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欠陥住宅を正す会の窓
   
  昭和53年以来24年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている
欠陥住宅を正す会  
では、このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ記事をお届けします。
   −正す会の窓…その23−
  今回も欠陥住宅Q、& A、シリーズのつづきです。
   
  欠陥住宅 Q、& A、    (その5)
 
 

住宅会社がよいのか地元の工務店がよいか
   ―― 住宅の生産システムの違いを理解しよう ――

Q) そろそろ自分の住まいをつくりたいと考えています。
私と家内は、新聞や雑誌でよく目にする住宅会社の方があか抜けしていてよい建物を作ってくれるのではないかと思うのですが、両親に相談したところ、家を建てるなら昔から世話になっている地場の工務店に頼む方が良いのではないかと言うので、どうしたものか悩んでいます。

◇    ◇    ◇

(A)ご質問の点はなかなか難しい問題を含んでいます。いずれが良いかは選択の候補に上がっている住宅会社や工務店の施工能力や信用にかかわることですが、この二つのタイプの住宅生産者の違いについて知識を持つことが、あなたが最終的な選択をするときに役立つことと思います。
経済高度成長政策によって農村から都市への人口流入が盛んになる昭和35〜36年ころまでは、農村部でも都会地でも地域単位の共同社会性が強く残っていました。というのも、住民の流動が少ないところから、各地域社会には工務店があり、大工や棟梁なども住まっており、地域の人と信頼関係で結ばれていたからです。
そして、地域の大工や棟梁、またはその近代的な組織形態である工務店に住宅建設を直接依頼し請負契約を結び、その請負契約を結んだ請負人が直接建物を施工するというのが大多数の注文形態でした。
もともと信頼関係で結ばれているうえ、直接施工をするところから欠陥(手抜き)に対する倫理観も請負人である施工者に強く働き、また職業倫理が社会で根強く機能していた当時の風潮から、欠陥といっても、故意や重過失に基づかない単なるミスに基づくものが見られる程度でした。
しかし昭和35〜36年ごろの高度成長期以降、住民の流動化によって、都市部においても郊外地(農村部)においても地域に根づいた信頼すべき大工や棟梁を知らない人々が増えてきたことに加え、当時とられていた住宅金融政策による膨大な国家の資金を見込んだ住宅会社が出現しました。住宅会社の多くは他産業でブランドイメージを持つ大企業の子会社で、マスコミ媒体をフルに利用して集客することを主眼にしていました。
しかし、マスコミをにぎわす住宅会社は、必要な施工要員をかかえて直接住宅を施工することはなく、各地域に一次的な下請けを持ち、その一次下請けがさらに二次下請けや孫請けなどを持つという重畳的下請けシステムで住宅生産をする形態をとりました。
したがって、大抵の場合、実際に施工する下請と注文者とは直接のつながりはなく、そこでは過去に働いていた直接施工者と注文者との間の倫理的な制御がなくなるとともに、数次の下請を経ることによって中間経費が増加するところから、末端の直接施工者は製造原価を切り詰めざるを得なくなりました。これによりいわゆる手抜き欠陥が発生するようになったのです。
このような住宅生産システムの変遷を考慮して、もし住宅会社に依頼されるのならば、その会社の従業員教育の程度や現場の施工管理を含む施工能力の有無を、地場の工務店に依頼されるのであれば、社長が建築技術や建築士資格を持っているかなど、その工務店が直接施工の長所を生かせるだけの施工能力を持っているかどうかを見きわめることが大切です。
また、契約を完全に履行するには財産的基盤が必要ですので、どの程度の信用力があるかについても検討する必要があります。
住宅会社の場合は概して企業形態が大きいので信用力の点では担保されやすいでしょうが、地場の工務店とて、長年地道に経営されていれば信用力は十分保持しています。
なお、いずれを選択するにしろ、結局は契約の内容である設計図書どおりの施工が確実にされるかどうかの問題ですので、専門的な技術知識を補充してくれる建築士さんに、設計とその設計のとおり施工がされているかどうかの工事監理を依頼されることが大切です。
設計も施工も一切お任せの注文形態では、請負人の独善的な施工になり、欠陥が生じ、後日トラブルが発生する可能性があります。注文者が自ら選んだ建築士をつけることを嫌がる業者は要注意で、契約することは避けるべきでしょう。

澤  田  和  也
(平成1727日)