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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その88―

朝夕は気温も下がり、関西地方もようやく凌ぎやすくなってまいりました。
スーパーには早くも栗や松茸などの秋の味覚が並び始め、
食欲の秋はもうそこまで来ています。
今回から、欠陥住宅被害者を対象にした代表幹事の欠陥住宅体験記を分載してご参考に供したいと存じます。
秋は活字も恋しくなる季節です。夜長の友としてください。

(平 22・9・27)

欠 陥 住 宅 に 出 会 っ た ら
――被害体験と40年の対策活動から得たレシピ――

『欠陥住宅を正す会』
代表幹事 弁護士 澤田和也

1、ごあいさつ
 私ども『欠陥住宅を正す会』は、昭和53年に大阪において、欠陥住宅、特に戸建て住宅の被害者が集まって生まれた『住宅のクレームに悩む消費者の会』を母体とする団体です。欠陥住宅被害の回復と相当な予防対策を消費者サイドで立てることを目的に置き、欠陥住宅被害回復に不可欠となる専門知識の確保のため、消費者サイドに立つ建築士や弁護士の育成につとめてきました。その成果は別紙当会のしおりに記載のとおりですが、当会の特徴は、業者からはもちろん、地方公共団体、弁護士会や建築士会などの公的団体からも金銭的な援助を一切受けず、専ら自前の手弁当で活動しているという点であります。実質NPOに相当する団体ですが,NPO法人として登録すれば、経費の確保に追われてボランティア精神が失われることをおそれ、あくまでも任意団体として頑張っております。
きょうは、今まで当会の活動が手薄であった中京地区においても当会の考える消費者サイドの活動が広まることを願い、本日の消費者のためのシンポジウムを開いた次第であります。ですので、本日のシンポジウムは専門家の研究発表というものではなく、あくまでも消費者のために、消費者に必要な情報を、消費者が理解できる形で提供することを主眼にしています。本日のシンポジウム終了後には無料法律相談も準備しておりますので,おわりまでご静聴、ご活用をお願いしたいと思います。
さて、入り口に当る「欠陥住宅に出会ったら(どうすれば)」という問題について、私自身の体験とその後の対策活動から、特にその骨子に当る部分をレシピという形でお話ししたいと思っておりますので、ご一読を願いたいと存じます。
2、私の体験。
 なぜこのような会を作り運営してきたか、また一般消費者が欠陥住宅に出会ったらどのような処し方をしたらよいかをお話しするに当っては、私自身が欠陥住宅に遭遇し、色々と悩んだ経緯をお話することが一番ご理解いただきやすいかと思います。
 私が欠陥住宅と出会ったのは昭和40年のことであります。当時私は、子供が幼稚園に通う年頃となり、学校環境などを考えて現在の住所地に住いを建てることにいたしました。弁護士にはなっておりましたけれども、建築には全く無縁でした。当時は,セキスイなどのプレハブや新建材などを使用した新しい建築工法が注目され始めた頃で、私の両親は、昔から頼んでいた大工の手で在来工法の家を建てることを勧めたのですが、私は、当時急成長を遂げていた住宅会社の宣伝や住宅雑誌の記事を鵜呑みにしてその新しい建築工法のメリット面だけに目を奪われ、デメリットの大きいことを全然知らず、軽量鉄骨3階建の建物を発注したのです。
