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平成19年度「欠陥住宅を正す会」消費者シンポ講演レジメ
欠陥共同住宅、所謂「欠陥マンション」の調査、補修について、建築士としての立場からの私案。

欠陥住宅を正す会                       
専門委員 村岡 信爾(一級建築士)
同  森下 秀夫(一級建築士)

 近年、東京、大阪などの大都市に限らず、地方都市でも盛んにマンションが建設され、従来の戸建て住宅の需要がマンションに代わりつつあります。
マンションの構造は、鉄筋コンクリート造(以下「RC造」と言う)が大半を占めており、マンション即「RC造」と言っても過言ではありません。RC造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせて、それらの特性を発揮させた複合構造体であり、木造や鉄骨造(以下S造と言う)と違い構造材の組み方が目視できないので、目視で欠陥を簡単に発見でき難いのがネックになります。発見するには、構造体をはつるか、磁気レーダー、X線(放射線)等を使用することになり、その外にコンクリートを切り取ってテストピースを作ってその強度を調査し、場合によっては構造計算を要することになりますが、手間と多額な費用がかかるのが難点となります。

以下マンションで私たちが最近相談を受けた不具合現象と、クレームの顕著なものを列挙し意見を述べます。

@ 騒音  
A コンクリートの亀裂
B 雨漏れ、水漏れ 
C 結露
D その他(建具の建付、シックハウス、防犯等)

 特に@〜Cはマンションの弱点でもあるので、重点調査項目にするべきです。
この重点調査項目はその原因となった理由を知る必要があるので、その原因と併せて調査の方法を述べます。

@ 騒音
 騒音は非常にデリケートな問題です。騒音は、同じ音量でも聞く人の個人の差が大きく、騒音と感じる人と感じない人がいます。騒音には、自動車、飛行機、工事等による外部からの騒音と同じマンションの住人が出す生活騒音(話し声、テレビ、ラジオ、ピアノ、等の楽器、上階の足音、風呂、水洗トイレ等)があります。騒音の環境基準がありますが、それを単純に当てはめることは出来ませんが、マンションでは、騒音の規準として
標準(昼)    50dB
許容(朝、夕)  45dB
最低(夜間)   40dB
(デシベル:音の強さの度合いを表す単位)
があります。調査方法と対策として

a.上・下階の騒音対策

イ.スラブの厚さが薄い(厚15p以下)場合は
二重床、二重天井にする。
ロ.床の使用・仕上げの種類
(二重床、畳、カーペット等の吸音材にする)。

 ハ.天井の仕様・仕上げの種類 (二重天井・
等の対策が考えられる。天井板貼り、クロス等の吸音材にする)。
b.外部、隣家からの騒音対策
イ.壁の厚さが薄い(15p以下)場合は、吸音材を貼る。
ロ.防音機能に欠ける窓枠、出入口ドアを防音構造に
する(防音サッシ、ペアガラス、 防音ドア等)
c.その他の騒音
イ.水洗トイレ、風呂の水音等を配慮した使用をする。
ロ.ピアノ、テレビ等の音量を配慮したものにする。

等の対策が考えられる。

調査方法  
イ.騒音計で騒音を測る。
ロ.コンクリートのスラブ厚、壁厚、仕上げを
チェックする。

A コンクリートの亀裂(以下「クラック」と言う)。

 壁、床(以下「スラブ」と言う)、RC造の手摺りに貫通したクラックがあり、表面に 鉄錆びが浮き出ている所もあり心配だとか、柱、梁にもクラックがあるので重大な欠陥ではないかと相談を受けるケースが多い。コンクリートは、セメント、砂、砂利に水を混ぜて練り、セメントの水硬性を利用して作ります。固まるだけに必要なだけの水の量を用いたコンクリートでは、パサパサで型枠内に流し込めません。そのため強度に支障を与えない程度の余分な水をくわえます。
 この水はコンクリートが固まってもコンクリートの中に残り、5年くらいの間に徐々に乾燥し大気の中に抜けていきます。水の残った部分はコンクリート中の空隙なので水が抜けるに従って小さくなり、コンクリート全体の縮みになります。コンクリートの乾燥収縮による収縮クラックが出来るのはこのためです。RC造では、このクラックが発生するのが難点ですが、乾燥収縮クラックは構造的には特に問題はないが、鉄筋の錆びないような処置をしなければなりません。
 構造クラックの原因は、構造計算の手抜き、改竄による鉄筋量の不足(姉歯問題のケース)、地盤調査の手抜きにより耐力不足を見逃したための不同沈下、コンクリートのかぶり厚さ不足による付着力不足、コンクリートの中性化等で発生すると考えられるが、構造クラックにはケースに応じた最適な補強を講じるか、最悪な場合は立て替えねばならないケースも出てくる事になります。

