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きのこの世界

その距離3m

 数年前のことです。前日に聞いた天気予報は芳しくないとのことでしたが、早起きすると曇天でした。これなら遊びにいけると、新城市阿寺へきのこの観察に出掛けました。そこは有名な景勝地で、駐車場から滝までの約700mは遊歩道が整備されています。沢沿いの階段のないゆるやかな登り坂で、きのこが多く発生するので毎年何回か観察に訪れる所です。

 目的地に着くころからポツポツと雨が降り出し、駐車場に着いたときには強い降りになっていました。これでは車から出られないとべそをかいていると、30分程で小降りになったので、早速、観察をはじめました。天気は悪くても出掛ければ良いことはあるもので、カエンタケを見つけました。私にとっては珍しいきのこで、以前に一度、奈良県で幼菌を見つけたことがあるだけです。さらに、その周辺で淡紅色の美しいトキイロヒラタケが生えているではありませんか。これも私にとって珍しいきのこです。天気の悪いのもなんのその、とても幸せな気分になりました。欲を言えば雨が止んで写真が写せないかと思っていると、なんと、小降りになってきました。

 急いで車までカメラを取りに戻り、両種とも写すことができました。その直後、再び強い雨が降り出し、慌てて車に避難し、濡れたリュックやノートを拭き、図鑑を見ながら1時間も過ごすと、またも小降りに。もう一度観察をはじめました。遊歩道の山側は岩肌の崖で、その窪みでクモ生の冬虫夏草菌が見つかります。幾つか見つけ楽しんでいた時でした。崖の上でパラパラと音がしたと思うと、道でカーンと小気味良い音に続いて、沢側の茂みでドスッと鈍い音がしました。落石があったのです。石が道の岩にあたりバウンドして沢側に飛んでいったのです。私から3m程の所でした。珍しいきのこが観察できたことでうかれて、周辺の注意が疎かになっていました。帰り道では、狭い車道にもみかん箱大の石が1つありました。これも落石で、ギリギリで車を通すことができました。雨の日の観察は注意しましょう。

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