トップページ  
 
本会設立の趣旨  
 
本会の活動方針  
 
入会のご案内  
 
主な行事  
 
例会のご案内  
 
活動実績  
 
会の組織  
 
お知らせ  
 
正す会のバックナンバー  
 
道しるべバックナンバー  
 
お知らせ・その他バックナンバー  
 
●新着情報
欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ記事をお届けします。

―正す会の窓・・・その35―

 今回ご紹介する以下の論説は、去る平成19年2月7日午後1時より5時まで、国民生活センター相模原研修センターで行われた消費者相談員向けの研修講座に講師として招かれた、当会専門委員石川育子一級建築士が行った講演のレジメです。幸い聴講者の好評を得て、終了後の質疑応答も約一時間にわたり活発に行われました。

石川一級建築士は御存知のように、平成16年9月(株)民事法研究会刊『欠陥住宅の見分け方・第4版』などで代表幹事澤田和也の執筆に協力されるなど『欠陥住宅を正す会』の消費者のための欠陥調査鑑定に努力されています。 そして数多くの取り壊し建てかえ認容判決獲得のため調査鑑定者として御尽力いただいております。 なお石川氏の鑑定書の見本としては平成12年3月同じく(株)民事法研究会から出版された『欠陥住宅調査鑑定書の書き方』(澤田和也著)の217頁以下に掲載されております。ご参照ください。
以下のレジメは大部に亘りますので三部に分けてお届けいたします。

建築の基礎知識〜建物の構造・工法を中心に〜 (1)

平成19年2月7日

欠陥住宅を正す会専門委員
一級建築士 石川 育子

1、 建築一般

 建物に求められる性能はいろいろありますが、人命を守る「安全性」は中でも最も必要とされる重要な性能といえます。建物の最低限の基準を定めている建築基準法でも、構造の安全性と防火の安全性は、特に重視されています。欠陥住宅といわれる建物のほとんどは、この構造の安全性が欠如していたり、防火の安全性が欠如していたりするものです。それともう一つ、雨漏りの問題があります。雨露をしのぐということは建物本来の機能ですから、わざわざ法律で規定していなくても、雨漏りしないということは、建物に当然備わっているべき機能です。

(1) 住宅建築の流れ

@ 契約の内容を特定する

住宅を建てるとき、施工者と工事請負契約を交わします。また、建売住宅を購入するのであれば、売主と売買契約を交わします。

欠陥住宅の相談に乗っていて痛感することは、売買であれ、請負であれ、住宅を建てるにあたって、あるいは購入するにあたって、契約の内容を特定する図面や仕様書、見積書がおろそかにされていると思います。

住宅は個別の敷地に個別生産されるものですから、造られ方から考えますと、どの住宅もオーダーメイドしているのと同じです。したがって、その建物の内容を表す図面と仕様書、見積書は契約に不可欠です。建物という三次元の立体の内容を表すのには図面を用いて表現し、仕様書と見積書によってどのような材料や製品を使うのかを特定しているわけです。

中でも特に、構造図がおろそかにされているのが残念です。住宅の施工者や設計者は、購入者や施主である消費者に、建設する建物に構造上の安全性がどのように確保されているのかを、構造図を示して説明する責任があると思いますが、そのような認識が消費者の側にも施工者の側にも欠けているように思います。

A 基本設計と実施設計

住宅を建てるとき、設計図面は段階を踏んで作成されます。設計にあたっては、まず、建築主の考えや要求、意図を十分理解して、建物の全体像を具体的な空間構成として設計図面を作成します。この段階を基本設計といい、設計図面は、面積表、仕上表、配置図、平面図、立面図、断面図程度で、縮尺も1/100程度です。

基本設計の図面が建築主によって承認されると、これに基づいて、工事の実施に必要な詳細設計図面を作成します。この段階を実施設計といい、設計図面は、基本設計の図面に加えて、矩計図、天井伏図、展開図、建具表、各部詳細図などの意匠図が作成され、構造図関係では基礎伏図、床伏図、小屋伏図、軸組図などが作成され、設備関係の図面も作成されます。木造3階建てなどのように構造計算による安全性の検証が必要な建物の場合は、構造計算書も作成されます。

