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欠陥住宅を正す会の窓

昭和53年以来30年に亘って欠陥住宅被害者救済活動を続けている

         欠陥住宅を正す会では、

このホームページで欠陥住宅問題のホットなニュース、新判例など被害救済に役立つ学習記事をお届けします。

 

―正す会の窓・・・その98―

今年のゴールデンウイークはお天気に恵まれ、若葉の萌え立つ野山にお出かけになられた方も多いことでしょう。
新緑に彩られた自然ほど清々しいものはありません。
今月の≪住まいの相談≫は回を重ねその37と38のご紹介です。
さて今回の震災で、マスコミではあまり報道されていませんが、千葉県、茨城県をはじめ関東地方で地盤の液状化による建物への被害がたくさん出ています。
これらの地方にお住まいの方は、入梅による2次災害にくれぐれもご注意ください。

(平 23・5・16)

≪住まいの相談 Q&A その37≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

声がつつ抜けの吹き抜け
 最近メーカーに注文して玄関に吹き抜けホールのある木造2階建て新築しました。居住してみて話し声や音が響くので困っています。1階で話していても2階までつつ抜けに聞こえて日々の家族の会話もうるさく感じられるのです。また床に物を落したり、廊下を歩くとドンドンと音がしますし、2階の和室は畳敷きなのに、歩くと下へまるでドンと足をたたきつけている感じなのです。メーカーは仕方がないと言いますが、責任がないのでしょうか。
専門家に調査を頼む
 ">問題の理解は、音響を人の話し声やテレビの音声などの室内発生音と、歩行による床の音など建物の床や下地自体で発生する床衝撃音とに区別して考えることです。
 戸建住宅内における室内発生音の他室への遮音については、とくに当初から音楽室など具体的に遮音について注文していない限り、設計施工上の責任を求めるのは困難です。共同住宅各戸間における遮音とは違って、法令などによる確立された技術基準(標準)がないからです。とくに木造住宅では室内発生音の伝播(でんぱ)はその工法上ある程度予想できることで、玄関ホールが吹き抜けのため1階の音声が2階へ伝播されやすいなど間取りや建具の種類などが関係しているとしても、音声の感じ方には立地環境や居住者の心身状況と住まい方にも関係し、お気持ちは分かるのですが、設計に当たっての親切さの問題に帰着されがちです。
 従って室内発生音については、壁下地や建具の納まりなどを調べた上、設計図や仕様書(設計図書)通りの厚さの壁下地の石膏ボードが施工されていないとか、建具の納め方が不良で室内の遮蜜性に欠けていないのか、などについて検討されるほか決め手となる方法はないでしょう。
 一方、床衝撃音については、廊下の下地である合板の厚さや釘の長さ、打ち込み間隔及び根太(ねだ)材やそれを支える大引き材の太さや施工間隔が関係します。合板が薄く、釘の長さや打ちつけ間隔が甘く、根太や大引きが細く施工間隔が甘いと、歩行などの衝撃によって床や廊下がたわみ、下地材の浮き上がりが摩擦などによって発生しやすいのです。これらについては住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)の標準仕様書などの基準があり、たとえ設計図書に明記がなくても手抜きがあれば、メーカーの責任となります。
 とくに2階和室の床衝撃音は、2階の間仕切りを支えるその下の天井裏の梁背(はりぜい=梁の背の高さ)が不足していることで、歩行により床がたわみやすいことにもよるのではないでしょうか。お示しの平面略図による階下には相当な梁背の梁を支えられるだけの柱や耐力壁が見当たらないからです。そうだとしたら単に床衝撃音の問題だけではなく構造耐力(安全性)の問題ともなる可能性があります。設計施工上当然注意すべきメーカーの責任事項です。これらは極めて専門的なことで、第三者の専門家に依頼され、具体的に調査してもらい、その結果を待ってメーカーと交渉されることをおすすめします。

(昭和59年12月6日)

≪住まいの相談 Q&A その38≫

【朝日新聞『みんなの暮らし』欄〔大阪本社版〕に
昭和55年7月より40回にわたり連載】

傾いた中古プレハブ住宅
 2年前、丘陵を切り開いた盛り土の造成地に建つ中古プレハブ住宅を土地付きで買いまし。売り主は5年前プレハブ会社から土地付き新築として買ったものです。最近、盛り土擁壁の土留めにされている石の数ヶ所に大きい隙間ができて土砂の一部が流出し、建物も傾いてきました。売主に責任を求めたら、プレハブ会社に言ってくれといい、プレハブ会社は、擁壁が悪かったからで責任はないといいます。擁壁をつくった会社は倒産しています。どうすればよいでしょうか。
契約の解除できる
 土留めとして盛り土擁壁に積まれている石(けんち石)と石との間に隙間ができ、土砂が流出している以上、現在擁壁が敷地地盤の土圧などに耐えかねていて相当な耐力を持っていないことはほぼ確実でしょう。
 この場合、擁壁だけが当初から耐力がなくもろかったと断定するのは早計です。たとえば建物の排水会所に正しく排水管が接続されていなかったため、屋内からの排水が下水本管へ流されず直接地中に放流され、長年にわたって盛り土と地山(在来地盤)との間に滞留し、そのため盛り土層が地山層に沿って滑り、擁壁に加わる荷重が増し、結局擁壁が損壊した事例もあります。この場合は当然プレハブ会社の排水管接続のミスが競合してくることになります。
 第三者の専門家にまず、敷地の地盤調査をしてもらい,擁壁の構造が相当であったかなどを確かめることです。
 仮に当初から擁壁構造が相当な耐力を持っていなかったにしても、プレハブ会社は建物の設計施工者として、当然建物の基礎構造の選定に際して地盤や擁壁の状況を調べ、それに見合った基礎をつくるべき責任があります。擁壁が不相当なら施主にこのことを告げ補修させるとか、直接地山に基礎杭(くい)を打ち、擁壁が損壊しても建物が倒壊しないような設計にするとかの考慮を払わねばならないのです。
 またプレハブ住宅は建築基準法第38条による特殊建物として建設大臣の認定を受けているものです。認定に当たって設計施工に際しての技術基準を定めた文書(認定図書)があり、それに地耐力との関係での基礎構造のつくり方も規定されています。建物の傾きと擁壁の損壊とには関係があるでしょうが、建物の基礎が認定図書どおり設計施工されているかについても調べる必要があるでしょう。
 売主に対しては欠陥原因如何にかかわらず民法570条によって、擁壁を含め欠陥箇所の補修代金を請求するか、契約の解除が出来ます。又プレハブ会社に対しては売主が同社に請求できる欠陥保証責任を、売主に代わって請求することも出来ます。場合によってはプレハブ会社の設計または施工のミスによって損害が発生したものとして、民法709条の不法行為責任を求めることも可能だと思われます。

(昭和60年1月24日)

(注)この相談事例類似の判決が、大阪地判平3・6・28判タ774号225ページです。