金烏工房東征記
4 内山&東方書店 − すずらん通りへ −
咸亨酒店を出ると、飯香幻さんとあきらさんを先頭に一路内山書店へ。本当はもっと書店を回りたかったが、時間の都合で、内山と東方で打ち止めにしてそれから御茶ノ水方面へ向かうこととする。すずらん通りには所狭しと書店が立ち並び、人出も多く、まさに「本の街」という感じである。東京周辺に住んでいれば休みごとにここに来れるわけだから、実に羨ましい。
さて、目的地の内山書店はこの通りの一角に店を構えていた。 (下図参照) 東方書店もその斜め向かいに見える。
内山書店は三階建てで、一階は一般書売場、二階は文学関連の専門書&連環画、三階は歴史関連&古本売場となっている。我々はまず二階に足を踏み入れた。まず目に付いたのが連環画。蔡志忠のマンガやら、『三毛』(居眠り猫さんの説明によれば、中国の『フクちゃん』みたいなものらしい。)とか、『金田一少年の事件簿』の中国語版なんかが置いてある。更に李自成の活躍を描いた絵本や、『岳飛伝』という絵本も発見。それを見て宣和堂さんが、「やっぱり『説岳全伝』は『岳飛伝』と呼ばれることもあるのか!?」と悩み始める。
しかし結局、「ホームページ用の資料」ということで『岳飛伝』を購入することにしたようである。私もお土産用に『金田一少年』を買っておくことにする。
※ この『金田一少年之事件簿』の巻末には、他のコミックの中国語版の宣伝が掲載されていた。その中国語版のタイトルを見てみるとなかなか面白い。例えば『バツ&テリー』が『龍兄虎弟』となっていたり、『花の慶次』が『北斗遊侠』となっていたりした。
宣和堂さんだったか多岐さんだったかは覚えていないが、どこかから「中壇元帥進香団・日本支部」のnanakoさんの同人誌・『鈎沈』のチラシを見つけたということで、私に持ってきてくれた。 (上図参照) 「そう言えば近々内山で販売することになったとか言ってたなあ。」と思い出し、そのチラシを持ち帰ることにした。コミケとかで売るよりも、こういう専門書店に置いてもらった方が需要はあるかもしれない。実際かなり専門的で資料的価値の高い本であるし。
古典小説の棚のあたりでは、居眠り猫さんやSUIKOさん、飯香幻さんが何やら話し込んでいたが、私は構わずにあちこちの棚を眺めまくる。「でかい本屋に来た!」というわけで、すっかり舞い上がっていたのである。文学事典なんかを並べてある棚で『明清小説鑑賞辞典』を発見!この二週間前に神戸で開かれた中国史MLのオフ会で、宣和堂さんがこういう古典小説辞典を私に見せてくれて、「私も一冊こういうのが欲しい!」と思っていたところなのである。中を見てみると、『楊家将』も『説岳全伝』も『済公伝』もバッチリではないか!「これを翻訳していったらホームページのコンテンツがひとつ出来上がるなあ。」という邪心がムクムクと芽生え、これも買っておくことにする。
取り敢えず歴史関連の本と古本も三階も見ておこうというわけで、単身エレベーターに乗り込んで三階へ。古本コーナーには大したものが無かったが、古代史の棚には『春秋大事表』・『元和姓纂』・『今文尚書考証』等が並んでいた。全部購入!といきたいところだが、そろそろお金の計算もせねばならない。金文・小学関係で欲しい物が見つかるかもしれないし、そもそも後で東方書店にも行くのだぞ!と言い聞かせ、皮錫瑞『今文尚書考証』のみを手に取る。
さて二階へ戻ろうとエレベーターに乗り込んだが、間違って五階のアジア文庫(東南アジア関係の本が置いてあった。)に出てしまったことは秘密である(^_^;)
気を取り直して再びエレベーターへ・・・二階をもう一度歩き回ってみると、金文・小学関連の棚を発見!そこで楊樹達『積微居金文説』(海風書店で購入したアレです。)の正規版を発見。こちらの方が表紙がペラくて値段も安そうだったが、精神衛生のために見なかったふりをする。目を下の方に向けてみると、『簡明金文詞典』なる本が平積みになっていた。「簡明」と言うだけあって辞典としては実用にならなさそうな気もしたが、巻末の研究論著目録と青銅器リストに引かれて購入を決意。
「よし、これで打ち止め!」とレジへ。レジでは宣和堂さんが店員のおばちゃんと話し込んでいた。後で宣和堂さんから聞いた所によると、このおばちゃんが内山の店員の中で最も本のことや専門的なことに詳しいということであった。さて気になる値段の方は、私は四冊で一万円以内に収まるだろうと予測していたが、実際は約1万2000円。思ったよりも高かったことにショックを受けながら、私は紙袋を受け取った。
ちょうどみんなも本を見終わったようで、東方書店へと移動。こちらは日本語の書籍も扱っていた。二階堂先生の『コンピュータで中国語』と、『講座道教』第一巻を発見。酒見賢一の『周公旦』も売っていたが、こちらは『封神』物でもないのに聞仲と黄飛虎が登場するというとんでもない代物だそうである。漢籍では、もうそろそろ夕食代も危うくなってきたので、孫詒讓『古籀余論』九百円なりを購入するに留めた。
東方書店を出ると、居眠り猫さんはこれから用事があるということで、ここでお別れである。一同別れの挨拶を交わし、我々は飯香幻さんを先頭にして御茶ノ水へ。
次回、いよいよ湯島聖堂と神田明神へ。神田明神で一同を待ち受けていたものとは?