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きのこの世界

その距離40cm

 数年前、額田町の闇苅渓谷に出かけたときのことです。そこは、以前にもきのこや野鳥の観察に何度かいったことがありますが、鹿を見ることもあり、植物の観察にもよいところです。その年は後半が空梅雨でハラタケ目のきのこはほとんど生えていませんでしたが、その日の目的は冬虫夏草菌なので、歩道脇の潅木の葉の裏や岩面に焦点を絞って探していました、丁寧に探せば見つかるもので、クモ生の冬虫夏草を見つけ、写真を撮ろうと這いつくばってピントを合わせていると、すぐ近くでチリチリチリと連続音がします。虫の声だと思いましたが、あまりによく鳴くので、きのこを撮り終わってどんな虫か確かめてみようと顔を声のする方にそっと近づけると、そこには体を8の字にして、尾を立てたやや大きめのマムシがいるではありませんか。その距離は約40cm、冷や汗が出ました。マムシが警戒して震わせた尾が枯葉に触って音がしていたのです。尾が落ち葉を叩いて音がすることは知っていましたが、その音とは気づかず、うかつでした。

 飛び跳ねるように2m程後ろにさがりましたが、そこにも別のマムシがいるような気がしてなりません。急いで道に戻りました。その後は恐々と道の直ぐそばで観察を続けましたが、成果は今一つでした。しかし、噛まれずにすみ、幸運な日でした。

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