つづいて昼食休憩の後、恒例の消費者シンポジュウムが行われました。
そのテーマは 『消費者のための新しい住宅法制と
多発する欠陥マンション被害の救済に向けて』 というものです。
その具体的プログラムは、
1、講演 消費者に役立つ新しい住宅法制のご解説 代表幹事 澤田和也
2、講演 マンションの欠陥調査の方法について 専門委員 村岡信爾/同 森下秀夫
3、共同討議
『購入したマンションの自室に欠陥があった場合、消費者は
どのような手順で誰に対して補修その他の救済を求めることが出来るか。』
共同討議者 正す会体験者会員・同弁護士及び建築士
司会 中井洋恵 (弁護士)
同 木村 孝 (弁護士)
で、その要旨は後記同名の各レジメ記載のとおりです。
因に今回のシンポの共同討議では、東京会員末永英壽氏居住のマンションの欠陥について、同氏から、その欠陥状況や問題の発生・発見から、当初の個人としての業者に対する交渉について述べていただき、司会者木村孝(弁護士)が、この末永氏の欠陥問題解決活動の経過と内容について、末永会員との一問一答の形で来会者に説明しました。
そして最後に訴訟上の問題点や、マンションの管理組合のあり方乃至はマンションを区分所有することの資産価値などについてもふれられ、特に訴訟中の体験として、裁判官が本来法的判断者として自ら判断すべき欠陥や相当補修方法などについても、くどくどと鑑定を求めたがること、その費用が1,000万円単位のもので到底個人負担には耐え難いこと等、について来会者に説明されました。
この一問一答と平行して、その解説をも兼ね司会者中井洋恵(弁護士)より『マンションの欠陥についての損害賠償の法律関係』について説明され、来会者にマンション欠陥の処理の難しさと、入居者の多数の理解が得られないときのメンテの難しさ、しいてはマンション価値の維持の難しさからくるマンションの資産価値についての疑問など、通常のマンション解説では得ることが出来ない、マンションの問題点を浮き彫りにさせました。 なお、中井洋恵弁護士が解説した法律関係については別稿『マンションの欠陥についての損害賠償の法律関係』に記載のとおりです。
末永氏のお話を要約すると、
『同氏は対談で、「マンションの欠陥はほとんど共有部分に関係すること、言い換えるとマンションの専有部分とは部屋の中と台所廻り・洗面所などにすぎず、室内の壁紙を除く大部分は構造躯体として共有部分となり、ほとんどの単独部分の欠陥の場合でも共有部分の関係者の同意がないと補修交渉すら満足に行えない』と述べられ、『専有部分にも関するので管理組合の助力なしには業者との交渉や訴訟手続きも行えない』と述べられました。幸いなことに、末永氏の場合は管理組合の協力を得て、両者の欠陥が重なり合う部分では有効な被害回復活動がされましたが、他のマンションではスムーズに事が運ばれていない場合が多いとのことです。また『マンション紛争では個別的な紛争解決努力も必要であるし、組合の活躍する余地も大きい』とも述べられました。
そこで結論として、結構尽くめの都心のマンションも、後々のメンテ如何では財産価値は低落する一方で、マンションを販売するときには業者は資産価値云々などと宣伝しているが、購入時の価格が年ごとに低落していき、マンションに資産価値があるとか、投資になるとかとの大方の宣伝は間違っていること。むしろ購入時に購入価格の資産価値があっても年月が経つにしたがってその価値は低落していくものと考えるべきもので、華やかなマンション生活への憧れに冷や水が指される批判が討議者より相次ぎました。
要するに末永氏の場合も、マンション居住者に熱心な人がいて、管理組合も積極的にリードしたからこそ、有効な訴訟活動が可能で相手方との和解も成立させることが出来たのです。マンションでは、管理組合が熱心でない限り欠陥の補修請求や賠償請求はおろか、日々のマンション管理行為も十分にされることはなく、マンション価値の低落はとどまることがない状態になる、ということでした。
したがって居住者も心して組合活動に力を注ぎ、共有財産の価値は活動の共有で守るとの認識が求められるのです。
代表幹事の講演『消費者に役立つ新しい住宅法制のご解説』の具体的内容も同名の別稿のとおりです。また村岡信爾・森下秀夫両専門委員の講演“マンションの欠陥調査の方法について”も、別稿『欠陥共同住宅、所謂「欠陥マンション」の調査、補修について、建築士としての立場からの私案。』記載のとおりです。 |