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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その90―

今回も代表幹事の被害体験の続きです。
今までのご相談の中にも、紹介やなまじっか知り合いの建築士に依頼したばかりに、後々のトラブルの解決に人間関係が絡み、かえって時間がかかるケースがありました。
建築士の選択はマイホーム造りのスタート点です。セールストークに惑わされることなく慎重にしたいものです。

(平 22・10・12)

欠 陥 住 宅 に 出 会 っ た ら
――被害体験と40年の対策活動から得たレシピ―― (その2)

『欠陥住宅を正す会』
代表幹事 弁護士 澤田和也

3、私の誤っていた点
(1)設計も施工も同一の人に頼んだこと
 建築士は本来、第三者的に依頼者の希望を反映した設計をし、業者がそのとおり施工するかをチェックするのが本来の職責でありますが、「建築士が施工もすればよい建物ができる」というのはとんでもないごまかしでありました。つまり、建築士自身が業者になれば、利潤獲得のためにみずから手抜きをするのです。私の場合がその例ですが、たとえ費用はかかっても、設計と施工を同一の業者に依頼するのではなく、別の建築士に設計と工事監理を依頼するのが得策なのであります。余分にかかる建築士の費用分は、建物の実質的な内容で吸収される結果となります。
(2)正しい専門家に正しい知識提供・指導を受けなかったこと
 早草実先生のような第三者性の高い建築士に早期にご相談をして、雨漏りという欠陥現象だけでなく、その根本的な原因や建物の構造チェックを受けていれば、私の訴訟は3年以内に取り壊し建て替えの判決が得られたことと思います。逆に言えば、欠陥住宅紛争の場合、業者や第三者性のない建築士に相談しても具体的な処方箋は得られません。交渉や訴訟で大事なのは、欠陥現象をなくさせることだけでなく、欠陥現象を生じさせている欠陥原因、つまり設計や施工の具体的な手抜き点を知ることで、その補修がされない限り、根本的な解決には結びつきません。つまり、レシピの第一は、信頼のできる第三者性の高い建築士に自分の体験している不具合事象の相談をするとともに、建物の図面の検討とともに実際の建物を検分していただくことが重要となります。なかなか止まらない雨漏りや直らない家の傾き、がたつき、建てつけの悪さは構造に原因していることが多いもので、これも私が体験から得たレシピです。『正す会』では、常にこの点に注意して構造チェックをすることをお勧めし、またそれによって多くの構造欠陥を発見し、多くの勝訴を得ております。
(3)紛争処理専門の弁護士や建築士に頼むこと
 私は自分が弁護士であったため、弁護士が手抜きされたということで弁護士仲間の不信用の原因になることを恐れて他の弁護士には相談しなかったのですが、一般の方であれば、やはり業者が相当補修をしなければ弁護士に相談されることが必要ですが、当会では、弁護士と建築士が共同してご相談や調査鑑定、裁判をするという形態をとっております。
 実は今の日本には、建築士、弁護士とも、欠陥住宅や建築の技術クレームや建築の紛争についての専門家がほとんどおりません。みずから言うのははばかれることですが、私や早草先生などこの会が、日本におけるこの種紛争の専門家誕生の草分けであると自負しております。建築そのものの設計や監理の専門家である建築士はたくさんおられますが、どのように調査鑑定し、それをどのように報告書に表現するか、つまり訴訟に勝てる対処方法を知る方は大変少ないのです。また、依頼者の希望だからといって高額の鑑定をしても、それに見合うだけの賠償額が後の裁判で得られないということは多々あり、そういった消費者のクレームもよく耳にするところです。弁護士についても、欠陥原因を解明し、相当補修方法や相当費用を具体的につかまない限りは有功な訴訟ができません。ですから、依頼者から建築紛争の相談を受けたときには、「建築士さんにも相談して、その原因を調べてから業者と交渉する、あるいはいろんな請求をしましょう。」と答えるのが当たり前のことなのですが、建築紛争になれない多くの弁護士は、依頼者の言う欠陥現象を欠陥として、補修費用に根拠の持たない代金の値切り的な大雑把な交渉を子弟舞うので、仮に構造欠陥を発見しても効果的な手が打てないという場合が多いのです。
