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どのようにすればスムーズで確実な欠陥住宅被害救済を受けられるか

――シンポのテーマの要約論文――   


欠陥住宅を正す会
代表幹事 澤田 和也
(体験者・弁護士)

 平成 18年度の恒例の消費者シンポは標題のテーマでおこなわれることになりましたが、これを完全に尽くそうと思えば欠陥住宅紛争全体についての広汎な知識と研究体験が必要となり、とうてい短時間でまとめきれるものではありません。そこで長年の紛争処理体験をもとにご参考になると思われる主要点についてまとめ問題提起とさせていただきたいと思います。

1、 欠陥住宅紛争の特質の理解

 欠陥住宅紛争は、たとえプレハブやマンションの場合でも契約ごとの個別性が高く欠陥の内容の理解には専門的知識が要り、被害者が業者と対等に戦い事件解決をしようと思えば、建築専門家や弁護士などの専門家の補助が必要だということです。そして専門家側も欠陥住宅被害は単なる家の欠陥という財産的被害だけの問題ではなく、むしろ一生に一度のお買い物を台無しにされた、楽しかるべき家庭を破壊されたという精神的被害が本質的なものであるということを理解する必要があります。

 これがひるがえっては事件解決を依頼する専門家に対しても、時として懐疑や不信の念を抱かせ、依頼を受けた専門家を戸惑いさせるのです。この理解が紛争解決をスムーズにさせる大切な鍵です。

2、 適切な専門家を選ぶ

 欠陥住宅紛争の専門性・技術性の高さから、紛争解決のために建築士や弁護士に依頼してその助力を仰ぐことは当然のことですが、欠陥住宅紛争の調査鑑定や法的解決を専門的に行っている建築士や弁護士の数は限られています。専門家に頼めば誰に頼んでもよいとはいえないのです。たとえ欠陥住宅被害救済のための団体のメンバーであっても又は弁護士会や建築士会が紹介してくれたとしても、果たしてその人があなたの事件の解決に役立つのかは別問題です。紹介されてすぐに調査鑑定や弁護を依頼するのではなく、相談料を払ってでもとりあえずは面談して相談してみることです。あなたも欠陥に出会い色々と書物を読み他人の話を聞き、素人なりにも自分の欠陥についてはある程度の知識を持ち解決の方向性も考えているはずですから、面談してみて回答に具体性がなくこれといって手ごたえがなければ調査鑑定や弁護の依頼は思いとどまれるのがよいでしょう。欠陥住宅紛争に習熟し解決に意欲のある専門家を選ぶことがスムーズで確実な解決のための有力な手がかりです。

3、 欠陥住宅紛争解決の手順を理解する

 まず交渉や法律手続きの前提となるのは欠陥原因を正しく特定し理解することです。

素人は「雨が漏る。」「家が傾く。」など五感で知覚することが出来るいわゆる欠陥現象を欠陥と考え、欠陥現象を訴えれば欠陥は除去してもらえると即断しがちです。しかし正しい補修にはその欠陥現象が生じる設計上や施工上のミスを確かめ、それを取り除いて正しい設計や施工をし直す必要があります。その欠陥によって生じる原因事実が欠陥原因で、たとえば雨が漏るという欠陥現象に対応する原因には「瓦の重ねが甘い。」「割れている。」「屋根勾配が取れていない。」「サッシ下に水きり金物が無い。」等々数多くの原因があり、あなたの場合はどれとどれなのかを調査鑑定してもらう必要があるのです。専門家の調査鑑定なしにやみくもに業者に補修交渉をするのは、海図なしに大海を航行するのに似て全く業者任せのおざなりな手抜き補修をされ、さらに欠陥が継続し二次的被害が生じるという悪循環を招きます。何はともあれ建築士の調査鑑定を求め、欠陥原因と正しい補修方法を知ることが出発点です。

