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*****欠陥住宅対策の道しるべ*****
   
   
 

(その9)消費者が知りたがり悩んでいる欠陥住宅裁判の実態は?

――平成19年 年末シンポのご報告――

欠陥住宅を正す会        
代表幹事 弁護士 澤田 和也

   
 

 去る平成19年12月8日(土)大阪市中ノ島中央公会堂で、また同月15日(土)東京都芝友愛会館で表題のテーマーで会内シンポを行いました。木村孝・中井洋恵両弁護士を司会者として消費者会員や専門家会員がこもごも体験と感想を語り合いました。速記録をご提供したかったのですがその準備が間に合いませんでしたので、以下シンポで話された内容の主なものを一問一答の形で要約してご紹介いたします。



=====シンポQ&A要約=====

【問い1】 欠陥住宅裁判の特色は?
<答え>
 なんといっても建築知識(知見)を必要とする技術訴訟であることです。
訴訟への準備、着手の時から訴訟の終わりまで建築士さんの助けが要ります。ですから訴訟を始めるにあたって弁護士が受任契約をする際にも協力者である建築士にも入ってもらい『調査鑑定依頼契約』の内容や報酬の点についても合意しておく必要があります。これを忘れると訴訟途中で業者に反論できず、良い結果が得られない事例が往々にして見られます。


【問い2】 建築士には何を依頼するのですか?
<答え>
 依頼者は雨漏り・床の傾きなどの欠陥現象に悩んでおり、それだけを欠陥と思いがちですが、それだけでは単なる欠陥現象の補修の問題だけとなってしまいますので、それを引き起こす欠陥原因を確かめる必要があります。例えば雨漏りの場合では防水紙とサッシ下場の水切りの施工が逆になっているとか、床が傾くのは地盤補強が足りなかったり相当な基礎構造が造られていないからだなどの欠陥原因を建築士に調べてもらい、その欠陥原因をただす相当費用を見積もってもらう必要があります。床が傾いているだけでは正しい原因補修が求められないのです。そして何よりも大切なのは当初にとりあえず建築士さんに現場を見てもらって目視や簡単な器具で欠陥と欠陥補修費用の概略をつかんでもらう(初回調査をする)ことです。
 ある程度の金額の賠償金が取れる欠陥でない限り、建築士の調査鑑定費用や弁護士費用は割高となるか無駄になるおそれもあるからです。
 このように、裁判をするかしないかを決めるためにもまず建築士さんに初回調査を依頼する必要があります。


【問い3】 裁判には費用がかかるというので心配です。
<答え>
 【問い2】でお答えしましたように、とりあえずは建築士さんに欠陥の概略と相当補修費用の概略を調べてもらい、この初回調査を元に相手方より獲得できる賠償額をつかんだ上で訴訟をするかどうか決めるべきです。  獲得見込み額が1,000万円を超えない場合は費用倒れに終わる可能性があります。事件の難易や相手方のレベルにもよりますが弁護士費用つまり着手金と報酬を合わせて見込み額の2割程度、建築士さんの報酬も1割から1.5割り程度が見込まれます。ですから獲得見込み額が1,000万円を下回る場合には建築士さんに調査鑑定は依頼するとして、後はご自分で出来る調停手続きをされるのが得策かと思います。


