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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その77―

今年ももみじの便りがとどく季節になりました。
京都には嵐山・高雄・東山界隈と、もみじの名所もたくさんありますが、
いつもの通いなれた道で、名所のもみじにも劣らず
艶やかに紅葉している“かくれもみじ”を見つけ
思わずドキッとすることがあります。
そして、ちょっと得をしたような気持ちにさせられます。
さて、皆様は今年はどちらにもみじ狩りにお出かけでしょう。
           深まる秋に、こころがざわめく今日この頃です。

(21・11・9)

今月の「住まいの相談Q&A」は、その14と15のご紹介です。

≪住まいの相談 Q&A その14≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

隣地工事による地盤沈下
 昨年5月頃から同年末にかけて、境界線すれすれに隣地で4階建てのマンションの建設工事が行われました。その際の掘削工事で、最初から土留めをしてくれず、このために私の家の敷地が地滑りし、地盤が沈下して私の方のブロック塀や、物置や母屋までもが傾斜し、壁に亀裂を生じる被害を受けました。マンションの施行業者は、工事中に私の被害の補修を約束していたのに、完成後1年たった今も補修してくれません。どうしたらいいでしょうか。
積極的に賠償請求を

 マンションなどの大規模な建物を建てるには、敷地の大幅な掘削工事が通常必要ですので、ご質問のような隣地被害が発生しやすいのです。これを防ぐために、あらかじめ周辺地の地盤や建物の状況を調査して、工事騒音や工事資材落下防止なども含めて、第三者への被害防止対策を慎重にするのが工事関係者の常識であるとともに、建基法90条がこのことを定めています。
その詳しいことは更に同法施行令136条の2の5以下に決められています。
 しかし、受注難にあえぐ業者は、ともすれば「早く安く」という施主の甘えに安易に妥協し、工費を安くあげるために、この対策を無視しがちです。
 土留めをしないで掘削に着手したのは、余りにも境界ギリギリに建物を建てようとしたため、土留め打設用機械の頭が境界線に当たるので使用できなかったからでしょう。このことから、このマンションの建築計画にも建ぺい率や採光窓の違法などの無理があったのではないかと思われます。あらかじめ、施主または業者と「被害防止の建築協定」を結ぶなり、これに応じない時は、裁判所に工事続行中止の仮処分を求めるなりしておかれたらよかったのにと、残念です。
 土留めなど必要な被害防止対策をせずに、ご質問のような被害が生じたのですから、業者の工事は過失による不法行為(民法709条)であり、あなたは受けた損害の賠償を求められます。この時効期間はあなたが被害を知ったときから3年(民法724条)ですし、工事完成後1年も放置していて、もはや任意に補修や賠償をしないものとみられるのですから、積極的にあなたの方から損害賠償請求の訴えを起こされることをお勧めします。
 この場合、損害というのは地滑りを起こした地盤や、それによる不等沈下し変形した建物や塀を元通りの状態にする補修に必要な工費や関連する諸雑費のことなどです。状況によっては、今の建物などを取り壊し、地盤補強の上、建て替えるほかに相当な補修方法がない場合もあります。訴訟に先立ち、第三者の建築士に相当な補修方法と工費の鑑定を求め、慎重に損害額の検討をされることです。
 さて、施工業者のほかに、注文や工事の指図について過失があったときは、施主も損害賠償の責任を負わねばなりません(民法716条)。施主の委託を受けて設計監理に当たる建築士に工事指図の過失があったときも同様です。この3者の過失が競合するときもあります。マンションの施主は、多分、分譲業者か賃貸業者で、第三者被害防止については当然知識と関心を持つとみられるのに、このような杜撰な工事が行われ、しかも建築計画に無理と違法がうかがえますので、施工業者とともに施主や建築士も訴えたらいかがかと思います。これによって、この三者間の内部矛盾があらわにされ、訴訟はあなたに有利に展開することでしょう。

(昭和56年12月24日)

≪住まいの相談 Q&A その15≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

夏でも結露ができる
 私の家は山の南北に伸びる斜面に建つ鉄筋ブロック造りです。敷地の南側に庭をとり、 北側隣地との境界の高い崖を背負うようにして家を建て、崖の下の2メートル幅ほどの空き地には目隠しがわりの樹木を植えています。しかし、家の北側崖下に面している洗面所、トイレ、玄関土間が夏特に湿りやすく、タイル壁面などはいつもぬれています。なかでも玄関土間は水をまいたようになり、雨の日でなくても、空気がよどんでいるような日には特にひどいのです。原因と対策を教えてください。また欠陥として業者の責任を問えますか。
通風促し防湿工事を

 お示しの図面には玄関土間付近に汚水排管の記載がありますので、あるいはその継ぎ目が外れていて、汚水が土面ににじみ出ているのではとも思えなくもありませんが、ご質問に臭気のことも出てきませんし、多分お困りの原因は「結露」と思われます。
 結露といえば、一般には冬の寒い日にストーブを入れていると窓ガラスに生じる水滴と知られていますので、夏の蒸し暑い日にも起きるのか、と不思議に思われることでしょう。
 しかし、結露は外気温には関係なく、室の内外で温度差が激しいときに発生するのです。すなわち、一定気圧一定温度では、空気中に存在できる水蒸気も量には限りがあり、室の周辺の壁などの温度が下がると、そこに触れた暖かい空気の中の余分な水分がその壁などにかたまらざるを得なくなるからです。タイル、ガラスなど吸湿性の乏しい物体では水粒として目に映るわけです。
 結露はもともと、キッチン、洗面所、浴室など暖かい湿気(水蒸気)が発生しやすい部屋とか、温度の低い玄関まわりの内壁とかに発生しやすいものです。ご苦情の場所は、南側からの暖気がこもりやすく、風通しの悪い北側の樹木の茂った崖下に面していますし、日当たりが悪く、建物躯体のブロックが夏でも夜間に冷やされたまま日中になっても温まりにくくて、温度差が激しい場所ですので結露しやすいのでしょう。
 玄関の土間の異常な結露は以上の原因のほか、敷地が山地ですので、もしかするとその下に地下水が通っているからかも知れません。地下水は夏でも18度前後を保ち、微量でも敷地の熱を奪い、土間コンクリートを余計に冷やす可能性があるからです。
 結露の対策としては壁体内などに断熱材を入れるということは常識となっていますが、これだけでは室内から内壁を透過した湿気が壁体内部などや断熱材そのものの中で結露を起こしますので、必ず高温の室内側にポリエチレンフィルムなどで防湿層を作ることです。そして、何よりもまず、室内の高温の湿気を室外へ放散させること、つまり通気換気をはかることです。窓をよく開けること、状況に応じ換気ダクトや換気扇をつけること、そして崖下の樹木も剪定して風通しをよくすることです。玄関土間も掘り返して、ぐり石の上に防湿層を造り、断熱材を敷いて後、10センチ厚以上のコンクリートを打ち直すことです。
 業者の責任としては、躯体のブロックは元来吸湿性の高い材料ですので、外壁側の防水塗料はもとより、内壁との間に防湿層や断熱材などを考慮したか、窓の位置や換気ダクトなど通風防湿上の考慮もしたかなどが問題となります。しかし、地下水の件については設計に際して通常予想されず、敷地の掘り方の際にも発見できるとは限りませんので、責任を問うのは難しいのではないでしょうか。

(昭和57年2月11日)