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●新着情報
欠陥住宅を正す会の窓
 
昭和53年以来24年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている
欠陥住宅を正す会  
では、このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ記事をお届けします。
   
 
−正す会の窓・・・その1(論説)−
 

未来に語り継ぐ私の消費者問題

   
  1. 消費者問題にかかわるようになったきっかけ
   
  私が消費者問題、特に「欠陥住宅を正す消費者問題」に関わるようになった動機については、私の主著である「欠陥住宅紛争の上手な対処法(竃ッ事法研究会平成八年刊)に登載した「雨漏りとともに十三年 悪徳建築士との戦い」に詳しく述べたとおりである。 端的に言って欠陥住宅を自ら体験したことが消費者問題に関わるきっかけとなった。

それは昭和五四年はじめの頃であった。その前年に生まれた「住宅のクレームに悩む消費者の会(現欠陥住宅を正す会)」の当時の世話役の方から、弁護士である私と一級建築士である早草実先生に同会の顧問として欠陥住宅被害者の頭脳になってほしいと頼まれたのがきっかけである。
   
  2. 自分にとって消費者問題とは何か。
   
  私にとって住宅に関する消費者問題は、自己の被害から出発したこともあり、この問題に打ち込むことが自分の生き方に直結しているからである。

思えば私が欠陥住宅を体験した昭和四十年頃は経済の高度成長の絶頂期にあたり、従来の村落共同体で顔の見えている大工や棟梁に家造りを頼む方式から、都会に出て頼るべき大工や棟梁を持たない消費者がただマスコミ媒体の宣伝のみを頼りに住宅会社に家造りの一切を任せるという、現在の住宅の生産システムに変わろうとしていたときのことであった。 この欠陥住宅を正す会の活動を通じて知りえた主な点は次のようなことであった。
   
 
@ 住宅の消費者問題は個別契約性が極めて高い。つまり、さまざまな敷地にさまざまな構造・規模・形態・設備の家が建てられる。 従って、他の商品、たとえば電気製品や自動車のように一定の商品についての多くの被害者が共通の商品被害としてメーカーと集団交渉をして又は集団的に手続きをとって解決できるものとは違う。、ひとりひとりの住宅欠陥が違うので、あくまでも個別契約に基づいて個別的に交渉や手続をせざるを得ない。
   
 
A 住宅紛争は、専門的・技術的知見を必要とする。建築知識はもとより法律的知識も必要である。
   
 
B したがって、被害者は素人の消費者が多いところから、雨が漏る、ひび割れがするなどの欠陥現象又は不具合事象だけがしか通常理解できず、どうしてそのような欠陥現象が生じてくるか、たとえば基礎や地盤補強を手抜きしているから家が傾きひび割れが出来るのだという欠陥原因を知らないために、本当は基礎や地盤からやり変えなければならないのに、床面だけの手直しだけで業者は誤魔化し手抜き補修をされる。
   
  このようなことから私たちは消費者が業者と対等に交渉し適正な補修をうけたり修繕費などの賠償金をとるためには、なによりも消費者の目となり頭となり且つ口や手となつてくれる建築士や弁護士など専門家集団が必要だと考えるにいたった。 私たちはこのように欠陥住宅被害に苦しむ消費者救済のためには消費者だけの団体であっては足りず、消費者サイドに立って正しい欠陥原因事実を究明してくれ、且つ消費者に対して相当な補修や相当な賠償金を獲得するための処方箋を作ってくれる専門家集団を自ら持たねばならないと考えたのである。

言い換えるならば、私にとって欠陥住宅を正す消費者運動には何よりもまず被害の個別性を尊重することと、欠陥原因や相当補修方法など究明し如何にして欠陥被害を回復するかの専門的技術的力を持たない限りは、自ら専門家であり多数の専門技術者を抱える業者とは対等の太刀打ちが出来ないこと、つまり欠陥住宅を正す消費者運動の特殊性を理解し、その特殊性を十分汲み取る消費者運動でなければならないと考えるに至ったのである。
   
  3. 大切にしている考えや思い。
   
  欠陥住宅を取り巻く法律制度はきわめて消費者に厳しい。

十万円の洋服を注文しても身丈にあわなかつたり、綻びなどがあれば仕立て直すか新品と取り替えてくれる。他の電気製品などの商品でもクレームがあれば取り替えてくれるのが通常である。

しかし、民法第六三四条は少々の欠陥があっても、「修繕に過分の費用がいる場合で、欠陥が重要でないならば修繕しなくてもよい。」とか、民法第六三五条は「建物は一旦出来上がれば契約目的を達していなくても、請負契約を解除することが出来ない。」とか定めている。

業者らがこれを盾にとるのはまだしも、多くの法律家までがこれら法律をもとに「機能を回復するならつぎはぎだらけの補修であってもかまわない」とかいっている。契約の解除が出来ない以上は基礎や骨組みに欠陥があって、通常は取り壊し建て替えるのが一番経済的な補修方法ではあっても、取り壊し建て替え補修は出来ず、したがって「取り壊し建て替え代金を賠償金として請求することが出来ない。」ともいっている。 そして、「家の修繕をしてもらえれば、欠陥によつていためられた精神被害も回復されるとみるべきだ」として慰藉料の請求は認められないとも言われている。

これらのことは別に法律に出来ないとの明文の規定があるわけではない。 しかし、欠陥住宅被害者はこの業者サイドの解釈に悩まされ取り壊し建て替え費用相当賠償金や、慰藉料の獲得は厚い壁に阻まれ、長年に亘って悲涙の涙をのまされてきた。

被害者の悲願を判例獲得によつて実現し、共通項としての制度改革に結び付けることが、大切にしている考えや思いである。

幸い欠陥住宅を正す会では昭和五九年末の対殖産住宅判決以来、この被害者の悲願を実現する判決を獲得し続けている。

先般制定された住宅品質確保の促進等に関する法律も、これら消費者サイドの個別判例の集積が共通項としての制度改革をもたらしたひとつの現れと思っている。
   
  4. 関心を持つている人へのアドバイス。
   
  第二項、第三項で述べたように、目に見える家の傾きなどの欠陥現象だけに目をうばわれず、その原因である守るべき技術基準遵守の手抜きに目を向けてほしい。 そして、欠陥住宅問題を単に個別契約の当事者である業者と消費者の間の背信行為つまり業者の悪徳性だけに結びつけず、現今の住宅の生産システムが

住宅会社 →特約店(一次一括下請店)→二次下請店 (実際に施工する業者) →個別下請け

という重畳的下請けシステムで、請負代金の多くの部分が中間利益にとられ、結局直接施工するものが半値八掛け二割引と言われるように、極端な場合には代金額の三分の一程度の価格で施工せざるを得ず、そのための施工原価の切り詰めが欠陥と結びつきやすいことや、業者に雇用されている建築士が工事監理することを認められている建築士制度など、制度的な欠陥にも目をむけてほしいと願っている。

終わりに、この道に志す方に、ご参考までに左の拙著をお読みいだけたらと思っている。
  • 欠陥住宅紛争の上手な対処法(平成八年 竃ッ事法研究会刊)
  • 欠陥住宅の見分け方第三版(平成十二年竃ッ事法研究会刊)
  • 欠陥住宅調査鑑定書の書き方(平成十二年竃ッ事法研究会刊)
   
  (平成13年5月15日 澤田和也)