調査方法  

イ.クラックスケールで幅計測
ロ.鉄筋探査計で配筋状態を調べる。
ハ.X線透過撮影法
ニ.コンクリートの中性化(フェノールフタレイン試液)
ホ.クラックの形状は別紙(図−1)による。
ヘ.クラックの補修の要否。
補修 防止的 耐久性
0.2o以上 0.4o以上
0.005o以下 0.1o以下
条件による要 0.05o〜
  0.2o以上
0.1o〜
 0.4o以上

   

B 雨漏れ、水漏れ

RC造のマンションの漏水は、屋根(屋上)と外壁からの水の浸透(まれに吸水管の漏水)によって生じていて、漏水個所を突き止めるのは非常に難しい。建物の雨漏りの≒65%を占めるといはれている外壁からの漏水は、躯体コンクリートが密実であれば、コンクリートには防水性があるため、多少防水に問題があっても防げると言われています。要は丁寧な施工を行うことに尽きます。

a.外壁からの漏水

(コンクリートに関する部分)
イ.コンクリートの水平、垂直打ち継ぎ部
ロ.ジャンカ(俗称豆板、あばた)、
コールドジョイント等の施工不良
ハ.壁厚の不足(15p以下の場合発生することが多い)

( 窓枠「サッシ」部分「外部開口部分」)
イ.サッシ廻りのモルタル詰めの不良

(モルタルに隙間がある)。
ロ.サッシ廻りのコーキングの施工不良
(層厚不足、亀裂がある)。
ハ.開口部にクラックがある(補強筋の施工不良)。


b.防水に関する部分

イ.防水の収まり不良(雨仕舞不良)。
ロ.防水の種類、材質の選択間違い(保証書の提出)。
ハ.防水工事完了時の漏水テストを行っていない
(防水性能の確認)。
ニ.屋根、バルコニーの排水勾配不良、排水ドレーンの
収まり不良、配水管継ぎ手不良による漏水。

c.設備関係

イ.給排水からの漏水(接続不良、勾配不良等)。
ロ.設備機器の接続不良による漏水
(洗面器、流し、ユニットバス等)。


調査方法
イ.漏水テスト(放水、水張り)。
ロ.炭酸ガスによる。

C 結露

結露とは、空気中(室内外)に含まれている水蒸気が、冷たいもの(ガラス、アルミサッシなど)に触れて水滴となり、そこに付着する現象を言います。
即ち 、露点温度より低い温度の物体に触れると水滴になり結露するのです。外気温が低い程建物の室内側の表面温度が低くなり、室内温度が高い程、室内空気が含むことの出来る水蒸気が多くなるため、低温の壁面で結露が発生しやすくなります。

a.結露を防止する基本的な考え方は
  イ.壁や床、天井、小屋裏部材の表面温度を露点温度以下にしない=隙間なく断熱材を敷き詰め、熱橋を作らない。
  ロ.温度を下げる=水蒸気を出さない、入れない、入れたら出す(換気する)一時的に吸収する。

ハ.室内の温度が高い時は吸湿し、低い時は放湿する
調材料の代表的な材料である木材、畳、土壁、和紙を多用する。
ニ.空調機を使って除湿する。
等があります。

調査方法  

イ.室内を湿度計で計測する。
ロ.断熱材の有無と種類およびその厚さを測定する。
ハ.断熱材の張り方を調べる(隙間がないように
貼ってあるか調べる)。

 以上から、欠陥マンションを作らないための特別な方法は存在せず、適法で、決められた仕様書どおりの入念な施工を行うことに尽きるのが判る。

参考文献:
「建築トラブルにみる常識非常識」
荒川治徳著
「建物の結露・トラブル事例と解決策」
「建物の結露」
編集委員会編著
(19・5・1)