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*****欠陥住宅対策の道しるべ*****
   
   
   
 

(その4) 欠陥住宅被害者に対するアドバイス・・・(U)
     ―― 弁護士から ――

   
 

 この“道しるべ”(その2)で当会専門委員一級建築士村岡信爾先生の調査鑑定者からのアドバイスをご紹介した。
 その趣旨は欠陥現象を中心に全てこれを指摘し網羅することよりは、構造欠陥などそれが認定されれば取り壊し建てかえに近い大幅な修繕行為となる欠陥を中心に調査鑑定をするのが相手方との紛争、特に訴訟による解決を目指している消費者にとっては有効であることを理解してほしい≠ニのことであった。
 これと同じことを訴訟又は裁判外の交渉を頼まれている弁護士も言いたいのである。
訴訟受任をして消費者の主張を訴状や準備書面にする際にも、消費者からはあれもこれも主張してほしいとの注文が来る。 調査鑑定の場合と同じく欠陥現象や美匠仕上げ、設備の不具合、使用上の不便感など、いずれをとっても不愉快で欠陥であることには違いないが、さりとてその要望を入れて消費者の指摘する箇所総てを主張すれば、争点はいたずらに複雑となり、立証も手間取って当然訴訟が長期化する。 長期化するだけならまだしも肝心の賠償金額の多寡の決め手となる構造欠陥や対候性能(雨漏り・結露)の欠陥などの論点がぼやかされ、結局は消費者の不利な結果になることが多い。
 「訴訟をすれば時間も金もかかり結局はくたびれもうけに終わる」との苦情の原因に、消費者が「言いたいことを総て言いたいし、多くの欠陥点を指摘すればひどいものだと裁判所にわかってもらえ多額の賠償金を請求できる」との思い込みがある。 賠償金額の多寡は欠陥現象や欠陥箇所の多寡にあるのではなく、相当補修方法の費用の多寡にあるのである。 これが認められれば結局は取り壊し建てかえ、又はこれに匹敵する大幅な修繕行為をせざるを得ないというような欠陥に的を絞って主張立証し、他の不具合事象や美匠仕上げなどの欠陥は業者の悪質性を推認させる事情として主張するのに止めるのが得策である。
 今までの取り壊し相当賠償金認定判決獲得の経験からしてもこのことが当てはまる。消費者が希望するそのような高額賠償の判決を獲得した事件の争点は絞り込まれていて極めて少なく、立証もその少ない争点に集約されている。 比喩的に言うならば訴訟記録が薄いほど良い結果が得られていると言って過言ではない。 判決結果の満足度は「訴訟記録の厚さに反比例する。」と言ってもよい。
 この消費者の要望と建築士や弁護士との考えのズレは、結局欠陥と言うもののとらえかた又は概念が、事件の当事者で事件を主観的にとらえている消費者と客観的に処理して裁判所の客観的判断を得ることに主眼を置く専門家の欠陥の捉え方との違いによるものであろう。 消費者の持っている住宅欠陥はいわば時間的な流れに立つもので、注文誘引から契約の締結、施工の各段階、欠陥の発見と業者の対応など、時間の経過によってもたらされる欠陥被害の状況とそれに対する精神的苦痛とが混ざり合って、とにかくこの受けた様々の苦痛や不具合を裁判所にわかってもらいたいということからであろう。 それに対し専門家側は、業者の言動や対応などの状況や言った言わぬということなどは訴訟の決め手の証拠にならない、むしろ訴訟を複雑化し長期化させるだけだとし、欠陥を今建物に存在し物証として立証が容易で確実なものに絞ることが結局消費者の要望に則すると考えているからなのである。
 調査鑑定や訴訟で消費者の要望する早くかつ多額の賠償を実現しつつ消費者の訴訟途中における気持ちの満足を図る≠アとは極めて難しい。要は信頼関係の濃淡に帰着するであろう。

 “道しるべ”(その2)における調査鑑定者の指摘と本稿における弁護士の指摘とが一致するのも、欠陥住宅紛争解決のために調査鑑定にあたる建築士はどのような欠陥の指摘立証が結局は消費者の利益になるかを鑑定した訴訟の推移や結果から理解されているからである。
   
  (18.12.23 澤田 和也)
 

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