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*****欠陥住宅対策の道しるべ*****
   
   
 

 すでに新聞やテレビでも報道され、皆様方もよくご存知のことと思いますが、近頃リフォーム業者と消費者間のトラブルが急増し、消費者センターへの相談も絶えません。
今回ご紹介する、“リフォームを中心とする欠陥住宅(消費者)問題について”と題するこの一文は、日に日に増加するトラブルとその相談に対応するため、10月18日、大阪府岸和田市の消費者センターで相談担当者や一般消費者を対象に、当会代表幹事澤田和也が行った講演のレジメです。
新築・リフォームにかかわらず建築業者との契約は、消費者も知識を持って慎重にされますよう、ご参考にしていただきたくご紹介いたします。

(その8)
 リフォームを中心とする欠陥住宅(消費者)問題について

欠陥住宅を正す会        
代表幹事 弁護士 澤田 和也

   
 

1、はじめに


 リフォームは、少ない資金で出来る家の模様替えで、手軽に出来るものと考えられているせいか需要も多く、特に最近ではリフォームにもローンが付けられるということで人々の関心を惹いています。 ところが、この簡単に新築に代わる夢を充たしてくれると思っているところに落とし穴があり、リフォームをめぐる争いが多く発生しています。

 ここではリフォームの法律的な意味合いを明らかにした上で、消費者がはまりやすい落とし穴と気をつけるべきポイントについてお話ししたいと思います。


2、リフォームの種類及び内容


 リフォームとはどういうことか。 これも難しい点がありますが、ここでは既存住宅の設備や間取り内外装を更新して、より性能レベルの高いものにする改良と、既存住宅の劣化している部材を取り替え新たに補強するなどのいわゆる補修又は修繕行為を指しています。 つづめて「改修する」といっていいでしょう。 代表的なものに旧式トイレを水洗式トイレに替えるとか、古い風呂場を新式のユニットバスに替えるとかいうものです。 リフォームには改良と修繕は一体となっています。
 さて、これらは新しい便器やバスユニットという商品を売るためにもする必要があり、商品販売型のリフォームとも言われています。

@ 戸建住宅
 戸建住宅では、従来の建物構造(骨組や基礎)を壊さない限りどの部分にどのようなリフォームをするのも法律上自由です。 しかし家の構造上出来るリフォームと出来ないものがあります。

A 集合住宅
 集合住宅では原則として専有部分のリフォームに限られ、柱・梁・ベランダ・廊下などの構造・躯体部分や外回り部分は原則として共有部分ですので、管理組合の承諾なしには構造下地にまで及ぶリフォームは出来ません。 となれば室内の間仕切りの変更や、内装材を新しく取り替えることや、新しい設備の取り付けなど、できるリフォームはきわめて限定されます。


3、リフォーム業者の資格


 リフォーム契約は一応建築の請負契約と見られるので建設業法によって国土交通大臣又は都道府県知事の建設業者の許可が必要です。 しかし軽微な建設工事だけを請負う者はこの許可が要らず、大抵のリフォームはこれにあたる場合が多いので、リフォーム業者は必ずしも建設業の許可を必要とはしません。
軽微な建設工事とは(建設業法施行令1条の2)、
  ・建設一式工事では1,500万円未満の工事
  ・延べ床面積が150u未満の木造工事
  ・建築一式工事以外では請負金額500万円未満の工事のことです。(建設業法施行令1
   条の2)
また、通常では一定規模以上の設計監理をするには一級・二級・木造の建築士の資格がいりますが小規模の場合には建築士の資格が不要です(建築士法第3条の3)。
 住宅リフォームには様々の種類・内容があり、高度な専門知識や技術が必要な場合が多いのに、いわゆる素人業者の参入が多く、これら建築技術を持たない注文取りだけの業者が多くのトラブルの原因を作っています。 消費者はまずリフォームを頼もうとしている業者に建設業法、建築士法の資格があるかどうかをまず確かめる必要があります。
 当たり前のことですが無資格者に頼めばよい結果が出ないものと見るべきでしょう。
というのもリフォームではまず施主の要望を聞き、その要望通りの改修ができるかどうかを既存建物の構造下地にまで調べた上で判断し、改修をすべきもので、無資格の人に多くを期待することは出来ないからです。 また無資格の業者は資格のある業者に一括下請けさせる場合も多く報酬や費用の点でも割高になる恐れがあります。


