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平成22年度 欠陥住宅を正す会

拡大幹事会(大阪)、第32回定時会員総会(東京)のご報告

 さる5月8日(土)午後1時より1時30分まで大阪市中央区北浜東3-14エル大阪において定時会員総会、同じく5月15日(土)午後1時から1時30分まで東京都港区芝公園2-4-1ダビンチ芝パークAP浜松町Hルームで本年度の定時会員総会が開かれました。創立総会から数えて32回目の総会になります。
 副代表幹事木村孝が総会の議長となり、先ず代表幹事澤田和也より昨年度の当会の総括報告がおこなわれ、次いで大阪事務局山本慶子より平成21年度における会務報告と決算報告がされました。次いで東京事務局三澤正志より東京事務局についても同じく会務報告と決算報告が為され、それぞれ各報告が承認されました。
 その後東京事務局三澤正志に議長を交代し、三澤議長より新年度役員につき昨年度の役員をそのまま再任するよう提案があり、それが議決されました。その具体的人選は下記の通りです。

≪平成22年度新役員≫

代表幹事       澤田和也(体験者・弁護士)
副代表幹事      木村孝(弁護士)
大阪・東京事務局長  澤田和也(大阪・東京会務統一のため代表幹事が兼務)

大阪事務局  事務局長 澤田和也
  次 長  法 律  中井洋恵(弁護士)
       建 築  石川育子(一級建築士)
       庶 務  山本慶子(事務職員)
  幹 事       澤田和也 中井洋恵 石川育子 高塚哲治 井戸田精一
            西野久志 高石征一 高橋純 水谷幸子 米澤進 後藤敏浩
  監査幹事      高石征一 花川淳一郎 西野久志
  専門委員 法 律  澤田和也 中井洋恵
       建 築  石川育子 高塚哲治 井戸田精一 鳥巣次郎
  顧 問       鳥巣次郎

東京事務局
  次 長  庶 務  三澤正志
      体験指導  池田定男
       法 律  小林誠
       建 築  小出伸顕
  幹 事       木村孝 小林誠 河合敏男 三澤正志 小出伸顕 成澤満
            末永永壽 麻田光則 寺島美代子 間崎路子
  監査幹事      手呂内一人
  専門委員 法 律  木村孝 小林誠 河合敏男
       建 築  小出伸顕 成澤満 高塚哲治

以上で役員の選出は終了し、本年度の活動についても昨年同様例会中心の個別紛争解決を第一義とする活動を行う旨申し合わせがされ、本年度定時会員総会は終了し、その後午後2時より総会記念のシンポジウムが行われました。

〜〜〜〜〜総会記念シンポ開かれる〜〜〜〜〜

 大阪での5月8日(土)の拡大幹事会及び東京での5月15日(土)の定時会員総会の後、それぞれ午後2時から5時まで『欠陥住宅被害の態様と欠陥住宅被害者像の変遷』と題し、第32回定時会員総会記念シンポジウムがおこなわれました。
 今から30年も前には“欠陥住宅”も“住宅のクレーム”もごちゃ混ぜにされた無自覚的な状況であったのを、当会を中心とする訴訟活動によって住宅欠陥についての訴訟上の要件事実(必要な条件事実)が具体的に確定されたこと、消費者の願いは“取り壊し建て替え”を求めることにありこの目標に向かって活動がされ、昭和59年の小林判決でこの願いが日本で初めての取り壊し建て替え損認容判決として実を結び、その後も木造から鉄骨造りなど各種類2階建てから3階建てへと認容され、判決の幅を広げていったことなどが感動的に語られました。
 特にご出席賜った(株)民事法研究会社長田口信義氏によって、平成7年の阪神淡路大震災を機会に現全国ネット幹事長吉岡和弘弁護士の推薦で当会と接触し、日夜を分たぬスピード編集で欠陥住宅問題についての理論的支柱となった当会代表幹事澤田和也著の『欠陥住宅紛争の上手な対処法−紛争の本質から見た欠陥住宅の法的対応策―』が出版され、全国の弁護士や法学関係者に多大の影響を与えたことが生々と語られました。
 尚、このシンポの詳しい内容については機会をみてご報告致したいと存じております。


総会記念シンポジウムレジュメ

『欠陥住宅被害の態様と欠陥住宅被害者像の変遷』

司会者  代表幹事 澤田 和也
副代表幹事 木村 孝
発言者 出席各専門委員及び会員

1、『欠陥住宅を正す会』が生まれたころの社会情勢
(1) 「遠い。高い。狭い。」
住宅産業の確立=住宅生産システムの変化=大工・棟梁から住宅会社へ=信頼関係の喪失と建築技術の高度化による欠陥被害の続出(昭和45・6年頃から昭和55・6年頃)
 
(2) 昭和53年11月『欠陥住宅を正す会』の前身『住宅のクレームに悩む消費者の会』発足。このことが全国紙に大々的に報道され「欠陥住宅」という言葉が市民権を得る。
 
