三侠五義 三侠五義
５ 覇王荘の馬強
さて、馬強という人物は、叔父の馬朝賢の権力を笠にきて横暴をはたらいていた。覇王荘に黒妖狐の智化・小諸葛の沈仲元（しんちゅうげん）・神手大聖の
車といった侠客を養い、皇帝の叔父・襄陽王と結託して謀反を企んでいた。杭州の新任太守・倪継祖（げいけいそ）は、馬強の横暴を訴える訴状を多く受け取ったことから、従者の倪忠とともに素性を偽って覇王荘に入り込み、自ら偵察に出向くことにした。しかしすぐに正体を見破られ、倪継祖は捕らえられて牢獄に閉じこめられてしまった。
しかし倪継祖主従は、馬家の女中の朱絳貞（しゅこうてい）によって助け出され、覇王荘から脱出した。しかし逃亡途中に馬強の追っ手に追いつかれ、倪継祖は再び捕らわれてしまう。倪忠は何とか逃げ延びて、その後偶然に北侠・欧陽春と出会う。彼は倪忠から一通り事情を聞くと、太守を助け出すために単身覇王荘へと乗り込んだ。
さて、馬強の食客のうち智化と沈仲元は、主人の横暴を快く思っていなかった。だから馬強が倪継祖を密かに殺してしまえと命じると、智化は自分からその役目を引き受けた。智化が沈仲元とともに倪継祖を逃がしてやると、そこに折良く欧陽春が現れた。智化と北侠は旧知の間柄である。三人の侠客はその場で馬強を捕らえる算段を付ける。そうこうしているうちに小間使いの少年・艾虎（がいこ）が太守の乗用にと馬を引いてやってきた。艾虎は智化の武術の弟子である。倪継祖はその馬に乗って覇王荘から脱出した。智化は馬強に、太守を処刑したと偽の報告をする。
役所に帰り着くと、倪継祖は早速捕り手を集めて、欧陽春とともに覇王荘を襲撃した。欧陽春は車や張華といった侠客を打ち倒し、馬強を引っ捕らえた。艾虎はかねてから尊敬していた北侠の活躍ぶりを驚喜して眺める。その後、智化の勧めもあって彼は欧陽春の養子となった。
しかしその後、馬強の家人の姚成の根回しにより、倪継祖は無実の罪に問われて杭州太守の任を解かれ、都に帰還することとなった。また馬強は都で朝臣・文彦博によって尋問にかけられても、叔父・馬朝賢の権威をたのみにして自らの悪事を認めようとはしない。更に杭州では欧陽春の名をかたる盗賊が出没しており、そのとばっちりを受けて欧陽春も罪に問われることとなった。包拯はひとまず白玉堂を杭州に派遣し、欧陽春を都に連れて来させることにした。
白玉堂は杭州の寺院で欧陽春を発見したが、悪い癖が出て彼の武芸の程を見ようと襲いかかる。しかし武芸では欧陽春の方が一枚上手。見事白玉堂を打ち破ってしまった。さて、茉花村の丁兄弟は二人がいさかいを起こしたと知ると、調停のために杭州にやって来た。また智化と艾虎も姿を現した。一同の取りなしによって欧陽春と白玉堂は仲直りをし、二人して都に赴くこととなった。
さて智化は馬朝賢と馬強を捕らえるために丁兄弟と相談し、皇室の秘宝・九竜真珠冠を盗み出して、その罪を二人になすりつけることにした。智化は善は急げとばかりに開封の宮城に忍び込み、無事に秘宝を盗み出した。そして今度は丁兆蕙が馬強の屋敷に忍び込み、九竜真珠冠を隠して帰った。そして今度は艾虎の出番。彼ははるばる開封の包拯のもとに出向き、馬朝賢と馬強が皇室の秘宝を盗み出し、それを皇帝の叔父・襄陽王に献上しようとした。二人は襄陽王と結託して謀反を起こそうとしていると直訴したのである。
艾虎の訴えが事実であると感じた包拯は、早速馬朝賢と馬強の叔父・甥を呼びだし、艾虎と対決させる。艾虎に言い負かされて、二人は九竜真珠冠を盗んだという無実の罪を認めざるを得なくなり、また今までの悪業や襄陽王と結託して謀反を企んだことも暴かれてしまった。無論、欧陽春と倪継祖の潔白もそこで明らかになった。実際に馬強の屋敷から九竜真珠冠が発見されたので、いよいよ弁解の余地無しと、馬朝賢と馬強は処刑された。倪継祖は杭州太守に復帰し、欧陽春は無罪放免となって、義子の艾虎を連れて茉花村の丁家の屋敷へと戻った。
馬強の件はこれで一件落着となったものの、仁宗皇帝は叔父の襄陽王が謀反を企んでいることを知り、一人思い悩む。遂に正体を現した悪の黒幕・襄陽王。義侠たちは如何にしてその悪業を暴くのであろうか？