4、リフォームと建築基準法上の手続き


 建築基準法第6条に基づく確認申請手続きは、通常は新築のときだけと考えられているようですが、大規模な修繕、即ち主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段=建基法第2条5号)の一つ以上の部分について修繕が行われる場合にも、大規模な修繕行為として(建基法第2条14号)確認申請手続きが必要です。 主要構造部の大幅な改修行為では建物の骨組みが弱化させられる場合もあるからです。


5、戸建住宅のリフォームの注意点


@ 在来軸組住宅
 在来の柱・梁で構成されているいわゆる木造軸組み住宅は、柱と梁で骨組みの単体が造られているので、気をつけさえすれば比較的増改築が行われやすく、間取り変更・内外装材の取替えも自由にできるのが特徴的です。 従って増築などもしやすいのですが、柱や壁などは原則として取り外すことが出来ないものと考えるべきです。
 リフォームでは往々にして、古い小部屋や座敷を間仕切りを取って広くし、洋風に内装を変えたり、壁を切り取って縁側に大きなテラス窓をとったりします。 しかし、当然のことながら柱を取ればその柱に代わる柱をどこかに補強する必要があるのが原則で、また壁も地震や台風などの水平外力をささえる上で必要な構造部材ですので、原則として取り外せないものと考えるか、又は壁を取ればその壁に変わる新たな壁や柱などの構造補強をする必要があると考えるべきものです。
 建築基準法施行令第46条には耐力壁の規定があります。 そこでは間口方向・奥行き方向にバランスのよい一定数量の耐力壁を配置すべきものと明記されています。 耐震補強の必要が叫ばれているくらいですからリフォームで従来の構造を弱化させてよいはずはありません。

A ツーバイフォー住宅
 ツーバイフォー住宅は在来の木造住宅について建基法施行令が定めている構造方法ではなく、ツーバイフォーのために作られている告示で必要な構造方法を守ることとなっています〔平成13年10月15日国土交通省告示弟1540号〕。 ですからツーバイフォー住宅の増改築等はその告示に従ってする必要があり、在来の軸組み工法による増改築は出来ないのです。

B プレハブ住宅
 さらにプレハブ住宅は旧建築基準法38条や建築基準法68条の26によって各型式ごとに大臣認定された住宅で、材料も工法も国土交通大臣の特別な認定を得ているものです。
 従ってプレハブ住宅の増改築等はその型式のプレハブの認定図書に定められた構造方法によってしか出来ず、しかもこれは特定のプレハブ住宅にだけ認められた特殊な材料や特殊な工法によるべきもので、原則として自由な間取り変更は出来ないものと考えてください。

C 増改築トラブルの原因
 実はリフォームをめぐるトラブルの中で多々見られるのは、構造上必要な柱・梁を取り払ったり、それに代わる構造補強をしなかったりするなどのトラブルです。 つまり法令上出来ない増改築をして家の強度を弱めるトラブルが多いのです。
 このようなわけで無資格の業者に頼めばその業者自体が構造に関する知識がなく、施主の求めるままの増改築を行い、建物耐力を低下させるなどのトラブルが発生するのです。

D 内装・インテリや設備等の変更
 @〜Bとは違い、インテリヤや設備や断熱性・遮音性等の変更は構造の場合と違って間仕切りや壁などの構造をさわらない限り格別法令によって規制もなく、原則として施主の希望するままに出来ると考えてください。
 但し断熱性を高めるためには天井・壁・床をすっぽりと覆い包むように入れる必要があり、断熱材の単体と単体との間にスキ間を設けないことなど施工方法については注意する必要があります。