 そして次に欠陥の種類によって法的手続きをするか否か、又は法的手続きをするにせよ調停手続きにするか通常の訴訟(裁判)にするかを適切に選択することです。詳しくは別紙拙稿『欠陥住宅紛争解決の手順』を参考にしてください。要点は訴訟手続きをすれば弁護士費用などの訴訟費用がかさみ、かなり大掛かりな補修費用が見込まれる構造欠陥や対候性能(雨漏りや結露など)を防ぐ性能欠陥以外は訴訟をすることはおすすめできないということです。また美匠や仕上げなどの欠陥はその補修費用としては多額にならないので費用のかさむ法的手続きには不向きであり、むしろ業者自身の手で一応満足できる状態になるまで手直しさせるほうが得策です。

 調停手続きと裁判(訴訟)手続きのいずれにするかは相手方の対応の状況や欠陥立証のための証拠関係の強弱によって決めることです。相手方が資力もありしかも欠陥を争っていて妥協する気配が見られないときなどは、もし証拠関係がはっきりしているのであれば訴訟手続きをとるのがベターです。欠陥立証の証拠関係が弱いときや相手方が柔軟な態度で和解に応じる意向が伺えるときは、手間と費用の点からいって調停手続きがよいと思います。

 このようにワンパターンはやめて状況に応じた手段をとることです。

 なお参考までに訴訟手続きでは欠陥原因に見合う相当補修方法に必要な工費相当金や関連損害を請求します。調停ならば「相当補修を求める」というのも可能です。訴訟手続きでは強制執行の関係から金銭賠償を求めるのです。

4、 専門家により確かめた欠陥資料をもとに交渉

  1. さきに述べたように欠陥原因事実と相当補修方法とそれに要する工費を確かめそれをもとに補修又は賠償の交渉をします。三ヶ月以上たっても補修や賠償金支払いの話がまとまらないときには法的手続きをとります。(詳しくは前掲『欠陥住宅紛争解決の手順』参照)
  2. 示談成立の場合には補修図面や補修工程表を示談書本文に添付します。補修図面や工程表は相手方にあらかじめ作成を求め依頼している専門家の検討を受けるか又は依頼している専門家に作成してもらい相手方の同意を受けます。とりあえずは私的示談書でもよいが出来れば公正証書にしたり裁判所で起訴前の和解手続をしてもらいます。私的示談書の場合でも第三者を立会人としてその認証を求めできれば印鑑証明書を添付します。

5、 構造欠陥を発見すればチャンネルの切りかえ

 大抵の欠陥紛争は美匠仕上げの不良や設備の不具合などから始まりますが、業者との交渉が進められていても依頼した専門家の調査によって構造欠陥が発見されればその除去や補修には通常多額の費用が掛かるところから示談不調になる場合が多いものです。業者の応答から構造欠陥の正しい補修の意向が見られないときには、示談に固執せず法的手続きをとるのが得策です。

6、 一般的・概括的な示談可能性の目安

 請負金額の一割以上の修繕費が見込まれる場合は示談成立は困難であると見られます。この場合には直ちに法的手続きをとるのがよいでしょう。ただし相手方の資力や信用・誠意などの要素も総合して判断する必要が有ります。

7、 交渉や法的手続き中の注意

 被害者はえてして業者の不誠実な対応を難詰し、それら業者の不誠実な対応についての事情主張と欠陥現象による日常生活の困難性などの主張をしがちで、それを十分にすれば裁判所が分かってくれ求めている賠償金の支払いが命ぜられると思いがちです。しかし示談交渉の場合でも専門家によって特定された欠陥原因を除去し、設計図書通りの品質・レベルに復元する具体的補修方法や又は相当工費の主張が大切です。示談交渉の場合でも欠陥原因についての具体的認否や相当補修方法についての具体的回答を求めます。法的手続きの場合は尚更のこと欠陥原因や相当補修方法や賠償金額について具体的に主張し、それについての立証に重点を置きます。長々と従来経過や事情を申し述べ業者の不誠実な対応の主張に力点を置けば、かえって肝心の欠陥原因や相当補修方法についての論点がぼやけ、業者の挑発に乗じて事情の応酬に深入りすれば欠陥の主張や立証がぼけて業者のペースにはまり込みがちです。代理人弁護士との信頼関係の維持にはこの点の理解が必要です。

