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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その51―

 

前回に引き続き、消費者サイドに流れを変えてきている 平成15年10月10日、同年11月14日に次々と出された最高裁判決に沿ってお答えしています。

欠陥住宅 Q、& A、     (その20)

名義貸し建築士に欠陥責任を求められるか
                ―― 流れをかえる最高裁判決  その2 ――

(Q) 某工務店に設計施工の一切を頼んでいた木造住宅が完成し、このほど入居しました。しかし、敷地がもともと湿地帯であるにもかかわらず、相当な地盤補強や基礎設計がされていなかったため、入居後半年もしないうちに建具の戸当たりが悪くなり、やがて建具調整だけでは扉の開閉もできなくなりました。

 建築士に欠陥調査をしてもらったところ、基礎や地盤補強の手抜きが分かったのです。それと同時に木造の骨組みも柱や梁などのつぎ方が不十分で、緊結不良であることが分かったほか、通し柱は105mm角で法規上は安全だといわれたのですが、阪神大震災のこともあり、安全な家にしたいのでワンランク上の120mm角で頼んでいたのに、105o角に手抜きされていることも分かりました。

 ところが業者は、105mm角で法令上は安全だから欠陥には当たらないと、争っているうちに倒産してしまいました。そこで、業者より下請をして確認申請書に設計者工事監理者として記名押印している建築士に賠償責任を問いたいのですが、可能でしょうか。

*               *               *

(A) 近ごろ開発される宅地は、もともと崖地や湿地帯に造成される場合が多いので、住宅の設計施工に当たっては、相当な地盤補強や強固な基礎を考慮する必要があります(建築基準法施行令38条1項、93条)。

 ところであなたは、設計も施工も同一業者に注文し、請け負わせたのですから、業者が相当な地盤補強や基礎設計をしなかったこと責任があるのは当然です。通常、建っている建物の敷地の地盤補強をしたり、基礎構造を相当なものに取り替えるには、建物を移動させるか、または揚起させるなどして相当な作業空間をつくる必要があります。

 上屋をそのままにして地盤補強や基礎構造の補強をする方法も、技術上は可能であっても、その補修の結果が確実なものとは確認しにくく、近隣に建物があれば、その敷地にも影響が及ぶこともあります。また、その工事によって上屋自体も損傷し、相当補修をしなければならないので、結局は、上屋を一度取り壊し、解体して更地とした上で、基礎や地盤の補強と上屋の再築をするのが相当でしょう。特に柱や梁などの構造部材の継ぎ目が緊結されていないなど、上屋の構造欠陥もあるのですから、なおさらのことです。

 通し柱の件ですが、確かに建築基準法施行令43条の規定では、2階建てであれば最低限105mm角の寸法で足りることになっていますが、あなたが特に地震などのことを考え、120o角で注文したのですから、契約違反であり、欠陥であることは当然です。

 平成15年10月10日の最高裁判決では、鉄骨造りの建物の鉄骨柱の寸法に関して、同旨の判決をしています。契約上、特に法令上の寸法を上回る柱を希望し注文したのですから、社会常識上も当然のことでしょう。

 最後に、建築士の責任のことですが、業者から設計・工事監理代行を下請けし、確認申請手続き上の設計者工事監理者(建築士法2条参照)となっている建築士に、この建物の施工上の欠陥責任を問えるかについては、従来から争いがあり、責任を問われた名義貸し建築士は、確認申請手続の代行を頼まれただけで、実際には施主から報酬をもらって工事監理を引き受けたものではないため、欠陥責任は負えないというのが反対説の言い分でした。

 しかし、最高裁平成15年11月14日判決は、確認申請手続の代理を受けた建築士が、手続上で工事監理者の名義を貸しただけの場合であっても、実際に建物施工が始まるまでに、実際に工事監理にあたる建築士を工事監理者として施主に選任させるなど、工事監理者不在の工事を防止する努力をしていない限り、単に名義を貸しただけというだけでは欠陥がある場合に、施主に対する責任を免れることはできないとしています。

 あなたの場合は、おそらく設計そのものはその建築士がしていたものでしょが、仮に、確認申請書に添付された設計図書の設計者として名義だけを貸し、実際の設計をしていなかったものとしても、工事監理者の名義貸し同様、設計者としての責任を免れることはできないでしょう。

 というのも、建築基準法上は、「設計者とはそのものの責任において設計図書を作成したものをいう」(同法2条17号)とし、また、「工事監理者とはそのものの責任において工事を、設計図書と照合し、それが設計図書のとおりされているかいないかを確認することを言う」(同法2条11号、建築士法2条5項)とされているからです。

 有資格者の建築士が設計者や工事監理者の法令上の意味をしらないはずはなく、もし、報酬を得ていないから責任が負えないという言い分を認めるならば、有資格者の建築士に適正な設計や工事監理を期待し、欠陥建築物を作らせないようにしている法令の趣旨が損なわれるからです。
 従って、業者の倒産の有無にかかわらず、建築士に対しても、本件の場合の相当な補修としての取り壊し建て替え代金の賠償請求が可能です。

澤田 和也
(平成17年10月17日)