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●新着情報
欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けいたします。

 

―正す会の窓・・・その107―

新年明けましてお目でとうございます。
皆様にとって今年も素晴らしい一年になりますようお祈りいたします。
1月19日(第3土)は東京例会日です。
例会の後で新年会を行いますので多数のご参加をお待ちしています。
詳しくは事務局までお問い合わせください。

平成25年 元旦

★昨年3月より掲載しています代表幹事の論文「欠陥住宅」はその4とその5のご紹介です。

欠 陥 住 宅・・・その4

【毎日新聞(東京版)土曜日朝刊生活家庭欄
「住まいを考える」に平成10年5月16日より
7回にわたり連載】

救済を阻む民法の不備

――手抜き≠ニキズ同等の扱い――

 

 欠陥住宅を多発させる原因は、業者からの独立性を持ちにくい建築士制度にばかりあるのではない。
 救済の基本となる民法の内容にも大きな原因がある。雇用や土地建物の賃貸借については労働法や借地借家法によって、弱者保護を考慮した特別な配慮がされてきた。
 しかし住宅の請負や売買に関しては、なんと100年前の民法がそのまま今でも適用されている。
 全くの驚きであろう。100年前の棟梁や大工は社会的弱者であった。当時建売住宅などはおそらく皆無、請負でも大家が材料支給をし、大工や棟梁は労務提供者的色彩が強かった。
 そこで民法は「瑕疵(かし)があっても重要ではなくて、過分の費用がいる場合には補修をしなくてもよい」(同法634条)]とか、「建物は出来上がれば契約目的を達することができなくても、契約の解除をすることが出来ない」(同法635条)とかの規定をおいたのである。
 契約の解除をすることは、建物を取り壊し更地にするとともに代金を返すということで、当時の棟梁などには資力的にみて到底不可能なことであったからである。
 しかも地域社会内部で信頼関係によって造られていた住宅には、今日みられるような手抜き欠陥は見当たらなかった。

 そこで民法は住宅の欠点のことを「瑕疵」とよんでいる。「玉に傷」のキズを指しており、例えば大工が過って床柱を傷つけたとか、修業不足のために納まりがつかなかったなど、許容せざるを得ない不出来を指している。にもかかわらず法律家の多数は、手抜き欠陥も、この不出来も、ともに民法上の瑕疵と解釈し、基礎や骨組みなどの故意の手抜きのように、取り壊し建て替えるほか、新築建物として相当な補修方法がない場合でも、取り壊し建て替絵費用の損害請求はできないとしている。右635条の規定を根拠に、取り壊し建て替えには、もとの代金のほか取り壊し費用もいるので、契約の解除の場合の代金だけの返還よりも取り壊し代金分だけ請負人に過酷な負担となるからというのである。
 10万円の洋服を仕立てても身丈に合わなければ新しい布地で仕立て直してもらえるのと比べれば、全く世間常識に反した考え方である。
 今の請負人である住宅会社などは社会的強者である場合が多いのに、いくら手抜きをしても法律がこのように賠償責任の範囲を制限してくれているので、手抜に歯止めが加わらず、また、被害者側も「裁判をしても時間も金もかかるだけだ」と泣き寝入りするのが今までの大勢であった。

(平成10・5・30)


欠 陥 住 宅・・・その5

【毎日新聞(東京版)土曜日朝刊生活家庭欄
「住まいを考える」に7回にわたり連載】

――「不法行為」としてとらえ

賠償請求認めた判決も――

 

 前回述べたように、現在の住宅注文者は、請負人である住宅会社よりも今や社会的、専門技術的に弱者となっている。まさしく消費者と呼ぶべきであるのに、消費者保護の流れに反して、住宅に関してだけは何らの消費者保護の法律的配慮が加えられず、100年前の民法がそのまま用いられている。
 そこで近時、法律家の間では「結果としての瑕疵(かし)」よりも、欠陥を生じさせる業者の「手抜き行為」に着目してこれを『契約に名をかりた詐欺的行為、即ち不法行為(709条)』としてとらえる動きが出始めている。従来の単なる不具合も、手抜き欠陥もその本質を理解することなく、一緒にして民法上の瑕疵でとらえれば、前回述べたように、取り壊し建て替えなければならないような手抜き欠陥の場合でも、契約代金の範囲でしか賠償請求できない。

 しかしこれを不法行為としてとらえれば、この欠陥と相当因果関係のある、あらゆる損害賠償の請求もできる。補修期間中のレンタル費用、建築士の調査鑑定料、慰藉料、弁護士費用等の関連損害も請求できる。
 このような考えに立って、基礎や骨組みにひどい手抜きがされた木造注文住宅について、取り壊し建て替え費用や、右に述べたあらゆる関連損害の賠償を認めた裁判例に大阪地方裁判所1984(昭和59)年12月26日の判決がある。
 この判決で特に注目されるのは、この取り壊し建て替え相当損害の他、慰藉料の請求を認めた点である。
 従来の民法上の瑕疵担保理論では「財産損害が賠償されれば、同時に精神損害も慰藉(いしゃ)される」として、建物の欠陥については精神損害、即ち慰謝料の賠償請求を認めようとしなかった。
 しかし、欠陥住宅被害が住宅という財産の被害であるのは当然のことだが、多年節倹に努めて積み立てた頭金をもとにローンを組んでようやく手に入れたマイホームである。しかも家は家庭の器である。この器に雨漏りなどの欠陥被害があれば、そしてなかなかこの手抜き被害が補修されないならば、当然家庭も暗くなり、夫婦仲にも暗雲を宿すことになる。しかもローンだけは毎月返し続けなければならない。
 だとすると、欠陥住宅被害は単なる財物被害だけではなく、その本質は家庭の平和をつぶされたことによる精神被害である。この判決はこのように欠陥被害の本質を認めた点において画期的であった。

(平成10・6・6)