交響詩
ガンダム


「眠りより」「珠玉の人」
「大地を発って」「遭遇の宇宙」「ララァ・ときめき」
「疾風のように」「女たちよ」「戦場空域」
「ソーラ・パワー」「黎明」
ホームにもどる

IX ソーラ・パワー


作曲・編曲:渡辺岳夫


 フルート2、オーボエ2、クラリネット(B♭)2、バスーン2、ホルン(F)4、トランペット(B♭)3、トロンボーン3、チューバ、ハープ、ティンパニ、小太鼓、シンバル、弦5部。
 渡辺担当曲の中では、唯一の活劇もの。終止アクションなので、やや単調な印象がある。個人的な解釈だが、終曲の「黎明」と合わせて全体の流れを聴くことにしたい。


A Allegretto
 トロンボーンの半音上昇、すなわちTV時代劇「燃えよ剣」('70年)の冒頭である。返す刀はホルンとトランペット。背後から忍び寄るトリルはチェロによるものだ。自らの代表曲と同じパターンを用いるのは、単なる使い回し(?)・・ではなくて、この交響詩を自己の音楽的集大成と位置づけたと考える。


B
 第1ヴァイオリンが上空を警戒、第2ヴァイオリンとビオラがリズムを刻む。トロンボーンのグリッサンド(音をのばしながら音程を変える)は、E〜A#音への上昇だ。これは最も不快な増四度だ。高まる緊張。


C Allegro con brio
 Cパートはわずか4小節。ホルンとトランペットのメロディーに続いて、思いっきり音がぶつかるCEFB音を8連発。曲全体の構成から考えると、このCパートまでがイントロになっている。


D
 D〜Jパートが繰り返しになっており、この部分が本体だ。ビオラとチェロによる8分音符の半音階的なリフは、「サントラ第1集/窮地に立つガンダム」のものだ。ただしヴァイオリンのメロディーは形を変えている。
 トロンボーンのグリッサンドは、今度はF#〜C音である。同じ音程から始まって、2本は上昇、1本は下降である。これは芸が細かい。


E
 8分のリズムはチェロとコントラバスになって増四度音程を上げる。5小節目からトロンボーンが加わって、さらに長三度上がる。戦場の恐ろしい緊張感だ。


F
 いったんリズムが変わるパート。しかしホッと一息という場面ではない。時代劇ならツバぜり合いだろう。高空から急襲するトランペット、空爆するトロンボーン。木管楽器の高音トリルをお聞き逃しなく。


G,H,I
 例の半音階パターンは、音数を倍にして再開する。DパートからIパートまでが繰り返しになっている。長い部分をそっくり繰り返すので、最初に聞いたときには曲自体が長く感じられた。


J
 ラストへ向かってテンションを加速する。ヴァイオリンが2小節にわたって半音ずつ音程を上げている。


K
 グランドポーズである。スコアには全休符とフェルマータが記してある。


L
 バスーン、ホルン、トロンボーンによるE♭、B、F、G#音。組曲「惑星/天王星」(作曲:ホルスト)の大パクリですが、これはご愛敬。アニメ映画「海底3万マイル」('70年)にも登場しますが、微妙には変えてあるようです。




X 黎明


作曲・編曲:渡辺岳夫


 フルート2、オーボエ2、クラリネット(B♭)2、バスーン2、ホルン(F)4、トランペット(B♭)3、トロンボーン3、チューバ、ハープ、ティンパニ、小太鼓、シンバル、弦5部。

 この終曲は7分という長さで、この一曲で組曲風の構成になっている。楽器の編成が「IX ソーラ・パワー」とまったく同じなので、最後の2曲で一組ととらえても良いだろう。「戦場で」収録曲のうち、本編では未使用となった「再生のための終焉」の主題が、哀愁を誘う。


A Largo
 ティンパニのソロは、譜面によればmpの指示だが、これはかなり小さい音だ。ノイズが気になるくらいまでボリュームを上げないと聞こえません。弦の呼びかけに応えるのはホルン、次にトランペット。とてももの悲しい響きだ。呼びかけに応えるというよりも、荒野で虚しく泣いているようだ。


B
 チェロのソリ(大勢で演奏するソロ)である。低音から高音までタップリ使う、チェロの個性が出るラインなのだ。


C
 チェロ+第1ヴァイオリンになる。両者の音程は終止四度(+オクターブ)を保っている。荘厳な響きだ。


D Allegretto
 突然、トランペットが激情を溢れさせる。弦は怒り、そして悲しむ。5小節目のヴァイオリンは、4連、3連、3連、7連だ。7小節目からはCとDm7の繰り返しで、しばし和む。


E Lento
 「サントラ第2集/再生のための終焉」の主題である。まずクラリネットで、次にフルートとオーボエで演奏する。原始の闇のようでもあり、それでいて宇宙空間を連想させるメロディーだ。


F
 これも「再生のための終焉」で、中間部の主題だ。1〜4小節は、弦のみで「C、Em」の和音。5小節目以降は、ヴァイオリン・ビオラ・チェロがオクターブユニゾンで演奏し、和音はホルンなどの金管が担当する。展開形とかベース音とか気にしないで、コードネームだけ与えると「A、Am、E♭M7、B♭M7、Am7」という具合。7小節目からは、哀しみを歌うコントラバスが!。


G
 コード進行の続きは「Gm7、Am7、B♭M7、Am7・・」という黄金のナベタケ節。最後のテーマはキーがDになって「D|CM7|D|CM7|D、C|D、C」としている。ホルンのスフォルツァンドD音は譜面では3本での演奏になっている。(何故か1本だけ休み)
 そして四度ずつ楽器が加わっていくフィナーレである。この四度は増ではなくて完全なので、気持ち良いのだ。この積み重ねはティンパニによる低いA音から始まって、トロンボーンがD、G、C、トランペットがF、B♭、E♭の順になっている。最後はDの和音で壮大に交響詩を締めくくる。
 けれど、この渡辺曲(FパートからはCで始まっている)にとって、Dの和音は「完了」ではなくて希望を持って「続く」意味があるように思われる。物語は終わらずに、続くのだ。




ホームにもどる