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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その82―

 暖かい日がつづいて“もう春やわ”と気を許していたら、急に寒さがぶり返したり、
冷たい雨が降ったりと、ここ大阪では不安定な天気が続いていますが、
東大寺さんのお水取りも始まり、関西の春はもうすぐそこまで来ています。 今月も『住まいの相談Q&A』をお届け致します。

(平22・3・3)

≪住まいの相談 Q&A その19≫

【【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

図面の板厚より薄い軽量鉄骨
 敷地の関係から三階建て住宅を建てたいと思い、業者に設計・施工も頼んで、軽量鉄骨造り三階建ての棟上げが終わったところです。ところが、ある人から、この鉄骨の柱や梁(はり)の板厚が、確認通知書の図面では全て3.2ミリとなっているのに、実際は2.3ミリしかなくて危険だと教えられました。業者にこのことをただし、やり直しを求めたのですが、「100ミリ角の鉄骨だし、柱の数を多くしてあるので大丈夫、構造計算もしてある」といって応じてくれません。
建て直し要求も当然
 板厚4ミリ以下の薄い鉄の板を、H型やロ型に整型加工した鉄骨材を軽量鉄骨といいます。
 ロ型鋼の場合は、組み立てられると板厚がわからず、まるで芯まで鉄が詰まっているように見えます。それで業者は木材の場合と同じように思わせて「100ミリ角の頑丈な鉄骨」などといっているのでしょう。
 しかし、外見の寸法よりも鉄骨の場合、その板厚が問題なのです。軽量型鋼はできるだけ板厚(鉄量)を薄くしてコスト減を図りながら、型鋼としての一定の型に成型固定して、建材としての強さ、特に曲げの力に対する強さを持たせるため戦後開発された建材です。板厚が薄いほど経済的になりますが、それにも一定の限度があります。
 板厚が薄くなるほど、搬入搬出の衝撃で変形しやすい、部分的に傷つきやすい、組み立てや溶接がしにくい、火やさびに弱いなどの結果を生じ、建材としての安全性が失われやすくなります。
 この軽量鉄骨の持つ欠点を考慮し、技術的検討を加えて、日本軽量鉄骨建築協会は「軽量鉄骨建築指導基準」を作成し、建設省住宅局建築指導課長も、建築基準法6条の確認申請受理に際しては、「特殊な材料、構法を用いる等、特別の事情があり、右基準と同等以上の効力があると認められる時以外は右基準によるように」との通達を出しています(昭和36年5月31日)。
 これによると、軒高9メートル以上の三階建てでは、柱、梁などの主要構造部材には、「1階では板厚3ミリ以上の、2・3階では板厚2.3ミリ以上の鉄骨」を使用せねばなりません。従ってあなたの場合も、確認通知書の図面では柱、梁などに3.2ミリの鉄骨をしようすることになっているのです。
 確認図面が施工(契約図面)と一致すべきことは当然ですし、右基準によれば少なくとも1階は3ミリ厚(市販鋼材では3ミリはなく3.2ミリ厚)の鉄骨を使用しなければならないのですから、結局は現状の鉄骨組みを取り壊して、図面どおりの3.2ミリ厚の鉄骨で建て替えるよう要求できるのは当然です。業者が応じないのなら、契約を解除して損害金をも加味した上で、支払い代金の過不足清算を求める法的手続きをとらざるを得ないでしょう。
 なお、構造計算とは「柱、梁などの個々の材料が組み合わされた、建物の構造全体としての強さを、力学的に計算して建物の安全性を確かめること」です。当然個々の材料が一定期間、常に一定の強さを保ち、安全であることが前提で、その材料としての安全な最低の鉄骨板厚を定めたのがこの基準です。
 ですからこれに違反している限り、仮に柱の数を増やして構造計算上の安全値を満足させても、計算自体の前提が満たされず、その結果建物が安全だとはいえないこととなるのです(大阪地裁昭和57年5月27日判決)。材料の安全性が確保されていなければ、それらが組み合わされてできる建物全体の構造を検討しても無意味だということです。

(昭和57年8月5日)