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「光あれ (2)」 −−− 心、かがやく


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「気持ち・・・わるい・・・」

波打ち際に横たわるアスカから発せられた言葉が、新しい世界に漂う・・・。
その言葉を聴いた存在が、シンジの他にも、いた・・・。

その一人が、もう一方に語り掛ける。


「君は善かったのかい? シンジ君が、君と離れてしまっても?」

「あなたの目は節穴? 私と碇くんは、離れてはいないわ・・・」

「・・・確かに、シンジ君があそこで気がついた時、他の人には見えない君を
水面に見た。今でも、こうして彼を見ることは出来る。しかし・・・」

「あなたは判っていないのね。あの弐号機パイロットの包帯は何?」

「アスカくんのことか? 包帯?」

「彼女、どうして包帯しているの? 何時、誰が巻いたの?」

「・・・・・」

「上に馬乗りになった碇くんを見たあの目つき、何処かで見たことない?」

「・・・あれは・・・」

「誰かが初めの頃、碇くんと会った時と似ていない? 初めてケージで視線を
交わした時・・・。病院の廊下ですれ違った時・・・」

「心なしか瞳の色も・・・そうか! あれは、じゃあ・・・」

「2番目の私に、感情が生まれる直前の・・・心が溶け出す寸前の視線・・・。
それと同じなのよ・・・」

「アスカくんの心の中で、彼女の本物の感情が・・・溶け出してるって事か!」

「少し、手伝ってあげたけど・・・。間違いなく、彼女自身が出した答え。ア
スカが、碇くんへ想いを・・・自分で繋いだのよ。正直な感情を、はじめて。
そう、・・・私の・・・想いも一緒にして・・・ね」


綾波レイという存在だったモノは、シンジから教わったあの微笑みを顔に刻む。
それは、天上の輝きにも似ていた。


「絶望して尚、生まれる希望は・・・その希望こそは・・・永遠の灯なのよ。
碇くん・・・アスカ・・・あなたたちには、もうそれが在る筈よ。それが、
私からの二人への贈り物・・・。私を好きになってくれて、ありがとう、碇
くん・・・。そして・・・、がんばってね、アスカ」


砂浜にいる二人の頭上に月が昇る。

その月は、あくまでも控えめに・・・あくまでも静かに、夜空を彩っていたが、
昔の輝きを取り戻したかのように、銀色に、神々しく光っていた。



「光あれ」 かつて神は、こう言った

人は、人ゆえに、個であり

人は、人だからこそ、共にいたいと願う

人は、人であるがために、その想いを継いでいく

だからこそ、人の心は、多くの人との出会いによって創られ往く

それだからこそ、人は、輝き続ける



そして、この新世紀は、全てを知っている。

二人の「光」を繋いだ、一人の少女の想いもまた、永遠に輝くことを。




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