8、 自分の主張を少しも聞いてくれないという被害者の苦情

 今まで述べた欠陥原因や相当補修方法についての主張や立証に重点を置く代理人弁護士に対して、事情を裁判所に訴えたいとする被害者は、自分の主張を少しも聞いてくれないとクレームをつけることがあります。仮に裁判所が事情主張を聞いてくれたとしても、それを聞くことだけで被害者側の欠陥主張や要求する賠償金額を認めてくれるものではありません。調停手続きなどでは被害者側を譲歩させようとして調停委員らは被害者の事情主張を何度も聞いてくれますが、話を聞くことと言い分を受け入れてくれることとは別ということです。

9、 業者の言い分を聞きすぎるという被害者の苦情の当否

 業者の背信に対するあるいはまた不当な抗争に対する怒りのためか、訴訟や調停手続きに入った場合にも裁判官や調停委員が業者の言い分を聞きまた主張させることに対して被害者は憤慨しがちです。その気持ちはわからないではないのですが、まず法的手続きでは相手方の言い分も十分に聞き証拠を出させて当否を判断するのが建前なのです。もとより手抜きが許されていいはずはなく客観的に欠陥原因事実があれば被害者側の言い分が聞き入れられ勝つのは当然のことです。しかし刑事被疑者にも弁護人選任や防御の権利が与えられているのですから、ましてや民事の争いでは当然のことと受け止めて、クールに反論し間違っても法廷で大声を出したり代理人を差し置いて詰問したりしないことです。長年欠陥住宅訴訟を担当していると、上手だといわれる業者側の弁護士ほど被害者の感情を逆なでするような事情をクールに述べて被害者側を感情の闘争に巻き込みます。被害者側も裁判の段階になると素人とはいえある程度技術的・法律的知識も身に付けてきているから不当な扇動的事情主張に対し腹を立て、つい相手方を詰問したり、技術的・法律的な相手方の不当性を法廷で訴えたくなるのです。それは相手方の思う壺で、訴訟の流れは肝心の欠陥原因事実の存否の問題から、なんらの物証の伴わない人の口まかせの業者の悪徳についての事情の暴露へと発展し、肝心の欠陥原因の存否が薄れてきます。つまり相手方の思う壺に入るのです。くれぐれも注意してほしいのは元々技術問題に不得手な裁判官は事情の主張には敏感で事情の応酬には反応はし、深入りすれば肝心の技術的争点の争いが薄れる上、被害者本人が代理人や専門家をさしおいて法的・技術的不当性まで法廷で難詰するに至れば、えてして裁判官は被害者側に当初からそのような専門的知識があり欠陥であることがわかりながら自分の欲望のためあえてしもそのような手抜きをさせたのではないかとの疑念を持つにいたるのです。

 本来技術訴訟である欠陥住宅訴訟は、欠陥原因事実の存否とそれについての技術法規に基づく判断が中心課題ですが、事実の認定や法規の解釈には一義的には割り切れない場合もあり、そんなときには当事者双方の訴訟での態度などから心証を得て被害者不利の判断をすることもあります。裁判官も神様ではなく生きた人間なのですからこれはむしろ当然のことかもしれません。従って法廷ではあまり専門的なしかも相手方を弾劾するような本人発言は控えるのが無難です。被害者の法廷での態度からこのような不利な推測をされると業者側主張の過失相殺の抗弁が大幅に認められ、時として民法 636条の「仕事の目的物の瑕疵が注文者の与えた指図によって生じたとき」として、被害者側の賠償請求が全面的に排斥される場合もあります。このようなことはどのような教科書を見ても書かかれていませんが書かれていないからこそ勝訴を導くためのキーポイントとして強調しておきたいと思います。

