壁にヒビ割れが出来ていたり、筋交いが不足している家を見て
消費者が
『安全だろうか』 と心配すると、
業者はよく、
『建っているのが、何よりも安全性の証拠ですよ』
と 事もなげに答え、消費者は納得はいかぬものの丸め込まれてしまう。
実は「安全性」とは、ただ単に建っているだけの問題ではなく、法律の定める強さの荷重(建物自体の重さ=自重、建物に入っている人や物の重さ=積載荷重)や外力(地震や台風など建物の外から建物に加えられる力)にその建物が耐えることができるか、という問題である。 その耐えることが出来る建物の性能(構造性能)のレベルが法律に定めているレベルを満たしているかということである。 「法律上の安全性」というコトバで置き換えるほうがわかりやすい。
法律が求める荷重や外力の強さ(仮定荷重)は、標準的な建物荷重(自重や積載荷重)や建物が存続中襲来するであろう最大幅の外力を過去の統計値などから想定して、比較的頻度の高いレベルで法令が定めている。
いうならば、通常この程度なら荷重や外力に耐えられて安心だというレベルの安全性が法律上の安全性で、建築基準法はこれが最低限の基準だとしている
だから、現に建っているから法律上は安全なのではない。 現に建っている建物の中でこの法律上要求されるレベルの安全性を持っていないもの、いわゆる違法建築は無数にある。
「現に建っているのが安全性の証拠である」などと言う業者の言い訳はスリ換え以外の何者でもない。 現に潰れているのならば「安全性があるか」などと問う実益はないからである。
現に建っているということは、その建物が、その建物の事実上の耐力(骨組み=構造・屋根・内外装等建物全体の持っている強さ)以上の強さの荷重や外力を経験していないというだけのことであって、法定の仮定荷重値の強さの荷重や外力を経験しない限り、果たして、法律上の安全性を持っているかどうかは判らないのである。
参考までに法律は、法令の定める耐力基準を守ることや法定の計算方法による構造計算で安全性を確かめない限り、法律上の安全性(相当な構造耐力)はないものとしている。欠陥住宅紛争で争われる安全性とはこの「法律上の安全性」のことであることを念頭において業者との交渉にのぞむべきである。単に「ひび割れがしている」「傾いている)だけの問題ではないのである。たとえ外見上はひび割れなどの不具合事象が見られなくても、相当な量の筋交いの設置など法定の構造基準が守られていなければ、法律上の安全性はないものとして相当補修や賠償を求めることができるのである。 |