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第29回定時会員総会 開かれる

 去る平成19年5月19日(土)午前11時より12時まで、東京都港区芝の友愛会館会議室にて、当会第29回定時会員総会が開かれました。 会則に基づき代表幹事が議長団として、三澤正志東京事務局次長及び中井洋恵大阪事務局専門委員を指名しました。 議長団はまず会則26条に基づく総会成立の確認を行ったのち、去る5月12日の大阪での拡大幹事会を受けて以下の総会議事を執り行いました。また各事務局次長より建築・法律・庶務事項の報告を以下のように行いました。
議事事項
@ 会則26条に基づく総会成立の確認
A 平成18年度会務報告
B 平成18年度会計報告
C 新年度役員の選出
D 新年度会務方針の決定
E その他総会付議事項

代表幹事及び庶務、建築、法律
各事務局次長
候補者名簿に基づき選出
提案者 新代表幹事

まず代表幹事澤田和也は平成18年度の会務執行状況につき一般報告を行いました。
要旨は以下の通りです。

1、

 平成18年度の月2回の大阪例会及び月1回の東京例会を滞りなく執行した。確実な例会の執行が当会の信用を高めるのに役立っている。又これを昭和54年の『正す会』発足時より30年近くに亘って継続的に行っていることが高い評価を受けている。

2、  グーグルによる当会のホームページへのアクセス件数調査によっても当会は高い順位を保っている。
3、

 昨年度の一般的状況としては、大阪における建築専門部の移付調停が、当初の調停成立は二の次にしての、建築家委員による裁判所の技術的知見の補充の域を超えて、裁判所による調停委員への紛争解決代行委任の色彩を帯びて、本来保護され知識的援助を受けるべき消費者側に対し、専門家調停委員らによる欠陥否定の口封じ的色彩を帯びてきていたことはまことに残念なことであった。これというのも建築専門部では裁判官が多数の建築事件を抱え、その一つ一つが、審理に通常事件の何倍もの手間を要するため、建築専門部裁判官が疲労していたことによるものだと思う。そこで、訴訟法上も専門委員の制度が定められ、裁判所の技術的知見の補充が確保されることが見込まれるに至ったため、当会ではこの問題の多いいわゆる移付調停(訴訟を起こされている事件を裁判所が調停部に移付すること)を避けるべく、裁判所の移付調停勧誘を断ることにした。この結果、調停委員による無理な調停の押し付け、その前提としての当方の欠陥主張に対する欠陥でないとの強力な説得的押し付け活動を避けることが出来、欠陥住宅事件を本来の軌道に乗せることが出来たと述べるとともに、当会会務処理のあり方として、初回調査を出発点とする建築士・弁護士・消費者三者一体となっての解決方針がようやく定着し、会員の勝訴に役立つことが出来た。
などの会務執行報告がされました。
本年度も、初回調査を出発点とする建築士・弁護士の協力による被害者支援活動に努めたいとの談話がされました。

4、  つづいて法律担当事務局次長中井洋恵より昨年の訴訟事件の処理報告がされました。受任した訴訟事件は総て勝訴または和解に終わり、その審理期間は平均2年とのことでした。中には業者倒産で回収不能になったものもありますが、概ね判決金や和解金が回収され、また案件では地盤補強と基礎構造の欠陥が目立ったとのことです。
5、  建築担当事務局次長石川育子より調査鑑定の報告が行われ、初回調査をしたほぼ半数以上について鑑定を受任し、また訴訟上の意見書を受任しているとの報告がされました。
6、

 さらに山本慶子庶務担当事務局次長より18年度の会計報告がされました。主な支出は交通費(旅費)、ホームページ作成費用などで他は会員の自弁により会務処理をしているので大阪、東京とも繰越金が計上できる健全会計である旨報告されました。これも会務処理についてはボランテイアで行うことを方針としているからです。

7、  東京事務局の状況については、上記会計・法律・建築各報告の中に盛り込まれていましたが、最後に東京事務局庶務担当次長三澤正志氏より東京の会務処理状況が報告されました。
8、  次いで本年度新役員選出が、拡大幹事会で採択された平成19年度役員候補者名簿に基づき図られ、全員一致で選任されました。

主な役員は次の通りです。

代表幹事

澤田 和也【大阪・東京事務局長兼任】(弁護士・体験者)

副代表幹事 木村孝(弁護士)
顧 問 鳥巣 二郎(一級建築士)
顧 問 河合 敏男(弁護士)
大阪事務局次長 庶務 山本 慶子(事務職員)
  同  建築

石川 育子(一級建築士)

  同 法律 中井 洋恵(弁護士)
東京事務局次長 庶務 三澤 正志(体験者・経営コンサルタント)
  同 体験指導

池田 定男(体験者・会社役員)

