トップページ  
 
本会設立の趣旨  
 
本会の活動方針  
 
入会のご案内  
 
主な行事  
 
例会のご案内  
 
活動実績  
 
会の組織  
 
お知らせ  
 
正す会のバックナンバー  
 
道しるべバックナンバー  
 
お知らせ・その他バックナンバー  
 
●新着情報
欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ記事をお届けします。

―正す会の窓・・・その28―

延長引き分け、再試合と熱戦を繰りひろげた夏の高校野球も早実の初優勝で幕をしめました。 高校野球の閉幕にあわせるかのように、当会の本部がございます関西には秋の気配が漂い始めます。みなさまの地方ではいかがでしょうか。
昨年10月よりスタートした『欠陥住宅Q、&A、』シリーズも今回で10回目になりました。
これは日本消費者経済新聞に連載されたもので、一般読者の皆さんにも判り易く解説しておりますので、どうぞお役立てください。

 

欠陥住宅 Q、& A、    (その10)

   残代金の支払い差し止めと遅延損害金

―― 補修を求めているときは損害金は発生しない ――

 

(Q) 2,500万円で新居を購入し、某年2月3日に引き渡しを受けて入居しましたが、しばらくして雨漏りなどの不具合が発生しました。業者にたびたび補修をしてもらってもとまらないので、第三者の建築士に調査してもらったところ、窓周りの水切りと外壁下地の防水紙が逆に施工されていることから、その部分の取り壊しや修復などが必要となる、大幅な補修が要る欠陥があるとのことでした。その補修には800万円もかかることが11月下旬に分かったので、同月30日、業者に対し、残代金1,000万円から補修代金800万円を差し引いた200万円を支払うと通知しました。

 しかし、業者は、契約書についている民間連合約款によって、引き渡しのときから1日当たりT万分の4の損害金がついている、2月3日から11月30日までの300日間で120万円となっているので、残代金は1,120万円であり、仮に800万円の補修費と相殺しても320万円の支払をしてもらわなければならないと言うのです。補修を求めて支払を拒んでいたときにも損害金はつくのでしょうか。

 

*    *    *

 

(A) 

民法634条は、「請負わせた注文住宅に欠陥がある場合、注文者は補修または補修にかわる損害賠償(通常は他に頼む場合の補修代金)の支払いを求めることができ、また業者がそれに応じるまでは残代金の支払いを拒むことができる」と定めています。

ここで争いになるのは、残代金が補修代金を上回り、いくらかは残代金を支払わなければならない場合、この例でいえば、200万円の残代金に遅延損害金を支払わなければならないのかと言う点です。

別の言葉で言えば、修理代を超える残代金については、後で支払をとめたときからの遅延損害金をつけなければならないのかという問題です。

これについては従来から争いがありましたが、最高裁平成9年2月14日判決では、残代金と損害金の金額がそれぞれいくらであるかにかかわらず、請負(残)代金全額の支払いを拒めると判断しました。ですから、この判例によると、あなたは損害金が800万円あっても、残代金全体の支払が拒めるのです。

ただし、例えば補修代金は10万円以下なのに,1,000万円の残代金の差し止めができるかなど、補修金額と残代金との間に甚だしい差額があるときにも残代金の支払いを拒めるかという問題については、民法1条に定める真義誠実の原則上、問題となる余地がありますが、あなたの場合にはそのような問題は生じないでしょう。

さらに、相殺した後の200万円については、いつから損害金がつくかが問題となります。これについては、約定の引き渡しのときからとする説もありましたが、最高裁平成9年7月5日判決は、相殺の意思表示によって支払うべき残代金の金額が確定したときからと判断しています。

これは、先に述べた請負人である業者が賠償金を支払うまでは、注文者は請負代金全額の支払いを拒めるという判決との兼ね合いから見ても、相当な考え方です。つまり、相殺して支払を拒めなくなった残代金についてだけ、それが相殺によって確定したとき、つまりあなたの場合は修理代金と残代金との相殺を業者に通知した11月末日の翌日である12月1日から遅延損害金がつくこととなるのです。

このような次第で、業者の言い分は不当です。あなたは12月1日から残代金200万円について一日当たり1万分の4の800円の遅延損害金を、残代金を支払う日までつけられるだけだよいのです。

要するに、補修を求めて残代金の支払いを差し止めているときには、その補修金額が判ってそれを残代金から差し引く通知を業者にするまでは遅延損害金はつかず、その差し引き金額支払いの通知をした時からその差し引かれた残代金に遅延損害金がつくだけだということです。

これは消費者には当初いくら補修代金がかかるか判らず、大抵は専門家にみてもらってはじめて補修方法や代金額が判ることから云っても当然のことといえるでしょう。

澤  田  和  也

(平成17418日)