これらの意匠、構造、設備の多岐にわたる図面は、施工品質確保のために必要な図面ですが、設計と施工が一括して発注されるときに省略されていることが見受けられます。

(2) 建築確認申請の手続き

@ 確認申請書と確認済証

建築物の工事が始まる前、設計が完了した時点で、その建築物の計画・設計が法律の規定に適合しているかどうかを確かめるのが「建築確認」です。建築主は、都市計画区域外で木造一戸建て住宅を建てる場合等を除いて、建築工事を始める前に確認申請をしなければなりません。建築確認において、設計の段階での法の規定への適合性が審査されるのです。

特定行政庁または民間確認機関が建築確認申請の内容をチェックし、法令に適合していると確認した場合に、「確認済証」が交付され、確認申請書副本も一緒に返却されます。

A 検査済証

建築基準法7条5項に定められたもので、「建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合している」ことを証する文書です。工事完了後に完了検査にパスすれば、特定行政庁または指定確認検査機関から交付されます。

B 確認図面と契約図面の相違

欠陥住宅の相談に乗っていると、確認図面と契約図面がまったく相違している場合があります。また、確認図面を施工業者あるいは売主からもらっていない場合もあります。このような場合は、建築基準法に何らかの形で違反している場合が多く、構造上の安全性が確保されていない場合もあります。またこのような場合はたいてい、検査済証もありません。

建築確認は図面審査ですから、確認の図面どおりに建てれば、適法な建物になるということで、確認済証は交付されますが、完了検査は現場での立ち入り検査ですから、確認図面と間取りから違うような建物を建てた場合は検査に通らないため、完了検査は受けていないのです。防火の規定を守っていない場合にも完了検査を受けていません。

2、 構造・工法の基礎知識

 住宅を建てるとき、住宅の構造・工法は、本来、目的や予算、工期などの条件によって決定されるものです。一方、現状の住宅の設計・施工を一括で受ける工務店や、住宅展示場やテレビで宣伝するハウスメーカーは、たいてい単一の構造・工法で営業していますから、設計と施工が一括の場合には、消費者にとっては、業者を選択するのと構造・工法を選択するのとを同時に行っている場合が多いといえます。
 住宅によく使われる構造には、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などがあります。また、工場生産された規格住宅であるプレファブ住宅にも、木質系、軽量鉄骨系、コンクリートパネル系などがあります。

(1) 木造戸建住宅の構造・工法の概要

@ 木造軸組工法(在来工法)

わが国に昔からある木造の工法で、柱と横架材(梁・桁・胴差など)を組み合わせて架構をつくり、これに、壁・床・小屋組を加えて、全体を構成したもので、全体の構造は、基礎・軸組・床組・小屋組・耐力壁に分類されます。

A 木造枠組壁工法

昭和49年に建設省告示として構造に関する技術基準が制定されたもので、北米の木造工法です。ツーバイフォー工法ともいいます。

構造体の構成を簡単にいうと、各階の壁枠組がその上下で床枠組または小屋組に緊結されることによって、一体化されており、「壁構造」あるいは「箱構造」といえます。また、使われる製材の断面種類が少なく、部材の継手・仕口などの接合方法は主に釘打ちとなります。

【石川育子(いしかわ・いくこ) 略歴紹介】

1950年、大阪府に生まれる。1974年、大阪市立大学生活科学部住居学科を卒業ののち、1976年、同大学大学院生活科学研究科住居学専攻修士課程を修了。同年より建築設計事務所にて建築設計工事監理実務に携わるとともに、1980年、一級建築士の資格を取得(建設大臣登録第140,959号)。以後、住宅関連の調査研究に携わるとともに、欠陥住宅を正す会専門委員として、また裁判所の鑑定人として、数多くの欠陥住宅の調査鑑定を行っている。

2部につづく