欠陥住宅問題がしきりに報じられている。特に阪神大震災以降に目立つ現象だ。しかし、このコトバが使われるようになったのは高度経済成長期以降のことである。
「建て付けが悪い家」「ガタピシとした家」「安普請」などというコトバは古くからあった。これらのコトバには、もともと値段が安くて注文者や買い手がそれを承知しているニュアンスがある。これに反して「欠陥住宅」というコトバには「手抜き」というコトバが結びつく。連語といっていい。つまり、注文者や買い手にはわからないように建物性能が手抜きされているというニュアンスがある。この違いはどこから生まれたのだろうか。
もともと住まいは都会、田舎を問わず、地域社会内部で造られていた。顔見知りの大工や棟梁(とうりょう)に建ててもらうというのが通常で、信頼関係で結ばれた地域社会では、昨今流行する手抜きなどあり得なかった。
しかし、昭和35年(1960年)以降の高度経済成長政策は、都市への人口集中を生み、地域社会は崩壊して、多くの人々は頼るべき大工や棟梁を失った。
そしてそのころ、この政策の一環として、国家資金による住宅金融制度が生まれ、それまで借家住まいをしていた庶民をマイホーム造りに向かわせた。住宅会社はこの時期に登場した。
頼るべき大工や棟梁を持たない庶民に対し、マスコミ媒体をフルに使って集客、販売をする会社である。多くの人は住宅会社自らが、自己の従業員を使って直接施工をしているように思っているが、時として設計までも下請けに出し、施工は各地の特約店と呼ばれる一括下請け店にさせていることが多い。
そして、特約店から二次一括下請け店へ、さらには大工・左官などの個別下請け店へと重畳的に下請けされる生産システムをとっている。
この結果、請負代金の多くは中間マージンに費やされ、末端の個別下請けが受け取る代金額は、請負代金の4割程度ともいわれている。
このように受注した者と、実際に施工する者とが分かれたことと、直接施工する者の受注代金が切り詰められることにより、原価と手間を節減しようとして「手抜き」が生まれ、「欠陥住宅」が生まれたのである。
言い換えるならば、欠陥住宅はコミュニティー内部で造られていた住宅が、資本主義社会の商品となった時に生まれたのである。
業者の背徳や配信だけに原因を求めるのは誤りである。 |