6、上記間取り変更や増築の場合の注意点


すでにご説明していますが、再度まとめてみると以下のようになります。

 ・大幅な修繕行為にあたる場合が多いので、建基法令の手続きが必要。
 ・特に柱、梁、壁などの撤去若しくは変更は構造に関するので注意が必要。
 ・原則としてこれら構造部分には手を加えない。
 ・またこのような変更をするときは必ず建築士に相談し、設計や構造検討を求める。
 ・柱、梁方式の在来軸組み住宅の場合は適法な構造変更がしやすいが、ツーバイフォ
  ーやプレハブなどの場合は認定にかかる特殊工法等、特殊材料の建物なので同種の
  構造にしかリフォームできず、注意を要する。


7、契約に際しての注意


@業者の建設業者資格を確かめる。
A建基法令上の可能なリフォームかどうかを確かめる(扱い高を増すために注文者の言いなりのリフォームがされやすいが、リフォームによっては耐震性が損なわれる場合が多い)。
B契約の内容は必ず事前に文章で、仕様・内訳の明細・単価その他特記事項を特定し、構造図面を含めた設計図書を作る。 先に述べたようにリフォーム契約に際しては、消費者が欲する間取りや内外装・設備の新装などを実施するためにはその下地や構造の状況を調査する必要があります。 しかし往々にしてリフォーム業者は無資格者である合が多く、それら調査を省略したり誤認したりして、契約に際し見積もるべき下地造や構造の追加、補強費用などを見積もらない場合が多いのです。 この金額が些細な場合は内外装等の変更見積もりに含まれていると解釈できる場合が多く、また業者もあえて請求しない場合がありますが、金額が嵩めば当然追加変更契約の問題が生じます。 契約に際し、この構造・下地の補強変更費用の見積もりを求め、実際内外装をとった場合にそれだけの見積もりでは足りない場合はどうするかなどの約定をしておくことが必要です。 なお、見積もりは具体的且つ詳細にされることが理想ですが、明示的に約定されていない点についても、ある内装替えをするにはある下地の調整や変更が必要であると見られるときには、いわゆる一式請負いとして業者側がその必要経費を負担するものと解されます。 ただしそれは通常あくまでも予想される範囲である場合にとどまるものです。
C業者の資格、技術者の有無などを調べる。
D 必ず業者の事務所に行き、上記資格の有無や従業員の有無などを確かめる。
飛び込みのセールスだけでの契約はさける。
E Bで述べたように正しいリフォームのためには既存建物の構造・下地・間柱・など表 面を見るだけでは判らない所の建物調査が必要です。 これにはかなりの手間や費用を要しますが、消費者はこれに通常気付かず又は業者も仕事をとるためにあえて調査料を請求しないのが通例です。 従って調査料は本体リフォーム料に含まれているとも解釈されますが、消費者が調査だけさせて本体リフォーム契約の締結を断った場合、業者から調査料を請求される可能性があります。
 商法512条は「商人がその営業の範囲内で他人の為にある行為をしたときは相当の報酬を請求することが出来る」としています。 その調査行為の程度と範囲にもよりますがかなり高額に及ぶ場合には、もし本体のリフォームを契約しない場合にはあらためて調査料の請求をするとの暗黙の業者側の意思表示があったもので、格別それに付き消費者が念達していない場合には暗黙裡に承諾していたものと解釈される恐れがあります。 この調査費用の問題は契約に際し明記しておくべきです。
 なお念のため、リフォームに際し大幅な修繕行為として建築確認手続きが必要な場合、その手続きに必要な建築士費用等についても当然消費者側の負担となります。 この場合も建築確認がおりてからリフォーム工事の施工が出来るので、確認を得てのち工事施工にいたるまでに工事契約が破棄された場合などに問題となります。 この手続き費用は事柄の性質上消費者側の負担となるものです。