(3) 同年末から翌54年3月にかけ会員より原稿を募集し、54年4月(株)三笠書房より「欠陥住宅体験集」を発刊。初版5,000部、第二版3,000部完売。
これにより当会の名前は全国的に知られるようになり、各週刊誌でも欠陥住宅問題を取りあげる(三澤さんより当時の体験をご報告願います。)。当時の「週刊ポスト」誌には三澤邸の欠陥状況や三澤さんの体験談が載っています。
2、『欠陥住宅を正す会』発足。
 『住宅のクレームに悩む消費者の会』を母体に、更に専門家などを補充して『欠陥住宅を正す会』に改組する。クレームに悩んでいるだけでなく、欠陥住宅を積極的に「正そう」としたもの。
 昭和54年4月の「欠陥住宅体験集」発刊の頃より、全国から問い合わせが殺到し、相談会、座談会、報告会などの希望があったため東京にも『正す会』の拠点を置くこととし、また大阪、東京で毎月定時に例会を開き、相談会、懇談会等を併せ行い現在に至る。
3、欠陥住宅の対策の理論化と体系化。
 ・手抜き欠陥・・・・・・瑕疵と欠陥
             故意の手抜きは瑕疵か
 ・欠陥判断の基準    契約 慣習 諸法令等
 ・欠陥現象と欠陥原因の区別
          (これまでは欠陥現象のみの主張で、業者に原因をすり替えられ、
           手抜き補修がされていた。)
 上記、特に建築関係法令が欠陥判断の中核をなすべきことを前代表幹事早草実先生(一級建築士)と澤田が力説し、定説となる。
 その後、更なる研鑽の結果、昭和55年より新スタイルの技術訴訟としての欠陥住宅訴訟を続々と提起。特に被害者の念願である取り壊し建て替え損の損害賠償請求訴訟に力点を置く。
 その結果、昭和59年末、日本で初めての木造住宅の取り壊し建て替え損判決(小林判決)を獲得し、このことが全国紙で報道され当会の名声が更に上がる。
 尚、平成5・6年ごろの主な獲得判決については澤田和也著「欠陥住宅紛争の上手な対処法」第4部資料編を参照されたい。
4、欠陥住宅関係の手引き書を公刊。
  「欠陥住宅紛争の上手な対処法
         ―紛争の本質から見た欠陥住宅についての法的対応策―」
 平成8年(株)民事法研究会刊
「欠陥住宅の見分け方」平成10年(株)民事法研究会刊
「欠陥住宅調査鑑定書の書き方」平成12年(株)民事法研究会刊
「住宅品質確保法の解説」平成14年(株)民事法研究会刊
以上は代表幹事澤田和也の著作となっていますが、それらの作成にあたっては『正す会』の専門委員各位に意見を求め、多々情報提供を受けております。それでこれらの書物はひとり澤田のみの著作でなく、情報提供をし、ご意見をいただいた各位とのいわば共作と考えています。
5、阪神淡路大震災の勃発と運動の進展。
 平成7年1月の阪神淡路大震災は全国民に建物の安全性の大切さを教えた。
それ以来、建物の安全性を求める諸団体が相次ぎ結成され、欠陥住宅を正す運動は国民運動となった。
 その時求められた理論的支柱については、上記各図書が参照されると共に、全国各地より欠陥住宅排除に関する講演が求められ、当会は積極的にこれを果たした。
 その間、住宅品質確保促進法(平成11年)、住宅瑕疵担保履行確保法(平成17年)が制定され、欠陥住宅防止の法的措置が講じられるとともに、住宅紛争審査会など公的機関による欠陥住宅紛争解決のための機関が設けられ、欠陥住宅紛争の解決は大きく前進しました。
6、欠陥住宅被害の態様の変遷。
(1) 昭和50年代の初期の紛争。
木造軸組み住宅が主流。
欠陥判断基準が法定の構造方法でわかり易く、欠陥の発見、相当補修方法の判別は容易であった。
 
(2)昭和50年代から現在にかけて。
 昭和50年代も上記木造軸組み住宅と並んでプレハブ住宅、型式住宅の欠陥が見られたが、平成5・6年以降、特に阪神大震災でたまたまプレハブ住宅が軽量で地震に強かったところから、プレハブ住宅が人気を得、又、豪華な見栄えのする型式住宅が消費者のマインドを掴んで、木造軸組住宅は職人の不足と共に数少なくなってきている。
 また同時に、単独住宅からマンションなどの集合住宅への需要も高まり、東京・大阪などの大都市では集合住宅となりつつある。これら木造軸組住宅を除く他のタイプの住宅はプレハブであれば設計図書として大臣認定書が、型式住宅でもその部分についての認定書が欠陥判断の大切なポイントとなるが、一般に購入に際し消費者にこれら文書が交付されず、欠陥の判断及び立証は困難を極めている。
 マンションに至っては設計図書の閲覧は可能であっても、多くの欠陥部位が共有部分であって組合との関係もあり、その紛争解決は容易ではない。

このように、建材工法の多様化と集合住宅への需要などから、個別紛争の解決は困難となり、専門家の選別の困難性と資料の取り寄せの手間と費用の問題などから紛争解決は困難を極めている。
7、被害者の変遷
 木造軸組み時代でも、プレハブ・マンション時代でも、“一生に一度のお買い物が裏切られた”との業者に対する憎悪感情が強いのは言うまでもないが、中にはこの業者の背信性から業者以外の人、特に紛争解決に当たってくれる建築士や弁護士に対してすら背信性を示す人間不信の淵に沈むタイプの被害者もいる。
 それゆえ、紛争解決のお手伝いをする専門家や知人友人達は先ず、被害者のメンタルケアに心がける必要があります。
8、まとめとこれから
 欠陥住宅紛争は軸組住宅から認定プレハブ型式住宅へ、また単独住宅から集合住宅へ、木造から鉄骨造り、鉄筋コンクリート造り、その他特殊な工法へと変遷し、欠陥識別のための設計図書も業者に秘匿されやすくなり、その紛争解決はますます困難を極め、調査費用も増大して困難を極めている。
 その解決の一助としてこれら法定以外の材料や工法による住宅の契約に際しては、必ず設計図書の一部としてこれら特殊工法についての認定図書の写しを添付すると共にそれらの解説をおこなう建設大臣付属機関を各都道府県に設置する努力が必要であると共に、欠陥の無いことの立証責任をメーカー即ち業者側に持たせる法制の改革が必要である。

(平成22・5・22 澤田和也)