2月10日更新の『欠陥住宅対策の道しるべ･･･その１２』につづき
今回も“Ｑ＆Ａ”形式で誰の負担で欠陥調査を行うのかということをご説明いたします。

(平22･3･3)

欠陥現象と欠陥原因

<<Ｑｕｅｓｔｉｏｎ>>

　鉄骨造り３階建ての住宅です。新築当初から雨漏りが絶えません。業者にそのことを伝えてもなかなか補修に応じてくれないのです。やっとのことで「窓回りの水切り部分のコーキングを忘れていたのでし直した」というように補修はしてくれるのですがそれでも雨漏りが止まらず困っています。
業者は雨漏りの原因はなかなか突き止めることが出来ないのだというのですが････。

<<Ａｎｓｗｅｒ>>

　現代の科学的思考方法によれば、もしある現象、たとえば雨漏りの原因を科学的に特定しようと思えば特定できるはずなのです。「原因のない結果はない」というのが近代の科学の出発点です。
　通常一つの欠陥現象に対する欠陥原因は一つであると考えがちで、雨漏りの補修の場合などおよそ業者は余り費用のかからない窓回りのコーキングの欠落などに答えを結びつけ、熱心に補修をしているような印象を消費者に与えようとするのですが、それが終わって半年も経たないうちにまた雨漏りが続くというのであれば、結局はその原因究明が不適切であったと考えるほかないのです。雨漏りの原因は建物のすべての工程において発生すると答えても言い過ぎではないでしょう。確かに比喩的に言えば「雨漏りは手抜きされた事を嘆く建物の涙」なのです。
　代表的な原因は業者も認める防水施工の不完全にあるのが圧倒的に多いとはいえるでしょうが、たとえば軽量鉄骨造りの建物のようにその柱の素材の厚さ（断面）が小さい場合には建物は非常に揺れやすいのです。ですから軽量鉄骨の構造に取り付けられた防水のための下地、つまり防水層も限界を超えた振動や回数で防水層も切れがちになるのです。
　ですから本来的には雨漏りと無関係にみえる構造の欠陥も、揺れやすいという点で防水層を破断する一因とも見られ、雨漏りとは無関係ではなくなるわけです。
　このように一つの欠陥現象（例＝雨漏り）についてもその欠陥原因としては防水工事の不完全から始まって防水層を支える躯体欠陥、つまり建物の過度の揺れやすさに至るまで原因と見られる場合が数多くあって、欠陥現象（雨漏り）に対する欠陥原因も一つだけに断定することは出来ず、実際に雨漏りを止めようとすれば、一つの方法で止まらなければ次の原因をというようにその結果が現象にあてはまる具体的な欠陥原因は何かを探索して、その欠陥原因を除去して雨漏りという欠陥現象の発生を防ぐべきなのですが、業者が費用の嵩むことを恐れて費用のかからない、または少なくてすむ補修を提案し無駄な補修を繰り返して更に被害を増大させる場合も見られるのです。
　このような事態になるのも欠陥原因が三者的に究明されず正しい補修方法がとられない場合が多いからです。
“急がば回れ”ということわざではありませんが、いくら補修をしても止まらない欠陥現象がある場合や、仮に補修が繰り返されていなくても業者の言動に不審のかどが見られる場合には業者とは無関係の建築士さんに三者的な欠陥原因の調査を求められるのが得策です。
　私が何十年に亘って欠陥住宅問題の実務的解説にあたってきた経験から言えば、少しでもおかしいと思う点があれば、あるいは全然そのようなことがない場合でも、新築依頼をしている業者とは無関係な第三者の建築士に欠陥の有無とその原因と補修方法についての客観的な原因調査を依頼されることです。
　その時その費用は当然依頼されるあなたが負担して、あなたが依頼者になることで夢々業者に調査費用を負担させようとは思わないでください。あなたがあなた自身の費用で依頼するからこそその欠陥調査が業者の思惑に乗らない公正なあなたにとってメリットのある調査鑑定となるわけです。

(平22･2･25)