 専門家も、確かに相当な対価をいただかなければ仕事はできませんが、たとえ相当な対価をいただいても、消費者がかけた建築士費用、弁護士費用に見合うだけの結果が得られるかどうか、それが得られるという見込みのある場合にのみ受任するということが、消費者サイドということになるのであります。
 ですから、欠陥住宅の相当な補修や賠償を求める際には、建築士と関連のある弁護士に頼むことが重要です。「建築士に頼んでみないと判らない。」ではまだしも、「あなたの方で建築士の専門家に頼んで鑑定書を書いてもらってきなさい。」と答える弁護士がいるようです。それでも問題ないように思われるかしれませんが、通常の建築士に欠陥の調査鑑定をお願いするのは不適当なのです。建築士の専門は意匠、構造、設備などに分かれますが、これらの分野は通常の建物の設計や工事監理をしている人たちのことで、調査や鑑定を業としている人は割合少ないのです。また、業としていても、通常は大会社や官庁において建物の計画や建築の仕事をしている人がほとんどで、欠陥住宅の紛争処理を前提に調査鑑定をしている人は極めて少ないのです。もっともこの頃欠陥住宅問題が喧伝され、欠陥調査鑑定を売り物にしておられる方も見られますが、それにしても弁護士と連携して紛争物件の調査鑑定をしたり、具体的な訴訟を前提に鑑定書を書いたり、またその訴訟中で業者側の意見に対する反論意見書を書いたという経験を持つ方は極めて少ないのです。
 消費者が欠陥だと訴えていることは素人のレベルでは間違いではなくても、欠陥判断の基準が幅広いので、「裁判上または法律上、相当な補修なり損害賠償を求められる欠陥であるか」、どの程度の証拠関係があれば相当な賠償が得られるか」、「調査鑑定費用や弁護士費用をかけてでも消費者にメリットがある欠陥かどうか」まで分かっている方は少ないように思います。ですから、法律上はたいした賠償金がとれないものを、とれるものと錯覚させられている消費者が多いのです(見ている建築士にも賠償可能性についての吟味は少ないようです。)。
 通常の中小規模の建築物(ビルなど)の施工結果や建築計画等の調査鑑定は各工程が目視できる段階からの作業ですので、欠陥紛争のある小規模住宅についての調査鑑定の視点や方法はずいぶん違います。また、欠陥判断の基準が法律上の欠陥判断の基準によらねばならないという明確な自覚を持たない建築士が多いため、個人的な美匠観や建築計画観で判断しようとするのですが、そのような欠陥判断だけでは裁判所では通らないのです。
 では、どこで適切な人を探せばよいかと聞かれても私もお答えのしようがありませんが、建築士や弁護士と普段から仕事の上で互いに研究討議しているとか、過去に同一事件について調査鑑定と弁護をしたという人たちに依頼するほうがよい結果がでるのは当然のことですので、弁護士であれ建築士であれ、依頼する際に、欠陥住宅の紛争処理に関与した経験があるか、建築士や弁護士と共同して受任した事件があるか、その事件回数などを具体的に聞かれることが有効だと思われます。
 何でもかんでも調査鑑定をするのではなく、弁護士の判断を前提に、その裁判において最もメリットのある点に関する調査鑑定をし、また相手方の反論に対して有効な再反論をするためには、弁護士はある程度の建築知識や建築紛争関与経験を、建築士は弁護士や裁判所の求めるものについての知識や経験を持っていることが必要となります。一般に、小規模住宅の欠陥紛争の調査鑑定の方が、大規模建物の計画施工時の調査鑑定に比べて難しいと考えられています。なぜなら、後者の場合には、後日の紛争を念頭に置く必要はほとんどなく、専ら建築サイドの前向きな基準で事柄を運べるからです。言葉は論理の表現ですので、建築用語を法律用語に置き換えて理解できる弁護士、法律用語を建築用語に置き換えて理解できる建築士を選ぶことが必要で、お互いの論理を理解し合える人を選ぶことが、勝利への最短路になるのです。
私の場合には、早草先生に出会うまでそのような建築士に巡り合わず、また私の建築紛争関与経験も少なかったので、そのような建築士を探すべきだということが判らず、13年もの年月を費やす結果となったのです。

つづく   (平22・10・12)