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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ記事をお届けします。

―正す会の窓・・・その36―

 今回ご紹介する以下の論説は、去る平成19年2月7日午後1時より5時まで、国民生活センター相模原センターで行われた消費者相談員向けの研修講座に講師として招かれた、当会専門委員石川育子一級建築士が行った講演のレジメです。

幸い聴講者の好評を得て、終了後の質疑応答も約一時間にわたり活発に行われました。

石川一級建築士は御存知のように、平成16年9月(株)民事法研究会刊『欠陥住宅の見分け方・第4版』などで代表幹事澤田和也の執筆に協力されるなど『欠陥住宅を正す会』の消費者のための欠陥調査鑑定に努力されています。 そして数多くの取り壊し建てかえ認容判決獲得のため調査鑑定者として御尽力いただいております。 なお石川氏の鑑定書の見本としては平成12年3月同じく(株)民事法研究会から出版された『欠陥住宅調査鑑定書の書き方』(澤田和也著)の217頁以下に掲載されております。ご参照ください。

なお、以下のレジメは3部に分けてお届けしていますうちの2回目にあたります。
1部は正す会の窓・その35(19年3月更新)でご覧いただけます。

また先日、石川建築士が講演を行った国民生活センター教育研修部の井口真理子氏から当会宛にご丁重なお礼状を頂戴いたしましたので、ご紹介させていただきます。

 

拝 啓

 時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。

 過日は同センター実施の相談員研修につきまして、石川育子建築士をご紹介 いただきまして、誠にありがとうございます。おかげさまで3日間の研修は盛況 に終わり、受講者から理解が深まったと好評を得ることができました。厚くお 礼申し上げます。

 石川先生には建築の構造についてご講義いただき、受講者からは専門的な話 であったが、具体的な事例を挙げていただきながらの解説でわかりやすかった と大変好評でした。

  従来実施している研修とは異なり、住宅契約ではなく「建築の構造・瑕疵」に ついてのテーマであったため、受講者にはとまどいもあったようですが、石川 先生にわかりやすい資料をご用意いただきました。

  澤田先生にはご連絡が遅くなり、大変申し訳ございませんでした。

 今後とも当センターの業務につきまして、ご指導くださいますよう、よろし くお願い申し上げます。

  末筆ながら、季節柄ご自愛のほどお祈り申し上げます。

敬 具

2007年3月1日

建築の基礎知識〜建物の構造・工法を中心に〜 (2)

平成19年2月7日

欠陥住宅を正す会専門委員
一級建築士 石川 育子

(2) 欠陥トラブルの原因となりやすい箇所

@ 軟弱地盤での基礎の不同沈下

 欠陥住宅被害で、基礎の不同沈下によって、建物が傾くことがあります。建物を建てるときには建物に働く荷重や地震などの外力に対して、建物が傾かないように基礎を設計し、施工する必要があります。そのためには、地盤を正しく評価し、その評価に基づいて適正な基礎を施工する必要があるのです。このように、基礎と地盤は建物を支えるための重要な要素ですから、互いに密接にかかわりあっているので、建築基準法では、基礎と地盤に関する規定が定められています。

住宅の基礎については、建築基準法施行令38条3項において、「建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。」と規定されています。これは、平成12年の建築基準法施行令の改正で加えられたもので、地耐力に応じた基礎の形式が告示で定められています。

建物が不同沈下した場合に、施工業者は、建物が傾いたのは地盤の瑕疵によるものであって、建物を建てた施工業者の責任ではなく、造成工事を行った業者の責任だと主張することがありますが、施行令の規定にもあるように、施工業者は地盤にあった基礎を施工する必要があるわけで、地盤の状況に応じた基礎を施工しなかった施工業者の責任は免れません。

A 不同沈下の現象

 基礎が不同沈下し、建物が傾くと、床と柱が一定の方向に傾いたり、基礎が折れたり、建具の開閉不良や建具と建具枠との間に隙間ができたりします。

B 基礎の形や配筋が設計図どおりでない

 木造住宅の基礎は、たいていの場合、布基礎かべた基礎で施工されます。布基礎の底盤幅が設計図の寸法より小さい場合や底盤厚さが不足している場合は契約を下回る施工がなされていることになります。また、構造上の安全性が確保されていない場合もあります。

C 耐力壁(壁量)の不足

 建物に働く力は、大きく分けて、鉛直荷重と水平力の2種類があります。鉛直荷重は、建物自体の重さや人や家具などの重さのことで、軸組工法の建物では主に柱や梁などの軸組が支えます。

一方、台風や地震のときに建物に作用する力を水平力として、これに抵抗するのが耐力壁です。

耐力壁には、筋かいという斜めの材を設置して三角形の架構で水平力に抵抗するものと、構造用合板や石膏ボードなどの面材を柱と横架材に釘で止めつけて、面で抵抗させるものがあります。

