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欠陥住宅を正す会の窓
   
  昭和53年以来24年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている
欠陥住宅を正す会  
では、このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ記事をお届けします。
   −正す会の窓…その24−
 
 

欠陥住宅住宅 Q、& A、    (その6)

 
 

あなたの立場に立ってくれる建築士を
      ―― 建築士と建設業者との関係 ――

(Q) 住宅の新築にあたっては、専業の建築士に設計や工事監理を依頼する方がよいと聞いたので、住宅会社にそのことを言ったところ、業者は「当社の建築士が設計や工事監理をします。しかも、その代金はいただいていませんので、この方がお得ですよ」と言うのです。どうしたものでしょうか。

◇    ◇    ◇

(A) 現在の住宅会社では、原則として、設計や工事監理はその会社に雇用されている建築士が設計や工事監理にあたるシステムをとるのが一般的です。中には、確認申請手続き費用は別としても、設計料や工事監理料(設監費用)は取らない、つまり建築請負代金の積算費目には計上されていないところもあるようです。
 表面的に見れば、別途設監費用を支払うよりも安上がりであるように見られがちですが、施工業者が有資格の建築士を雇用しその人に設監をさせているのですから、全く無料でできるはずはなく、設監費用は他の工事費目の中に上乗せされているものとみるべきです。
 したがって、あなたが直接支払う金額が安くつくかどうかは別の問題です。
 では、建築会社に雇用されていない独立自営の建築士またはそういった事務所に雇用されている建築士に設計や工事監理を頼む実益はどこにあるのかということになります。
 分かりやすく言えば、設計は、これから建物を建てようとする計画のことで、国政にたとえれば立法に当たります。また施工は、その設計どおりに家を建てるという行為で、いわば法律の執行である行政にあたるものです。そして工事監理は、でき上がった工事結果が設計図書(設計図と仕様書設)どおり施工されているかどうかをチェックするものです。いわば司法にあたるものです。
 そして、建築士法では、建築士に対して、建築物の質の向上に努める義務と、法令の基準に適合するようにしなければならない義務などを定めるとともに、工事のチェックに関しては、もし誤った施工がされている場合には施工者に注意を与え、これに従わないときには建築主に対して間違った施工がされていることを告げなければならないと定めています。
 この建築士の職責に関しては、業者に雇用されている建築士であれ専業の建築士であれ、何ら変わることはありません。したがって、建設業者に雇用されている建築士も当然この法律の定めに従って、注文者の要求を入れた相当な設計や適正な工事監理をすべきなのですが、施工者も設監者も同じ会社であれば、立法も行政も司法も一人の者がするのと同じこととなります。
 つまり、本来、設監者は施工業者とは別個独立の立場で正しい施工をさせるようにする立場にあるのですが、建設業者に雇用されながら適正な業務執行を行おうとすると、施工している会社の悪口を言わなければならない結果となり、建築士法の職責をはたすのが難しい場面が多いのです。
 現に、著名な住宅会社でも欠陥住宅が生まれているのは、このように同じ会社の者が設監や工事施工をしていることから来るなれ合いや癒着によるものと考えられています。
 ご参考までに、欧米では設計と工事監理を同一の業者がすることができないいわゆる設監分離の原則が貫かれています。これは前の例で述べた政治の世界における三権分立の精神と同じで、工事施工と設監を互いに牽制し合わせてチェック・アンド・バランスの原則で適正な住まい造りをしようとしているのです。
 我が国では、古来より大工や棟梁との信頼関係が深かった上に、職業倫理も確立し、技術レベルもすぐれていたので、設計施工が原則の形となっています。しかし、現在の利益社会は、大工や棟梁に家づくりをゆだねた倫理的前提が失われた社会となっていますので、やはり第三者の専業建築士に設監を依頼されるのが得策でしょう。
 設監費用の問題については、通常、建築代金の一割程度と言われていますが、あなたのご予算に合わせた相当な設計がされ、また業者選びに際しても適正な意見が述べられるならば、一切を業者に任せて値づけをさせるよりも合理的な値段となり、実質上の高い安いの問題は別の問題となるものと考えられます。

澤  田  和  也
(平成17221日)