼はまだ十八歳だが、並外れた智略を持つ。秦叔宝はたちまちこの徐懋功と意気投合した。彼は三日ほど家に滞在した後、teki.gif (122 バイト)を訪ねて瓦崗寨へと向かった。また同じ頃、秦叔宝は付近の村で子供ながらに怪力を持つ羅士信という牧童と出会い、彼と義兄弟の契りを交わした。秦叔宝は彼を引き取って武芸を仕込んだが、その上達ぶりは常人とは思えないほどであった。

そんな秦叔宝のもとに来護児から「高麗征伐に同行してほしい。」という要請が届いた。秦叔宝は初めは渋っていたが、斉州の郡丞・張須陀(ちょうすだ)が直々に家にやって来て、彼と老母の寧氏を説得し、秦叔宝も留守を羅士信に任せて高麗征伐へと向かうことを決意したのである。

煬帝袁紫煙の叔父・楊義臣竇建徳一党の討伐を命じ、高麗遠征軍の編制をすませると、江南巡幸に同行する妃を選抜し、龍舟に乗り込んで出発した。彼は舟を引く殿脚女が暑さに苦しんでいるのを見て、運河の両岸に柳の木を植えさせて日差しから守ることにした。煬帝は何万本もの柳を見て大変喜び、これらの柳に国姓を授けて楊柳と呼ぶことにした。煬帝は舟中で呉絳仙(ごこうせん)という美少女を寵愛し、陸にいた時と同様に享楽に耽った。

高麗征伐の方はどうなったかと言えば、軍は三年の間戦いを続けたが、敗戦が続き、結局さしたる成果も挙げられずに撤退せざるを得なくなった。秦叔宝はそんな中でも高麗軍を蹴散らして武勲を挙げ、無事に生還することが出来たのである。帰郷後、秦叔宝羅士信とともに張須陀のもとに配属され、山東方面の賊軍を討伐することになった。

その頃、李密王伯当teki.gif (122 バイト)のもとに降って瓦崗寨の幹部となっていた。それより以前に瓦崗に到来していた徐懋功は、二十歳そこそこながら軍師として瓦崗寨を切り盛りしていた。三人は何とかして旧知の秦叔宝単雄信も仲間に引き込みたいと考え、まず李密二賢荘単雄信を訪ねることにした。

だが李密は天下のお尋ね者。しかも途中で役人に姿を見られてしまった。あいにく単雄信は家を留守にしていたが、執事の単全が彼を匿ったがために、二賢荘に官兵が押し寄せて来た。単全が何とか「李密など会ったこともない!」としらばっくれて官兵を追い返したが、そこへ折良く王伯当たちが現れ、単雄信の妻子や従僕を護衛してひとまず瓦崗寨に避難させることにした。単雄信は帰途についていたところを瓦崗寨の手の者と出会い、事情を聞くとそのままのteki.gif (122 バイト)のもとに向かうことにした。

単雄信瓦崗のふもとで一同の出迎えを受け、振義堂で宴会を開き、正式に仲間入りすることを皆に告げた。そして改めて瓦崗寨幹部の席次を定め、teki.gif (122 バイト)が寨主として第一席に座り、第二席に李密、第三席に軍師の徐懋功、第四席に単雄信、第五席に王伯当がそれぞれ着くことになった。

義勇の士が綺羅星の如く集まる瓦崗寨。あとは我らが秦叔宝の仲間入りを待つばかりだが、それについては次回にて。


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