10、 委任している弁護士や建築士と信頼関係を維持する必要

 本稿の第2項で適切な専門家を選ぶべきだと述べましたが、仮に適切な専門家を選んで委任したとしてもその専門家との信頼関係を維持することが必要です。信頼関係の維持の前提は情報の共有です。特に訴訟をしている場合本人は直接出頭する義務は普通はありませんが(本人尋問の時を除く)できれば毎回期日に出頭し傍聴席からでも訴訟の進行を見聞することです。弁護士には依頼者に対する連絡報告義務があり、法廷に行かなくても弁護士からの報告書が届くことでしょうが、事柄は専門的な事項も多くそれを読んだだけで理解できるものではありません。そこで自ら手続きを傍聴すれば素人ながらもおおよその察しはつき、後で疑問の点を代理人に尋ねれば進捗の状況を理解することが出来るでしょう。その他被害者側提出の文書はもちろん相手方が出した書面や証拠写しもその写しを弁護士から送ってもらい読んでみることです。疑問の点があれば代理人に尋ね、してほしい反論を伝えることです。そして何よりも代理人とのコミュニケーションを充分にすることです。それには法廷の傍聴の後がもっとも有効な機会です。

11、 和解の必要

 裁判で証拠も充分に有り勝訴確実と見込まれている場合でも、相手方の資力に不安がある場合や自分の方にも法令違反の施工を頼んだ場合や又は病気や子供の結婚などで早期解決にメリットがある場合などには、請求額を割り引いても裁判の途中で相手方と和解するメリットがあります。

 裁判所もある程度争点整理が済み事件の概略をのみ込んだときや、証拠調べが終わって一定の心証を得、後は判決という段階で当事者に和解の勧告をします。業者に対する怨念から和解など断じて出来ぬと思い込んでいても、さて勝訴を得たものの業者倒産で一円も賠償金を得られない事態になると、かえって何故和解を強く勧めてくれなかったと代理人をうらむことにもなります。“腹八分目に医者いらず”というが五分目でも六分目でも賠償金を得ることのメリットは大きいのです。和解ができるか出来ないかも、訴訟の見通しと相手方の状況の理解とともに代理人との信頼関係の密度如何にかかっているといえましょう。

12、 移付調停

 平成 13年より建築紛争や医療紛争などの専門性・技術性の高い紛争では、訴訟をしていても双方の主張を整理した段階で又は事柄が複雑でなかなか争点整理が出来ない場合には、争点整理を目的に事件を調停手続きに移付するシステムがとられています。これを移付調停と呼んでいます。もちろん調停には当事者の同意が必要で当事者が調停不成立を求めれば当然本来の訴訟手続きに戻されるのが法律の定めであるけれども、実際の運用では裁判所が建築専門家の調停委員を使って専門的技術的知識を獲得することにとどめず、時として主張の当否の判断や補修方法及び賠償金額まで専門家委員に任せようとする気持ちが強いので、当事者が訴訟手続きに差し戻すことを求めてもなかなかそれを認めません。そのため形の上での紛争解決が促進されていても、結果としては業者側の利益になっている面も否定できないでしょう。というのももともと被害者側が訴えを起こす場合にはあらかじめ欠陥調査をし鑑定を求めて取り壊し建て替えるほか相当な補修方法が無い場合や、大幅な修繕工事がいる場合で、その補修金額から到底業者側が任意に支払いしない場合が多く、いわば被害者側にとって勝訴確実で多額の賠償金認容判決が見込まれる場合なのです。このような場合には業者側に資力の不安があって現実の賠償金回収が危ぶまれる場合又は被害者側に早期の賠償金入手の必要がある場合には被害者側にも調停に応じるメリットがあります。しかし調停は言わずもがなお互いの請求を譲り合うことで成立するものなので、確実な証拠も有り勝算の高い場合には結局は被害者側が譲る度合いが強くなります。これに対し逆に業者側では一定の欠陥原因事実が存在する以上は相当賠償の責任があり被害者側の請求を値切れば値切っただけ利益となるのです。裁判所の移付調停は業者側は大歓迎です。このような本来的に移付調停で調停に応じれば被害者にデメリットが多い上、調停運営の実際も法令が予定している契約重視、被害者救済からは離れた結果になるのではないかと危ぶまれる場合が多々見られるのです。もとより調停の当否は調停主任である裁判官の識見に負うところが多いのですが、中には一切合財を専門家調停委員に委ねているのではないかと疑われる場合もあります。たとえば欠陥を認定しても法的知識に欠け、実務ずれのしている専門家委員はえてして新築契約の設計図書を無視した機能だけ回復すればいいかのようなツギハギだらけの補修案を提案し、被害者側に押し付けようとします。たとえば基礎が地盤の地耐力や土質に見合わないときには一旦建物を揚起して相当作業空間を確保して地盤補強するか又は基礎構造を取り替え建物を元の状態に復元するほかはありませんが、在来欠陥基礎の外側に相当基礎を作って在来基礎と一体化すればよいなど、全く新築契約性を無視した提案をします。補修を瑕疵担保責任に基づく責任のとしての補修ととらえず、補修をしてもらうのだという恩恵としてとらえる傾きもあります。