【問い4】
 裁判をしているとそこまで業者側に言わせなくてもよいのにと思うくらい裁判官は業者の言い分に耳を傾けますので不安です。

<答え>
 欠陥住宅被害者はどんな些細な欠陥でも相手の手抜きによるものだと思い、民事の裁判でも刑事の裁判と同様、自分が被害者で業者は加害者と思っています。ところが民事の裁判では被害者も単なる原告で訴える者であり、加害者と思われている業者も訴えられている者つまり単なる被告として捉えられているものです。そして裁判の本質的なあり方は不当な訴えによって訴えられた者に損害が出ないように充分に被告の言い分を聞くというシステムをとっていることです。そこでお話のように、まるで見え透いたバカバカしい言い訳や嘘話でも裁判官は耳を傾けるのです。但し耳を傾けることは何も業者の言い分を受け入れるということではありません。  裁判官の一般的な傾向として負かす相手の言い分ほど充分に聞いてやり、「ここまで聞いてやったがやっぱりお前の言い分は受け入れられなかった」というポーズをとりたがるものです。ですからお話のような事情でもご心配には及ばず、かえって良い結果を期待してください。また色々なでたらめを相手に言わせることもかえってあなたの言い分の正当性を判らせることにもなるので、あなたに有利な結果ともなる場合が多いのです。


【問い5】
 裁判官に事情を聞かれて色々相手の不都合なことを詳しく言うのですが、裁判官はただ静かに聴いてくれるだけで“ふむふむ”とも頷いてくれず不安が高じるのです。

<答え>
 裁判官は自分の判断は判決の中で示すのが原則です。またそれが訴訟法の建前です。ですからいちいち諾否の返答や表情をしなくても、あなたが相当な証拠で正しい主張をしているのなら心配はいらないのです。


【問い6】
 頼んでいる弁護士に相手方の書面の意味とかその他色々な判らないことを説明してもらいたいのですが、多忙とみえて中々ゆっくりと説明の時間をとってくれません。

<答え>
 判らないことを充分に聞くことは弁護士との信頼関係の基本です。私の場合は出来るだけご本人に公判手続きにもご出頭願い、その期日が終わってすぐにその日の判らなかった事のご質問を受け、答えるようにしています。単なる期日の報告書だけでは素人の方には訴訟手続きの内容を理解できるはずはなく、その日の出来事を中心にご説明するのが割合ご理解いただきやすいからです。何れにせよ長い訴訟期間ですので、弁護士や建築士との情報交換は密にして信頼関係の維持に努めてください。但し弁護士や建築士も時間に追われる仕事ですので、予め伝えたい事項を書面で送っておき能率的な情報交換の機会を持つように心がけるのが得策です。


【問い7】
 建築専門部で裁判をしてもらっているのですが、双方の主張の整理が終わってすぐに調停手続きにまわされました。その第一回期日の冒頭、私の欠陥主張に対して「そんなものは欠陥でない」と建築士の調停委員が怒鳴りつけますので気分を悪くしてしまいました。そこで弁護士に調停手続きの打ち切りを求めてもらっています。調停委員がそんなことを言っていいのでしょうか。

<答え>
 本来調停委員は双方の言い分を聞いて、『ドロボーにも三分の理』の諺の通り、いくらかでも譲りあう余地があれば譲り合いをさせ、争いを円満に解決させるようにするのが仕事(つとめ)です。ですからどのような方だったかは知りませんが冒頭からあなたの言葉を否定するような発言をすることは不相当だと思います。但し、今あなたが受けている調停手続きは移付調停といわれるもので、本来の裁判手続きから建築専門家の調停委員のいる調停手続きに移して専門家の持っている技術的知見を活用し、裁判官の欠陥理解に役立たせようとする目的も持っています。ですから調停委員があなたの欠陥主張と違う見解を述べることは必ずしも不当とは見られないのですが、要はそれを言う時期と言い方の問題でしょう。念のため、建築調停ではえてして話を早く着けるために、調停委員から賠償請求者の被害者に請求額を下げさせようとして“欠陥であるとかないとか”の問題が持ち出される場合があるようですが、大切なことは欠陥は譲り合うものではなく客観的な事実ですので、調停委員の専門的知見を活用して正しい欠陥原因と相当補修方法や工費を確定の上、出てきた賠償金額そのものを当事者の事情に応じて譲り合わせることです。賠償金額を譲り合わせるために欠陥を譲り合わせるというのであれば間違った発想です。


