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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その50―

 

平成14年9月24日、欠陥住宅被害者の悲願であった取り壊し建て替え損を認める最高裁判決が出されました。これによって欠陥住宅についての法律解釈および救済方法の論争に、全てではありませんが一応の決着がつきました。 そこで今回は消費者サイドに流れを変えた判決に沿ってご相談にお答えしています。

平成20.4.5

欠陥住宅 Q、& A、     (その19)

取り壊し建て替え費用を請求できるか
                ―― 流れをかえる最高裁判決  その1 ――

(Q) 木造住宅の雨漏りが止まらず、法令で要求されている筋違い壁の不足、柱や梁などの緊結不良・寸法不足、地盤に見合わない基礎など、屋根や内外装で覆われている骨組みや基礎、地盤補強にも数々の欠陥があることが判明しました。業者は単なる補強でお茶をにごそうとするのですが、これでは「つぎはぎだらけ」の補修で、取り壊し建て替えをしない限りは図面通りの新築住宅にはなりません。
 業者に対し取り壊し建て替え費用相当額の賠償請求ができるでしょうか。

*               *               *

(A) 注文した住宅にお話のように、骨組みや基礎など安全上大切な部分に耐力基準に欠けるなど、重大な欠陥がある場合、補強で済ませようとするなら、耐力壁の増設などで約束通りの間取りが変更になったり、内外装も変わったものになって美観上も利用上も支障をきたしてしまいます。これでは新築住宅に欠陥がある場合の瑕疵担保責任(民法570条・634条)としての補修とはならないわけです。いうのも、業者は設計図通りの新築を約束したからです。

これらの骨組みや基礎は、屋根や内外装に覆われているので、それを取り払わなければ補修できないうえ、基礎や地盤補強に至っては、通常は建物を上にあげるか、移動させなければ必要な補修工事をすることができません。

上屋(うわや)の骨組み部分にも欠陥があり、内外装を取り払う必要があるのですから、結局は上屋部分を解体し更地としたうえで、地盤補強や基礎の取り替えをすることとなります。

これが結局業者に求めることのできる補修の具体的な方法です。前に述べたように約束の設計図書通りの状態になるように補修しなければならないからで、結局は取り壊し建て替える他に補修方法はないことになります。

そこであなたの場合は、右相当代金を損害賠償として請求するほかないわけですが、「取り壊し建て替え相当代金の損害賠償請求ができるか」については、民法635条が「建物はでき上がれば、契約目的を達することができないときでも請負契約の解除をすることができない」ということを定めているところから、「契約の解除の場合でも、契約がなかったことにする、つまり家の代金を返してもらえるだけなのに、取り壊し建て替え請求を認めると、さらに取り壊し代金まで請負人に負担させることになり、認められない」という消極説が従来からの多数説で、これに対してひどい手抜きの欠陥住宅が出はじめた昭和50年代に入ってからは、これを認める積極説も出はじめ有力説になりつつありました。しかし、判例中には消極説もあり、裁判例は混沌としていました。

これに対し平成14年9月24日最高裁は積極説に立って取り壊し建て替え代金相当損害の請求を認め、裁判実務上決着をつけたのです。消費者サイドに流れた画期的な判決です。

マイホームは一生に一度の買い物として、もし建物に致命的欠陥があった場合には、取り壊し建て替てほしいというのは消費者の宿願です。もっとも欠陥があれば、どんな場合にもこれが認められるというのではなく、建物に致命的な欠陥があって取り壊し建て替えるほか、技術的にみても経済的にみても相当な方法がない場合にだけ認められるのです。どのような場合がこれにあたるかは今後の判例の積み重ねでより具体的になってくるでしょう。

あなたの場合にはこれに当たる事例ですので、取り壊し建て替え代金相当の賠償請求ができることとなります。

この判決が出された背景には、住宅の生産システムの変遷があります。

もともと住宅は、地域社会で信頼関係に結ばれた大工・棟梁に注文し生産されていました。大工・棟梁は注文契約の当事者であると共に直接施工し、消費者と同じ地域社会のメンバーとして「手抜き」などという反倫理的行為が生まれる余地はなかったのです。

これを受けて取り壊し建て替損の賠償請求ができないとの消極説は、安全性まで脅かすような致命的な手抜きなどあり得ないとの前提に立っていたのでした。

しかし昭和30年代後半から高度成長期に入ると、多くの人々は地域社会とともに顔見知りの大工や棟梁を失い、折りから登場した住宅会社に頼らざるを得なくなりました。

住宅会社は、集客を主目的とする会社で自らは直接施工せず、仕事を数次の下請けにさせるため、直接施工する末端の下請けは消費者と直接の顔見知りはなく、消費者に対して仕事上の倫理感が少なくなるうえ、幾段階もの下請けを経るため直接施工者には相当な利益がまわりかね、ここに材料と手間を故意に抜き、安全性まで抜く致命的欠陥が発生したのです。積極説はこの実状の認識に基づいています。

澤田 和也
(平成17年9月26日)