8、リフォームとローン


 近頃はリフォームにもローンが利用される場合が多くみられます。 ローンが利用されている場合消費者がリフォームに欠陥を発見した場合、このローンの支払いを差し止めることが出来るでしょうか。 リフォームはサービスを商品とする請負契約であり、請負契約では請負対象の建物又はリフォームに瑕疵があった場合にはその修補を請求でき、修補を求めて請負残金の支払いを拒むことが出来ますから(民法634条)、当然その請負代金支払いは請負代金の支払いそのもと見るべきものであるので、瑕疵があることによる支払い拒絶の抗弁と、ローンの支払い拒絶の抗弁とは接続し瑕疵あることを理由としてローン支払いを拒むことが出来ます(平成11年改正割賦販売法)。


9、既存建物の損壊


 既存建物を損壊した場合、リフォームに際しては既存建物の一部を取り壊す場合が多いものですが、従来の構造や下地の一部を取り外していながら相当補強しなかった場合には、リフォーム部分自体は瑕疵がないものとしてもリフォームされた家全体としては欠陥(安全性の欠陥)が生じます。 このような事例はリフォームをめぐる紛争でしばしば見られるところです。 リフォーム業者は当然既存建物ないしはリフォームされた後の建物全体に欠陥を与えてよいものではないから、その欠陥を除去する相当な補修代金などの損害を消費者はリフォーム業者に請求できます。


10、クーリングオフ


 リフォーム契約は訪問販売、つまり事業者の事務所以外の場所でされることも多いものです。 この場合訪問販売法6条や割賦販売法4条の3ではリフォーム契約の場合でもクーリングオフを認めています。 クーリングオフとは、訪問販売では色々と甘言を用いて半ば詐欺的に契約を押し付けられることが多いため、消費者の一方的な通告でリフォーム契約を解約することができることを言います。
 クーリングオフの行使の仕方は書面ですることになっていて、契約を締結してから8日間を経過していないこととされています。 訪問販売では訪問業者は、代金の支払時期や商品の引渡し時期、リフォームの契約では完成の時期と共にクーリングオフなどについて明示した書面を消費者に渡さなければならないことになっています。 そこでこのような書面を受け取った日を含めて8日間はクーリングオフが出来るのです。
 このような契約と解除に関する重要事項を記載した書面を交付しなかったときは、クーリングオフの期間は進行しないものとされています。 不備な書面を交付した場合もクーリングオフ期間は経過しないとされています。
 リフォーム工事の請負契約で、訪問販売で交付すべき書面の絶対的記載事項である契約の解除に関する記載に脱漏があった場合には、訪問販売法が必要としている書面が交付されていないものとみて工事完成後(契約締結から8ヶ月間)の後に顧客がクーリングオフを行使したことが権利の乱用に当たらないとされた判例もあります。


11、 その他


 住宅リフォームは、その請負金額の点から新築建物請負に比べ軽い気持ちで契約され、しかもリフォーム設計も施工も同一の業者に頼むいわゆる設計施工請負契約でされている場合が多いものです。 しかしリフォームに際し既存建物の構造・下地などリフォーム内容の完全実施が出来る前提条件があるかなどの調査が重要で、それに基づき相当な既存建物の補強を含むリフォーム内容の設計がされるべきものです。
 特にリフォーム契約では、時として事業所らしいものも持たない無資格業者が請負う場合も多いので、この調査、設計がなおざりにされがちです。 場合によっては建築確認申請手続きが必要な場合もあります。 そしてまた設計と施工を同一の業者にさせれば、その業者は利益追求のあまり正しい設計や施工を手抜きする場合が多いのは新築請負契約の場合と同様です。 従って後日既存建物にも傷つかないよう安全で快適なリフォームをするためには、やはり有資格者建築士による設計(当然その前提には既存建物の建築調査を含む)を依頼し、その建築士とは別途の建設業者にリフォーム施工させるのが望ましいといえます。
 かえってリフォームの場合のほうが既存建物を損じず利用しつつ行うべきものなので設計と施工を分離してともに有資格者に依頼すべきものと考えられます。

   
  (19・9・16)
 

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