三侠五義
7 嗚呼白玉堂、冲霄楼に死す
さて蒋平はと言えば、雷震という男を助けた後、再び船を拾って臥虎溝へと向かうことにした。その船には牡丹の父・金輝一家と李平山という男が乗り合わせていた。金輝は襄陽王の悪事の摘発のため、帝から新たに襄陽の太守に任命され、任地に向かっている途中であった。いま一人、李平山は金輝の秘書で、その妾・巧娘の間男でもあった。蒋平は金輝に二人の密通を悟らせてやると、金輝は巧娘を密かに水の中に突き落とし、溺死させてしまった。
船が陸に着くと蒋平は早速臥虎溝へ向かい、沙竜と出会ったが、欧陽春らはもう襄陽へと発ってしまったと言う。彼は都に引き返し、包拯にそのように報告した。包拯は更に展昭・盧方ら四人を増援として襄陽へと派遣した。
金輝は船から下りると今度は馬に乗って襄陽へと向かっていたが、任地へは行かせまいと藍驍の一党が一行を襲った。そこへ更に沙竜とその娘たちが駆けつけ、金輝を助け出そうとする。しかし四方を藍驍の軍勢に囲まれ、自分たちの身を守ることすら思うままにいかない。
時を同じくして欧陽春・智化・丁兆の三人が襄陽から臥虎溝へと帰還した。彼らは襄陽王が冲霄楼(ちゅうしょうろう)という建物を築き、その中に謀反の加担者の盟約書を納めているという情報をつかんで一旦帰還してきたのである。三人は沙竜の危機を聞くと、早速その援軍に駆けつけた。欧陽春は単身藍驍のもとに出向き、見事彼を捕らえた。一同は敵軍を蹴散らして金輝を救出し、臥虎溝へと凱旋したのである。金輝は臥虎溝で娘の牡丹と思わぬ再会を果たしたが、今では娘は妾の巧娘に陥れられたのだと感づいている。彼は娘に辛くあたったことをひたすら詫びたのであった。
牡丹は父に着いて襄陽に赴くことになったが、鳳仙・秋葵の姉妹と別れを惜しみあう。そして世話になった張立夫妻を連れて臥虎溝を発った。また智化も、護衛のため金輝に同行することとなった。
さて艾虎はと言えば、襄陽に着いたものの義父たちは入れ違いで臥虎溝に帰還してしまい、会うことが出来なかった。その代わり、馬強の部下であった賽方朔(さいほうさく)の方貂と小諸葛の沈仲元の姿を見つけた。彼らは主人が捕らえられた後に襄陽王のもとに身を寄せていたのである。沈仲元も襄陽王の動向を偵察するために、偽ってその配下となっていた。二人は長沙の地で襄陽に赴任してくる金輝を暗殺せよとの命令を受けて、移動している途中であった。艾虎も二人の跡をつけて行く。
長沙の地で艾虎は智化と沈仲元に再会し、ともに金輝を襲おうとした方貂を捕らえた。そして尋問のすえ、彼を都に連行させることとした。また、施俊もたまたまこの地に到来していた。金輝は彼を呼びだして自分の軽挙を詫びた上で、再び娘・牡丹との婚約を取りまとめたのであった。
ところで、顔査散と白玉堂の一行もようやく襄陽に到着して、視察を行っていた。金輝とともに襄陽に来ていた智化は彼らと合流し、白玉堂とともに冲霄楼に忍び込み、盟約書を盗もうとした。しかし建物の中には恐ろしい罠が山と仕掛けられており、そこから抜け出ることさえかなわない。危ういところを二人は沈仲元に助けられ、「二度とここに忍び込んではいけない。」と忠告されたのであった。
その後、今度は顔査散の官印を襄陽王の配下に盗まれてしまう。大事な官印を盗まれたとあっては、顔査散が帝から叱責を受け、罷免されかねない。白玉堂は激怒して盗人の行方を追ったまま行方不明となった。そこへ南侠・展昭と盧方ら陥空島の四兄弟が顔査散のもとに駆けつけて来た。彼らは官印と白玉堂の行方を探るが、官印は洞庭湖のすその逆水泉に放り込まれたことがわかった逆水泉は水が逆流しており、その深さも底知らずと言うが、蒋平が潜って無事に官印を取り戻した。しかし白玉堂の方は、一同は雷英という男から、彼が惨死したと聞かされて愕然とする。
そもそも雷英と言うのは、かつて蒋平が命を助けたことのある雷震のせがれで、襄陽王のお庭番を務めている。彼の話によると、白玉堂は官印を盗まれた仕返しとして冲霄楼から盟約書を盗み出してやろうと考えた。そこで沈仲元の忠告を無視して建物に忍び込んだところ、八卦銅網陣という仕掛けに足をとられてしまった。そこを見張りに発見されてしまい、討ち取られてしまったと言うのである。その場に居合わせた一同は白玉堂の無惨な最後に涙した。ことに盧方と顔査散の嘆きようはひどく、二人とも悲しみのあまり気を失ってしまった。一同は白玉堂の仇を討ち、襄陽王を何としても捕らえてやろうと誓いを新たにした。
次回、いよいよ大団円。義侠たちは襄陽王の残る片腕・鍾雄に如何に対するのか?そして襄陽王を捕らえることが出来るのであろうか?