施行令46条4項に必要壁量が定められており、木造住宅では、平屋建て2階建てでもこの規定による壁量を確保する必要があります。確認図面で指示されている位置に耐力壁が入れられていない場合には、壁量が不足していることがあるので、チェックする必要があります。耐力壁が不足していると、地震や台風に対する安全性が確保されていないということになります。

枠組壁工法の場合は、施行令46条4項ではなく、告示に必要壁量が定められています。

D 筋かいの取付不良

 木造建物の筋かいがその性能を発揮するためには、地震力や風圧力などの水平力が作用したときに、筋かいが端部で外れないようにする必要があります。

筋かい端部と軸組(柱・横架材)との留め付け方法について、筋かいの種類に応じて、必要な金物(筋かいプレート)や釘の本数などの規定があります。施行令47条と告示で定められています。

仕口加工なしで突きつけ釘打ちなどで留めてある筋かいは、水平力が作用したときに外れてしまうため、有効な筋かいとなりません。

E 面材の取付不良

 筋かいと同様、地震力や風圧力などの水平力が作用したときに、面材が耐力壁として性能を発揮するために、使用する釘の規格や釘打ち間隔などが告示で定められています。

 釘打ち間隔が開きすぎていたり、面材が割れていたりすると、有効な耐力壁となりません。

F 床組の不良

 床梁のスパン(支点間距離)が長くて梁せいが小さい場合に、床がたわんで建具の開閉に不具合が起こることがあります。また、ツーバイフォーでは、床根太のスパン(支点間距離)が長くてピッチ(間隔)が粗いと、床がたわむ場合があります。これらは、鉛直荷重による現象ですが、そうよく起こることではありません。

一方、建物が水平力を受けたときに、この水平力を耐力壁に伝える役目を床組が担っています。この役割のためには、根太を使った工法では、火打梁が必要ですが、これが入っていなかったり、極端に少なかったりすると、床組の不良といえます。

G 小屋組の不良

 小屋組は床組とほぼ同じ役割を担っていますが、水平力に対しては勾配があるため、小屋組全体で考える必要があります。水平力を耐力壁に伝えるために、振れ止め、けた行筋かい、小屋筋かいなどで、小屋組全体を固める必要がありますが、これらが施工されていない場合は、小屋組の不良といえます。

また、たる木の軒先部は釘のみの留め付けではなく、風に対するあおり止めとして、ひねり金物等の金物を使ってたる木を桁にとめつける必要があります。

H 雨漏り

 雨漏りには、屋根からの雨漏り、壁からの雨漏り、サッシ廻りからの雨漏りなどがあります。

 雨仕舞の考え方は、雨水が濡らす建物の部位や部材について、その形や配置を工夫することによって、表面や隙間の雨水を適切に処理し、不具合の発生を防ぐことといえ、具体的には、水を流す、水を切る、水を返す、水を抜くことなどがあげられます。雨水がうまく処理できていないところから、雨漏りが発生します。

I 断熱不良

 住宅の断熱の基本は、断熱材で建物全体をスッポリ包み込んでしまうことです。このため、外気に接している天井や壁、床に断熱材を施工する必要があります。

 浴室の外壁に断熱材が施工されていなかったり、外壁の断熱材が寸足らずになっていたりすると、断熱不良といえます。

 

(3) 不具合箇所の確認のポイント

@ 写真撮影のポイント

・ 全体像をつかむため、建物の外観を2面くらい撮影する。
・ 基礎や筋かいなど、設計図と寸法が違う場合は、スケールをあてて撮影する。
・ 接合部などズームして撮影した場合は、どこを撮影したかわかるように、ズームしていない写真も写しておく。

A 建築士に相談するときのポイント

・確認図面・契約図面、契約書類等を提示する。
・工事中写真や現況写真もあれば提示する。
・第三者による調査を行っている場合にはその調査報告書も提示する。

B 状況把握するためのポイント

・仕上げの欠陥だけか、それとも構造の欠陥のために仕上げにも不具合が発生していることも考えられるのか。
・補修が大がかりとなるものか、比較的簡単に行えるものか。
・建物の引渡しを受けた時期や、不具合に気づいた時期。
・業者との交渉の経過等。
・請負契約か売買契約か、建物代金は。

(つづく)

【石川育子(いしかわ・いくこ) 略歴紹介】

1950年、大阪府に生まれる。1974年、大阪市立大学生活科学部住居学科を卒業ののち、1976年、同大学大学院生活科学研究科住居学専攻修士課程を修了。同年より建築設計事務所にて建築設計工事監理実務に携わるとともに、1980年、一級建築士の資格を取得(建設大臣登録第140,959号)。以後、住宅関連の調査研究に携わるとともに、欠陥住宅を正す会専門委員として、また裁判所の鑑定人として、数多くの欠陥住宅の調査鑑定を行っている。