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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その81―

お正月気分でのんびりしていたら今年もあっという間に2月です。
春を告げる梅の花の便りもあちらこちらから届いています。
さて、今月の『住まいの相談Q&A』は“その17と18”のご紹介です。
つづけてお読みください。

(平22・2・1)

≪住まいの相談 Q&A その17≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

床高が足りない
 木造二階建て住宅を注文し、棟上げが終わってから床が張られ、内装の下地組に入っています。大掃除や修理の時などに床下に潜れるように床高を取ってほしいと思い、注文のときに業者に話したところ、「床高は50センチあればよいでしょう」と言われ、そのように頼みました。しかし、実際には20センチも不足する所があり、業者に善処方を求めたのですが、約束通りにしているといって応じてくれません。どうすればよいでしょうか。
設計図通りに要求を
A まず、あなたが「床高」という言葉をどのように理解されているのかが、問題です。
 建築実務上の一般的用法では、「床高」とは、設計の際基準とした地盤面から床の上面までの高さのことを言います。
 設計図は床高50センチの場合の断面図です。建物外周に基準地盤をとり、床下に5センチの盛り土をして、この上面から床の上面までを45センチとっています。建築基準法19条1項が建物の地盤面は建物の外周の地盤面より高くなくてはならないとし、また同法施行令22条1号も木組み床の床下地盤が土のままの時にはその地盤面から床の上面まで45センチ以上とらねばならないとしていますので、床高50センチとは、これら規定をほぼ最低限に順守した場合を言うこととなるのです。その詳細寸法は図示の通りです。

 ご質問の趣旨から、あなたが「床高」というのを床下の清掃や手入れがしやすい「床下高」のことと考え、その高さを50センチとして注文されたものとうかがえますが、業者はこれを一般的な「床高」として形式的に処理し、ほぼ説明図どおりの床高寸法で施工したのでしょう。

 そうだとすると、盛り土面から大引き下端までは30センチしかなく、20センチ不足ということとなります。説明図では同じ高さの床下地盤を想定していますが、実際には20セン チくらいの高低差がある場合も多く、その時には平均的な高さの地点を基準地盤とするのが通例ですので、なおさら床下高が狭められる箇所も出てくるわけです。
 「床高」が約束どおりかは、結局は設計図書(設計図・仕様書)か、これがないときには建物の最低の基準を定めた法令の条件を満たしているかで判断するほかありません。
 そこで、ほぼお手許の設計図どおりか、またほぼ法令の基準を最低限満たした説明図どおりに施工されていれば、たとえご意向どおりでなくても我慢されるほかないでしょう。このような残念な結果を防ぐためにも、一切を業者に任せず、設計と工事監理は十分に意向を告げて、第三者の建築士に依頼されることが望ましいのです。
 しかし、業者が設計図書かまたは法令の基準を甚だしく無視して、到底床下には潜れないような施工をしているときには、少なくとも床下に潜れることは契約の条件と見られますので、設計図書かまたは少なくとも法令の基準通りのやり直しを求めることができます。もっとも、床下に防湿コンクリートを打設したり、建物外周を掘り下げたりすれば、床下防湿や法令順守の目的は達せられます。
 けれども、あなたにこのような補修を認めなければならない義務はなく、注文に際してのご意向からすれば、やり直しを求められても無理からぬことです。業者が応じないのなら、工事続行中止の仮処分を求め、契約を解除して出来高査定の上、やり直し工費相当の損害金も加味して、契約金の過不足の清算を求める法的手続きをとらざるを得ないでしょう。

(昭和57年5月20日)

≪住まいの相談 Q&A その18≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

宅地造成の盛り土は?
 昨年末に宅地にしようと、もと沼地の田に60センチ高さの盛り土をさせました。その際の業者に、栗石(くりいし)を入れて地盤を固めるように頼んだのですが、業者は砂礫(されき)の方がよいと考えて、盛り土中に栗石は入れなかったとのことです。果たしてそれでよいのでしょうか。近く家を建てたいのですが、どういう点に気をつければよいでしょうか。教えてください。
沈下招く栗石混入
 あなたは栗石と砂礫を混同しておられるのではないでしょうか。栗石とは長径10センチ以上のこぶし大の石のことで、説明図のような建物の基礎の底や擁壁裏側の透水層に使うもので、盛り土に混入するものではありません。

 もし盛り土中に栗石を混用すると、たとえ転圧を繰り返しても、その粒が大きいことから、長い間には建物の荷重などによって、栗石と栗石の間の土砂が落ち込みます。かえって盛り土の不等沈下が進み、建物にひずみを招くおそれがあるからです。

 盛り土には、粒度分布のよい岩くず、砂、砂利(礫)が適当に混じりあったものが好適です。盛り土の内部での摩擦が大きく、流動性が少ないからです。日本統一土質分類によると、砂とは粒径0.074ミリから2ミリまでの土をいい、礫とは粒径2ミリ以上の土をいいます。0.074ミリ以上とは、大体肉眼でその粒が見分けられる大きさで、それ以下の粒径の泥(シルト)と区別できます。
 したがって業者の言い分は最もですが、予算のこともあり、当初にどうして納得のいく説明をしなかったものだろうか、と思います。
 盛り土をして数年間は自然に地盤が固まるまで放置しておかれるのが無難ですが、近々家を建てられるというのならこのようにされたら、という内容を示したのが説明図です。
 盛り土高60センチくらいならば、基礎は○印を付けた方のように地山まで掘り下げて、立ち上がり部分を深くして地山に底盤を設置してください。地山とは、盛り土以前の田の軟らかい表土を取り除いた硬い地盤のことです。盛り土部分に基礎の底盤を設置すると、先に触れましたように、盛り土の沈下で建物が不当沈下するおそれがあるからです。
 なお、底盤の下には栗石を小端(こば)立て(長軸を垂直方向に並べること)にして、隙間には砂利を入れて突き固めてください。建物荷重を均等に地盤へ伝達するためです。これを割栗地業といいます。その寸法は基礎の寸法と共に専門家と相談して状況に合わせてください。
 盛り土の擁壁についても注意してください。図のように擁壁の裏には栗石で透水層を造り、そこから擁壁外部まで水抜きパイプをとることです。もしそれがないと、盛り土部分に雨水などがたまり、盛り土の流動性が増し地盤が不安定になることや、水の重量によって盛り土の土圧が増して、擁壁を倒壊させるのを防ぐためです。
 盛り土高60センチ位ならば、図のような無筋コンクリートの重力だけで土圧を支える重力式擁壁でよいでしょう。ただし、盛り土高1メートルを超えるときには、宅地造成等規制法によって、規制区域内では工事の着手前に都道府県知事の許可が必要で、擁壁についても所定の条件に合致するL字形鉄筋コンクリート擁壁などの構造にしなければなりません。

(昭和57年6月17日)