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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その74―

まだまだ夏の続きと思っていても、すこし郊外に足を延ばすと早くも田んぼが色づき始め
昨日こそ 早苗とりしかいつの間に 稲葉そよぎて秋風の吹く

(古今集 読人知らず)

の古歌が浮かんできます。めぐる季節に月日の経つのがなんと早いことかと知らされます。
今回は“住まいの相談Q&Aその10”と“その11”をご紹介します。

(21・9・7)

≪住いの相談 Q&A その10≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

床鳴りと窓サッシの開閉不良
Q、 昨年末、木造の在来工法の住宅を新築しました。平屋部分の洋間を普通に歩いていても、耳ざわりなボコンという床鳴りがします。合板(コンパネ)の床の釘を打ち直してもらったのですが、床鳴りはやみません。業者は「土台にヒノキを使ったためかもしれない」というのですが、本当でしょうか。また、同じ洋間のアルミサッシのテラス窓も、入居4ヶ月後から開閉しにくくなりました。同じ部屋ですので関係があるのではないでしょうか。
施工など手抜きか
A、

 床の骨組み(床組み)は、束石(つかいし)、床束(ゆかづか)、大引き、根太(ねだ)から成り立っており、この上に床板を張るのです。大引きや根太が細かったりその間隔が広かったりすると、床がぐらつきやすく、床鳴りの原因ともなります。通常、大引きの太さは9センチ角、根太の太さは4,5センチ角程度のものを使用し、大引き間隔は90センチ程度、根太間隔は洋間では30センチ程度をとり、床板合板は1,2センチ厚以上とします。
ご質問に添え付けの図面では、この条件を満たしています。
 床組を構成する床板、根太、大引き、床束、束石のそれぞれは、釘やかすがいなどで密着一体化されているので、通常は歩行により床鳴りが生じないのですが、何らかの原因でそのそれぞれの間に隙間ができていると、床歩行により床鳴りがすることになります。
 すき間が生じる原因としては、当初から床板と根太、根太と大引きとの釘打ちが甘かったり、釘の長さが足りなかったり、釘打ち間隔が広すぎたりすることによる場合があります。お宅の場合は、釘を打ち直しても床鳴りがやまないというのですから、他の原因も検討しなければなりません。大引きと床束をつなぐかすがいの手抜き、床板合板が根太の中心線で張り合わされていない場合も考えられますし、床下地盤の砂利固めの手抜きにより、後で束石が沈下して床束が浮き上がっている場合や、不良材使用による大引きの後発的な反りなどによるものと考えられます。
 テラス窓の開閉不良の原因としては、平屋部分のことでもあり、基礎や地業(地盤補強)の手抜きによる建物全体の不当沈下とは通常では考えられません。多分、1間半のテラス窓サッシの上の桁(けた)に不良材が使用されたり、不適当な位置に桁の継ぎ手があったりして、後発的に桁が下に反り、それにより間柱(まばしら=吊束のこと)がサッシ取り付け枠のまぐさを押し付けて、サッシ外枠に荷重がかかっていることによるものと思われます。
 「土台にヒノキを・・・・・」という業者の言い分は、全く不可解です。ヒノキは強度的にも釘のしまりや加工上も最適の材料です。あなたの場合図面上は根太などの床組み材すべてにヒノキが指定されています。業者は、ヒノキはヒノキでも乾燥不足や繊維方向にねじれがある反りやすい不良材を使用していたり、図面とは違う床組み施工をしていたりするので、あなたの関心をそれら手抜きからそらそうとして、そのように言っているのではないのでしょうか。そうだとしたら床鳴りも、テラス窓の開閉不良も、施工や材料の「手抜き」という点では結びつくように思えます。

(昭和56年9月3日)

≪住いの相談 Q&A その11≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

モルタル壁の落下
Q、 15年前の購入し、6年前に塗り替え補修した木造建売住宅のモルタル塗り外壁が、道路全面の1階部分全体にわたって突然落下し、道路上に遊んでいた3歳児が下敷きになり死亡したと報道されていました。それによりますと、その壁は最近数箇所が浮き上がり、所有者は塗り替え補修した業者に点検を求めたところ、「大丈夫」といわれてそのまま放置していたとのことです。こういう場合、壁の脱落の原因と責任関係はどうなりますか。
責任の追及も可能
A、

 木造モルタル塗りの下地は図のように、家の本体に取り付けられたバラ板に、防水紙と共にラス(鉄網)をステーブル(また釘)で打ち付け、その上にモルタルを塗り固めて外塗りとするのです。
 地震でもないのに外壁の1階部分が脱落したのは、多分、6年前の補修時にバラ板を取り替えず、その中には弱ってステーブルのききが悪くなっていたものがあり、一方、1階と2階のモルタル塗り継ぎに適当な目地処理や防水処理が行われていなかったため、その部分のひび割れから雨水がしみこみ、ラスをバラ板につけているステーブルが錆びて腐食し、モルタル外壁の重みに耐え切れなくなって、外壁がバラ板からラスもろともはずれ落ちたのでしょう。また、バラ板の間隔が粗く、ステーブルの打ち込み間隔も甘くて、バラ板との密着度が弱かったことにもよるのではないでしょうか。
 さらにそれに輪をかけたのは、多分この家の構造体(基礎と骨組み)に手抜きがあり、たとえば筋かい入りの耐力壁の数が足りなかったり、床面を固める火打ち材が手抜きされたりしていて、家全体に剛性が乏しく、車が通っても揺れている状態で、壁面にひび割れが起きやすく、ステーブルもはずれやすかったからとも思われます。
 刑事上の責任については、家の所有者は壁の浮き上がりに気づき、念のため業者の点検を求めたのですから、多分不問とされるでしょう。多面、専門家でありながら「大丈夫」といった補修業者には、その点検が相当だったかについて刑事上の責任(業務上過失致死)が追及されるでしょう。
 しかし民事上の賠償責任については、家の所有者は、過失の有無を問わず免れることができず、被害者の父母に賠償したうえで、補修業者に点検の過失があれば求償できる定めとなっています(民法717条)。6年前の補修が手抜きによるものであり、それが事故原因なら、通常は欠陥担保期間は5年でも(民法638条)その規定は排除され、一般の10年の時効によるとの説も有力で、この場合には補修責任の追及も可能でしょう。
 構造体の手抜きも今回の事故の一因かとも思われますが、15年前のことであっても筋かいなど法律上の構造基準を守っていないときには、建売業者が尽くすべき注意義務を少なくとも怠ったものでして、発見して3年以内であれば不法行為責任追及が可能でしょう(民法724条)。家を注文するときには、構造体や下地に手抜きがないかを専門家に検査してもらうのが無難ですし、万一のことを考え、所有建物について第三者に対する責任保険を掛けておくのが安心だと思います。

(昭56年10月22日)