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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その53―

 

今回のご質問は、“裁判上の和解”についてです。今までの経験から、“裁判上の和解”について誤解や不信をお持ちの方が多く、正しくご理解していただくため、詳しくお答えしております。

欠陥住宅 Q、& A、     (その22)

裁判上の和解とは?
                ―― 譲っても確実に賠償金が ――

(Q) 長かった欠陥住宅裁判も、証人尋問でようやく結審し、判決も間近と思っていたら、依頼していた弁護士から、「裁判所から和解手続に回す、次回は和解なのでそのつもりで出廷してほしい」といわれました。今まで、たびたび話し合いをしても、補修に応じず、やむなく裁判手続をして終わりの段階にきているのに、がっかりします。和解勧告を受ければよいのかどうか、裁判上の和解の是非を教えてください。

*               *               *

(A) ご質問の和解手続は、通常裁判上の和解手続と言われるもので、民事訴訟法89条によって、裁判所が原・被告両当事者に譲り合いをさせて事件を終らせる手続きのことで、もし当事者が和解案に合意すれば、裁判所の調書に記載され、『確定判決と同一の効力』という、その和解内容と同じ内容の判決があったのと同じ結果になるのです(同法267条)。
つまり、

  「一、被告(業者)は原告(消費者)に対し、○○年○○月限り金○千万円を支払う。
   二、原告その余の請求は放棄する。
   三、原告、被告間には本件以外何らの債権債務関係がないことを確認する。」

などという、和解条項が裁判所の調書に記載されていれば、右年月日までに被告は原告に対して金○千万円也を支払わなければならず、もし支払いがなければ原告は被告の財産に強制執行して、右和解金相当金の回収をすることができるのです。

その代わり、例えば原告が3000万円の請求をしていても、2000万円で納得すれば、回収できるのは2000万円だけで、残金の1000万円についてはもはや請求できず、被告に右2000万円の支払い義務のあるほかは、原・被告両当事者の間にはその事件についてはもはや相方とも相手方に何らの請求もできない、という意味です。ですから、裁判上に和解に合意するに当たっては、慎重な考慮が必要です。

確かに被害者にとって、長年かかった裁判が終わり、判決がもらえる段階なのに、今さらどうして和解をと思われるのももっともです。しかし、裁判上の和解勧告は裁判所が慎重に当事者の言い分を整理し、いろいろな証拠から一定の結論を得た結果ですから、まったく事件の実態にそぐわない勧告を裁判所がするはずはなく、双方の互譲によって通常は妥当な結論が出されるものと見てよいでしょう。

ところで、和解は譲り合いですので、被害者の請求金額がすべて認められるということはあり得ず、証拠関係などから請求金額を幾分減額するよう原告に譲歩が求められるのも当然のことです。その減額の金額が問題ですが、もし、その和解金額がのめるものであるのなら、裁判上の和解には次のようなメリットもあります。

@ 裁判は三審制をとっており、控訴、上告と一審の判決結果を争うことができ、特に欠陥住宅訴訟のような込み入った事件では、一審で勝訴しても控訴や上告がされて長期化する恐れがあります。
A その間に業者が倒産したり、または財産隠匿を図ったりすれば、折角の判決も執行不能となり、時として一銭も賠償金の回収ができなくなるリスクを回避できます。そこで、経済情勢が厳しいときや、相手方の資力や信用状況に不安のある場合などには、多少の減額をしても確実な回収を得るメリットがあります。
次に、
B 裁判で勝つには、相当な証拠が必要で、しかも相手(被告)に責任追及ができる明確な法律上の根拠が必要ですが、往々にして相手方には資力があっても、請求者側に法律上追求できる根拠や証拠に乏(とぼ)しい場合があり、そのようなときにもその相手から賠償金を取るには、多少の譲歩をしても和解するのが得策です。もし、敗訴したり大幅な賠償金の減額があれば折角時間と手間をかけて訴訟した意味がなくなるからです。
C  それに何よりも、和解のメリットはすぐに賠償金がもらえ、訴訟から開放されることです。和解によって早期に紛争を解決すれば、今のあなたにとって必要な人生計画をすぐに実行できるメリットがあることです。

このように和解といえば通常は、「譲り合い」という道徳的な面だけが強調されがちですが、裁判上の和解には右のようなメリットもあることを銘記され、依頼している弁護士ともよく相談されて、和解の諾否と和解条件の相談をされることをお勧めします。

澤田 和也
(平成17年11月14日)