【問い8】
 いつも弁護士に「もっと欠陥に苦しんでいることや契約までのいきさつから施工の途中や引渡しを受けてからの欠陥補修に対する対応に見せた業者の不誠実さや背信行為を述べてほしい、そうすればきっと裁判所も私の欠陥の苦しみを理解してくれて、良い判決をもらえる」と頼んでいるのに、弁護士はそのような相手方の悪行状についてよりは、「今の欠陥が何を手抜きをされたことで起こっているのか、どうしてそれが欠陥なのか、その具体的補修方法はこのようなものだ」とか、欠陥の技術的な問題ばかりを主張して中々私の言い分を聞いてくれず、いつも不満足で悩んでいます。どのようなものでしょうか。

<答え>
 仰っておられるご趣旨はよく理解できます。素人であるあなたは欠陥の技術的な意味とかその原因とかよりは、むしろ欠陥が発生したのは相手方が信頼を呼びかけたのでこれに応じたのにそれを裏切ったり騙したりして欠陥をつかましたのだと、つかました上にそのために自分が欠陥住宅で困っているのに業者はまた補修でもごまかし補修をしたりしてより苦しみを増さしている、この業者の背信行為こそ事柄の本質である、これを訴えたい。というお気持ちはよく理解できます。しかし欠陥住宅訴訟は相手方の不誠実な背信行為に対して慰謝料の請求をするというだけの訴訟ではなく、むしろ今あなたの家にどういう欠陥現象があるのか、それはどのような基準で欠陥と判断するのか、その欠陥現象はどのような欠陥原因で発生しているのか、その原因を除去する具体的補修方法やその工費などについて主張立証し、その相当補修代金を賠償請求する損害賠償システムなのです。
 従って弁護士は、ともすればあなたが欠陥を契約の誘引の段階から時系列的に相手方の言動を捉え不信の事実として主張したいとされているのに対し、それだけではあなたの精神的損害として慰謝料だけの請求終わってしまいますので本命である相当補修代金を獲得するため、今現にあなたの家の中に存在する欠陥と欠陥原因を具体的に明らかにし、その相当補修方法を具体的に主張立証した上で、相当額の賠償金をあなたのために獲得しようとしているのです。もちろん現在の欠陥原因事実の存在の主張と単なるその補修費用の請求だけでは訴訟のインパクトが弱まります。そこであなたのおっしゃる欠陥発生に至るまでの事情と相手方の不誠実な対応も程よく混ぜ合わせて裁判所の理解を求める必要もあるので、欠陥についての技術的主張と相手方の不誠実な対応についての諸事情をほどよい割合でマッチさせる必要があるのです。


【問い9】
 消費者も一通り裁判についての簡単な本を読んで審理のすすみ具合を知るとか、自分の欠陥についての鑑定書や裁判の書類を見て理解するようにしなければならないと思うのですが・・・・・。

<答え>
 おっしゃる通りです。ご自分の事件関係の書類だけでも目を通されて、わからない点を専門家に聞かれれば裁判の仕組みが分るとともに、わかれば不安が薄らぎ勝訴への確信が深まることだと思います。


【問い10】 欠陥住宅訴訟は欠陥があれば必ず勝つと言われるのですが?
<答え>
 その意味は欠陥住宅訴訟で証拠立てのいる欠陥は、過去のものでも未来のものでもなく現にあなたの家に欠陥原因事実があるかないかの問題です。しかも他の訴訟のように“言った”“言わない”という事情は問題とならず、どのような事情があっても現に欠陥があれば勝訴はできるわけです。ただあなたの家に眠っている欠陥原因事実を建築士に探してもらいそれをさらに裁判で判事に分かるように意味づけや評価を示すことが必要なだけです。ちょうど金鉱のようなもので、あなたの家に眠っている金脈を掘り当て鉱石から不純物を取り除いて純金に精錬する作業に似ています。このことを理解され勝訴への確信をつかんでください。
 “言った”“言わない”を持ち出すのは業者側で、欠陥問題をカモフラージュしようとして訴訟を長引かせているだけですので、その『ワナ』にはまらないようにしてください。


   
  (平成19・12・22 澤田 和也)
 

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