  同 建築 村岡 信爾(一級建築士)
  同 法律 小林誠(弁護士)
9、

 次に、本年度代表幹事に就任した澤田和也代表幹事より新年度の会務方針の提案がなされ、満場一致で承認されました。
その要旨は、前年度と同じく毎月の各例会を着実に執行し、個別相談の徹底と建築士・弁護士と体験者との共同討議によって事件処理能力を高めること。そして当会の調査鑑定は、あくまでも被害回復のために行うものであるので、被害回復の可能性が見込まれないときには費用のかかる鑑定は行わないこと、このように、被害回復の可能性とその金額を初回調査の結果、弁護士・建築士が共同して検討し、訴訟・調停など相当な手続きを消費者のため選択することが消費者サイドであることを認識すること、また前年同様、個別紛争の解決に徹底し、個々の建築士・弁護士の案件処理能力を向上させること、そして、消費者および専門家が例会で接触し懇談を重ねることによって、両者の協力関係が促進されるようにしたい、 との方針案が述べられました。

10、 以上で定刻正午に本年度総会は終了しました。
11、

 つづいて昼食休憩の後、恒例の消費者シンポジュウムが行われました。
そのテーマは

『消費者のための新しい住宅法制と
     多発する欠陥マンション被害の救済に向けて』
   というものです。

 その具体的プログラムは、

1、講演 消費者に役立つ新しい住宅法制のご解説      代表幹事 澤田和也
2、講演 マンションの欠陥調査の方法について 専門委員 村岡信爾/同 森下秀夫
3、共同討議
『購入したマンションの自室に欠陥があった場合、消費者は
どのような手順で誰に対して補修その他の救済を求めることが出来るか。』
共同討議者  正す会体験者会員・同弁護士及び建築士
司会 中井洋恵 (弁護士)
同  木村 孝 (弁護士)
で、その要旨は後記同名の各レジメ記載のとおりです。
因に今回のシンポの共同討議では、東京会員末永英壽氏居住のマンションの欠陥について、同氏から、その欠陥状況や問題の発生・発見から、当初の個人としての業者に対する交渉について述べていただき、司会者木村孝(弁護士)が、この末永氏の欠陥問題解決活動の経過と内容について、末永会員との一問一答の形で来会者に説明しました。
そして最後に訴訟上の問題点や、マンションの管理組合のあり方乃至はマンションを区分所有することの資産価値などについてもふれられ、特に訴訟中の体験として、裁判官が本来法的判断者として自ら判断すべき欠陥や相当補修方法などについても、くどくどと鑑定を求めたがること、その費用が1,000万円単位のもので到底個人負担には耐え難いこと等、について来会者に説明されました。
この一問一答と平行して、その解説をも兼ね司会者中井洋恵(弁護士)より『マンションの欠陥についての損害賠償の法律関係』について説明され、来会者にマンション欠陥の処理の難しさと、入居者の多数の理解が得られないときのメンテの難しさ、しいてはマンション価値の維持の難しさからくるマンションの資産価値についての疑問など、通常のマンション解説では得ることが出来ない、マンションの問題点を浮き彫りにさせました。 なお、中井洋恵弁護士が解説した法律関係については別稿『マンションの欠陥についての損害賠償の法律関係』に記載のとおりです。

末永氏のお話を要約すると、
『同氏は対談で、「マンションの欠陥はほとんど共有部分に関係すること、言い換えるとマンションの専有部分とは部屋の中と台所廻り・洗面所などにすぎず、室内の壁紙を除く大部分は構造躯体として共有部分となり、ほとんどの単独部分の欠陥の場合でも共有部分の関係者の同意がないと補修交渉すら満足に行えない』と述べられ、『専有部分にも関するので管理組合の助力なしには業者との交渉や訴訟手続きも行えない』と述べられました。幸いなことに、末永氏の場合は管理組合の協力を得て、両者の欠陥が重なり合う部分では有効な被害回復活動がされましたが、他のマンションではスムーズに事が運ばれていない場合が多いとのことです。また『マンション紛争では個別的な紛争解決努力も必要であるし、組合の活躍する余地も大きい』とも述べられました。

 そこで結論として、結構尽くめの都心のマンションも、後々のメンテ如何では財産価値は低落する一方で、マンションを販売するときには業者は資産価値云々などと宣伝しているが、購入時の価格が年ごとに低落していき、マンションに資産価値があるとか、投資になるとかとの大方の宣伝は間違っていること。むしろ購入時に購入価格の資産価値があっても年月が経つにしたがってその価値は低落していくものと考えるべきもので、華やかなマンション生活への憧れに冷や水が指される批判が討議者より相次ぎました。
要するに末永氏の場合も、マンション居住者に熱心な人がいて、管理組合も積極的にリードしたからこそ、有効な訴訟活動が可能で相手方との和解も成立させることが出来たのです。マンションでは、管理組合が熱心でない限り欠陥の補修請求や賠償請求はおろか、日々のマンション管理行為も十分にされることはなく、マンション価値の低落はとどまることがない状態になる、ということでした。
したがって居住者も心して組合活動に力を注ぎ、共有財産の価値は活動の共有で守るとの認識が求められるのです。

 代表幹事の講演『消費者に役立つ新しい住宅法制のご解説』の具体的内容も同名の別稿のとおりです。また村岡信爾・森下秀夫両専門委員の講演“マンションの欠陥調査の方法について”も、別稿『欠陥共同住宅、所謂「欠陥マンション」の調査、補修について、建築士としての立場からの私案。』記載のとおりです。

 

(19.5.20)