 建築にあたっては、大学の後輩にあたる一級建築士のK氏に発注しました。その理由は、知人の紹介もさることながら、建築士を自分の職業である弁護士と同様に考え、建築士は消費者の利益を代表し、消費者である私のために予算に見合ったよい家をつくってくれるものと素朴に思っていたからです。工法の選択についても、新建材の軽量鉄骨は乾式工法で「早い、安い、よい」の三拍子そろった家ができるという住宅会社の宣伝と全く同じ文句でK氏が勧めたことが大きく影響しました。当時の私は、設計と施工を分離すべきことなど全く知らず、「建築士が設計も施工もすれば、普通の建築屋よりもよい建物ができる]とK氏から言われ、また頭でっかちであった私もそのように思って、K氏に建物の請負までお願いしたのです。今から思えば、失敗の根本はまさにそこでありました。結果としては、工期が送れ、雨漏りや不等沈下を起こす建物が出来上がりました.K氏も1、2度は補修してくれたのですが、雨漏りはどうしても止まらず、新築建物でありながら汚損、老朽化は進む一方で、たまらずに自費で雨漏りの修繕を他に頼まざるを得ない状況に追い込まれました。
 そこで、このような状況とK氏の不誠実な対応にたまりかねて、私は昭和41年末に雨漏りの補修代金と慰謝料を求める訴えを起こしたのです。もっと根本的な手抜きがあるから建替えるほかないのではないかと薄々思ってはいましたが、全く建築知識のない素人でしたので、現象形態の雨漏りと修繕代金、そして楽しかるべき我家で暗い生活を強いられ、子供にも影響を及ぼしていることなどの精神被害の回復を求めて訴えを起こすことにしたのです。しかし、訴えを起こすに際して建築関係の方に色々相談しても、断片的なアドバイスはしてくれても、なぜ雨漏りが止まらないのか、この建物にはどういう欠陥があるのかといういわゆる欠陥原因の説明をし鑑定書を書いてくれる人がなかなか見つからず、建築には素人の自分一人で16年間も訴訟を続ける結果となりました。今から思えば全くお恥ずかしい限りですが、当時の私は、建築士不信、建築関係者不信の思いから、他人に頼むということができなかったのです。その間、素人なりに建築の勉強をしたことが今日の活動に役立つこととなったのですが、その13年間は暗い日々を送っていたことが今でも思いだされます。
 また、訴えを起こしてからも、裁判所の「何をバカな訴訟をしているのか。そんなことは建築屋の言うことが正しいに決まっているではないか」というあしらいを受け、何度も悔し涙を呑む経験をしました。余談になりますが、当時、私の事件の審理をしていた裁判官が私に面と向かって、「こんなばかげた訴訟は早くやめなさい」と、まるで私が不正なこと、無駄なことをしているかのごとく言われたことがありました。その方は決して私を憎んでそうおっしゃったのではなく、むしろ「よかれかし」と思って忠告してくださったのでしょうが、後に私の名がこの方面で通るようになった頃に、裁判所でその元裁判官とお会いしたときに、その裁判官が顔を背けられたので、かえってこちらが恐縮した次第ですが、そのような善良な裁判官ですら、建築は建築屋任せ、素人が訴訟を起こすのはおかしいという考え方に凝り固まっておりました。その考えの方の背景には、建築が専門的な技術問題を含むことと、建築基準法を含む関係法令は専ら取り締まり手続きのためにあって、建物の品質内容である性能の最低限のレベルを定めているのだという認識が法律関係者に全くといっていいほど希薄であったことがあります。
 このような体験から13年後、私は『住宅のクレームに悩む消費者の会』に法律顧問として入会し、そこで建築顧問をされていた一級建築士の早草実先生と出会いました。そして、そのときに初めて、私の建物は建築基準法に定める耐力基準に違反していて、3階建物でありながら1.6ミリという軽量鉄骨を使用し、また耐力壁の足元を結ぶ繋ぎ梁がないという構造欠陥が最大の問題で、雨漏りという現象は雨仕舞いの杜撰さはもちろんのこと、その構造欠陥からきているのだということが判明したのです。取り壊し建替えを求めればすぐにでもその判決が得られたであろう案件だったのですが、それを知ったときには訴えを起こしてから10年以上が経過しておりましたので、請求の変更をあきらめ、修繕代金と慰謝料のみを得る結果となりました。しかし、自らが欠陥住宅と出会ったことが、今日の私を育ててくれたことに間違いはありません。

つづく   (平22・9・25)