 元来移付調停は専門化委員の技術知識を活用して技術争点の整理と技術法規の要件事実の理解のための知識を裁判官に補充するために設けられた制度であるのに、現実には相当補修については技術専門性だけが先行し新築契約性などについての適正な法律判断が後退している傾きが見られます。

 しかもその調停での審理が民事訴訟の当事者主義を忘れた職権主義的・糾問的色彩が強く、欠陥についての事情を聞くというよりは職権的に事情聴取し恰も刑事事件の取調べのような感じを与えることもあります。識見のすぐれた裁判官が調停主任でないかぎり又は自己の分を心得た良識ある専門家委員で構成されていない限り、移付調停は被害者にとってはあたかも相手方が業者プラス調停委員になったかの感じを与え心理的にも圧迫されるのです。少なくとも現在の状況ではよほどの事情が無い限り移付調停は受け入れないか又は早期に不成立を求めるのが被害者にとって得策でしょう。

13、 主張の整理の必要

 えてして被害者は先に述べたように、抗争のいきさつや相手方の不適切な対応などの事情を詳しく主張することを代理人に求めます。しかし欠陥原因や相当補修方法の主張に重点を置くべきことは述べた通りです。

 そして請求原因の主張でもその家屋に存在するすべての欠陥・美匠仕上げの欠陥から空間性能の欠陥に至るまであらゆる点について主張したがります。しかし “下手な鉄砲も数射ちゃ当たる”式では裁判官を混乱させます。大切な主張たとえばその欠陥が認められれば結局は取り壊し建て替えるか又はそれに近い大幅な修繕行為を必要とするような構造欠陥を主張すれば結局は他の美匠仕上げなどの欠陥もその構造欠陥の補修の中に吸収されます。そこでできるだけそのような大きな欠陥に主張を絞り、立証の重点を置くのが懸命でスムーズで確実な解決を得る方法の一つです。主張する構造欠陥以外の欠陥は業者の施工レベルの低さや杜撰な施工態度を示す事情としてさらりと述べるにとどめるのがよいでしょう。つまりスムーズで確実な訴訟追行にはメリハリがいるということです。

14、 おわりに

 以上思いつくまま実務体験から被害者にとって役立つと思われる方策を述べました。他にも被害者仲間と情報交換し助け合うなど色々な問題点があろうかと思いますが、要は被害者が自分の欠陥の内容を正しく理解し、相当補修方法や賠償金額を知ってそれを元に欠陥の内容や欠陥の種類や相手方の実情に応じた適切な手続きを出来るだけ早くとることです。適切な専門家の選択も必要だし専門家との充分な情報交換も必要です。被害回復というゴールに早期かつ確実に玉を決め込むには良い専門家に依頼し信頼関係を持つことと被害者の賢明な判断や良識が不可欠であるといえましょう。

(平成18・5・5)