1738ch
3.アパラチアの夕暮れ
3/15days
葦と艾《あしともぐさ》●mame 


 外から帰ってきた時、動けなくなった。山の褶曲するほうへ向かって思想が進んだ。とりあえず、思想は椅子に座って、落ち着いた。これからなすべきことは、この山を越えることだ。ミッチェルのおじさんは、気高く乗り越えさせまいとぼんやりしていた。初めから、のぞき込んだ夫婦は自分を支えていた。見せまいとする世の中の陰湿な悪寒が、ところどころ、うごめいた、あの陽までに、ところどころ、ささやいた。

 見えていたものは美しいはずの褶曲。すっと支えていたものは、古代からの動き。動いているものは、地下の子象。倫理を持ち出すのは、栄えた景色。陽が落ち行くのは、おじさんのなで肩。咲いていたのは、靄と老人。   見せかけのファイアアントなんて、ただの夕暮れ。

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Disparallel 
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