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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その71―

今月は“住まいの相談Q&Aその8”と“その9”の2件をお届けいたします。
このシリーズは今から30年前に書かれたものですが、法律と技術の融合を目指して新しい欠陥住宅対策の処方箋を打ち立てていたものです。今でも十分その内容は妥当するものと自負しています。

(21.8.5)

≪住いの相談 Q&A その8≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

遮音性の悪いマンション

Q、 郊外地に、鉄筋コンクリート造りマンションを購入しました。3階建ての2階で、大変遮音(しゃおん)性が悪く、子供が上階で飛び跳ねる音はもとより、隣の話し声が雰囲気まで伴って聞こえてくる始末です。業者もその事実を認めているのですが、「原因がわからない。建築基準法の遮音規定は守っているし、このほか遮音の標準となるものは格別ないから我慢してほしい。」と逃げるだけで、ラチがあきません。交渉の決め手を教えてください。

専門家から具体策を

A、 確かに建築基準法法30条の2は、共同住宅各戸間の「界壁」について遮音性を有すべきことを定め、同施行令22条の2はその具体的基準を示していますが、昭和45年制定当時の社会の経済情勢を反映し、現在の日本建築学会の適用等級では最低限の「第3級」、つまり「使住者から苦情の出る確率が高い」とされる程度の、不十分な規定になっています。
 ご質問の苦情事例も、学会等級第3級の生活実感例にほぼ見合っております。しかも右法令の規定は「階床」についての規定を加えていません。床は壁より強固な構造にされるのが通例で、遮音性があると見ているのでしょうが、床衝撃音のこともあり、しかも鉄筋コンクリート造りでは壁も床も一体となっているのですから、配慮を要します。
 建築基準法はあくまでも建築物についての「最低」の基準であって(第1条)、これを守ったからといって、マンション販売契約上予定されている遮音性能を満たしているわけのものではありません。たとえ契約書や販売パンフレット中に遮音性能について触れられていなくても、マンションとて「人の住い」である限り、プライバシー確保と安息のために生活上支障のない程度の遮音性は契約上当然予定されているとみるべきです。  この際よるべき標準としては、権威ある専門家が合議の上、現在の社会的技術的水準を前提に作成した右学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」(昭和54年刊)があります。技術のことは、法令は最低限の基準を定めているだけです。その細目はその時その時の社会的技術的水準によるべきだからです。
 あなたのマンションが郊外地にあり、外部騒音の激しい都会地マンションよりも内部騒音が気になることを、業者も計画の段階から注意すべきです。庶民住宅の典型と見られる公団公営の共同住宅でも、遮音性については学会適用等級の1級(標準)を採用した仕様にするようになっています。この1級とは「通常の使用状態で使用者からの苦情がほとんど出ず遮音性能上の支障が生じない」とされているものです。民間分譲でも少なくともこの1級程度の仕様は当然採用されてしかるべきです。
 欠陥住宅交渉の決め手は、まず第三者の専門家に相談して、「それが欠陥(遮音性不良)か否か」「その欠陥がどういう原因によるのか」という欠陥の内容と原因を正しく理解することです。専門家である業者が遮音不良の原因が「わからない」はずはありません。そして次に、第三者の専門家からその相当な補修方法≠聞き、「具体的な補修方法を示して」交渉にのぞむことです。あなたの場合もまずお宅の「騒音レベル」をJIS(日本工業規格)A1417,1418の方法で測ってもらい、これにより同1419の「遮音等級」から更に建築学会の「適用等級」を出してもらって、現状を科学的に確かめ、更にこの結果から右の適用等級の遮音性をもたせるには、「床、壁、内装仕上げなどをどのように補修すべきか」の具体的な処方箋を、その専門家から教えてもらうことです。具体的な補修方法についても建築学会の右書物中「設計指針」を活用すべきでしょう。
 業者はたぶん、「値段が安いから」と抗弁するでしょうが、業者が「快適なマンションライフ」をうたっている限り、学会適用等級1級に該当する程度の遮音性を持つ仕様を前提に、当初から売値をつけるべきもの――と考えるのが相当です。

(昭和56年6月4日)

≪住いの相談 Q&A その9≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

雨漏りがする物置

Q、 物置を新築しました。ブロック積み造り平屋根で、床面積13平方メートル、高さ2.4メートルです。屋根は防水工事もした4センチ厚のコンクリート造りですが、雨漏りが絶えません。屋根表面のモルタルには無数の割れ目があります。しかし、業者は補修に応じず、「モルタルは収縮しやすいから割れるのは当たり前で、雨漏りは仕方がない。防水工事をし直すがその代金を支払え」といいます。業者の言い分は正当ですか。

手抜き・・・賠償請求を

A、 業者の言い分は全くのデタラメです。屋根下地の手抜きにより雨漏りがするのだろうと思われます。
 ご質問に添付されていた簡単な見積書や略図から判断すると、この物置は、布基礎の上にコンクリートブロックを鉄筋でつないで耐力壁とした、補強コンクリートブロック造りといわれる構造です。屋根の下地組み(小屋組み)はブロックの壁頂に木材の軒桁(のきげた)をボルトで取り付け、木材の梁(はり)を渡して直接その上に合板を張り付け、更にメッシュ(金網)入りのコンクリートを打ちつけアスファルト防水をして、表層をモルタルでならしている仕様です。
 モルタルが多少収縮して細かいヒビ割れが入る場合もありますが、防水層がその下にあり、通常ではこの程度のヒビ割れが漏水原因になるとは考えられません。防水その他の雨仕舞いが悪い場合もあるでしょうが、むしろこの場合には、防水層を支える屋根下地に問題があると見るべきです。
 補強コンクリートブロック造りでは、通常ブロック壁の上端をコンクリートの「伏せ梁(臥(が)梁(りょう))」で結び強固な小屋組みにする必要があります(建基法施行令62条の5)が、この物置は高さ4メートル以下で床面積が20平方メートル以下ですので、法律上は必ずしもこの「伏せ梁」は必要ではなく(同令62条の2第2項)、木材の軒桁や梁でこの代用をしているわけです。
 しかし、梁の上に更に40センチ間隔程度の根太(ねだ)を取り付け合板下地とすることなく、1メートル間隔もの梁に直接合板を張っているのですから、人の歩行などによりこの合板が浮き上がりぐらつく上、メッシュを入れながらコンクリートの厚みが4センチしかないのでは、合板の上のコンクリートも亀裂(きれつ)を生じやすくなります。少なくとも10センチ程度の厚さが必要です。いかなる防水層も屋根下地が甘く、剛性に乏しいと切れやすく、防水の役目を果たしません。
 物置であっても建築物であり(建基法2条1号)、別段の断りがなくても「雨漏りがしないこと」は新築契約上当然のことです。業者の費用負担でこの欠陥補修を求めることができます(民法634条)。このようなデタラメを言う業者ですから信用ができません。念のため第三者の建築士に欠陥調査をしてもらい、屋根下地を含めての完全な補修計画と補修費用の見積もりを出してもらい、その費用額を賠償金としてこの業者に請求して、補修は他の信用できる業者にしてもらったらいかがでしょう。右条文では、補修にかえて賠償金を請求してもよい、と定めているからです。

(昭和56年7月23日)