(Q) 木造 2 階建て住宅を注文しました。引き渡しを受けて 1 年近く経っていますが、外壁にひび割れがところどころにでき、その都度業者にコーキング補修をしてもらっています。家もすこし揺れるようにも感じています。そこで、建築に明るい知人に見てもらったところ、確認通知書の図面で筋交いを入れるように指示されている部分のかなりの箇所に筋交いが入っていなかったり、柱や梁との止め付けが悪い箇所があり、「地震や台風の際には壊れる恐れがある、安全ではない」と言われました。そこで、業者に是正を求めたところ、「別段筋交いを入れなくても、心配は要らない。 1 年近く家が潰れず建っているのが、何よりも安全性がある証拠だ」といいます。どうしたものでしょうか。 |
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(A) 筋交いとは在来木造住宅の柱と梁で造られている骨組み(軸組み)で、柱と梁を斜めにつないでいる部材のことです(別図参照)。比較的地震や台風などに対し弱い木造軸組住宅に対して、このような水平方向の強い力に耐えさせるため、法令上設置を要求されている構造補強部材(斜材)と言われているものです(建築基準法施行令 46 条参照)。このような筋交い入りの軸組みや筋交いに代わる耐力合板を使った軸組み壁のことを通常耐力壁と呼んでいます。同条ではこれを家の縦方向、横方向にバランスよく法定された数量で入れなければならないとしています。
また、筋交いの柱や梁との取り付けはきっちりと止めなければならないのですが(「緊結」といいます。同令 45 条)、この緊結の方法については、具体的に建設省告示平成 12 年第 1460 号で決められています。
このようなことから、確認通知書に指示されている箇所に筋交いを取り付けなければならないのです。業者は法令どおり取り付けられていなくても、現に建物が建っているから安全だと言い訳しているようですが、それは間違いです。法令が要求する安全性とは、法令で定められた安全性に関する諸基準を守ることです ( 建築基準法 20 条 ) 。
法令は過去に起こった地震や台風などとともに、比較的起こる頻度の高いレベルで建物が耐えなければならない地震や台風などの外力の強さを設定し、過去の実際の建物の倒壊状況や専門家の研究討議をもとに、この設定された強さに建物が耐えるための構造基準を法定しているのです。ですからこの法定されている筋交いについての基準を守っていなければ、法令が予定している強さの地震や台風が襲ってくれば、その建物は倒壊するおそれがあるのです。このような恐れのないことが安全性です。筋交いが手抜きされていても、家が建っているとしても、その家がまだ法令が耐えねばならないとしている強さの地震や台風に見舞われてない以上、建っているからといって安全だと決め付ける訳にはいきません。それは平成 7 年の阪神大震災で三宮駅前に厳然として建っていた近代建物が一瞬にして倒壊した事実でもおわかり願えるでしょう。 |
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よく手抜き業者は「建っているのが何よりも安全である証拠だ」と言い訳しますが、今建っているからこそ、果たして地震や台風で潰れないかを問う実益があるのです。これが安全性の問題です。
なお、外壁のひび割れですが、筋交いの不足や家の揺れなどを併せ考えると、単純なモルタルの乾燥収縮によるクラック ( 収縮クラック ) ではなく、法令基準を守っていないことに起因する構造クラックではないかと考えられます。 |
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(平成 16年12月13日) |