交響詩
ガンダム


「眠りより」「珠玉の人」
「大地を発って」「遭遇の宇宙」「ララァ・ときめき」
「疾風のように」「女たちよ」「戦場空域」
「ソーラ・パワー」「黎明」
ホームにもどる

VI 疾風のように


作曲・編曲:松山祐士


 フルート、ピッコロ、オーボエ、イングリッシュホルン、クラリネット(B♭)2、バスーン2、ホルン(F)4、トランペット(C)4、トロンボーン4、チューバ、ハープ、ティンパニ、シンバル、ハイハット、タム、グロッケン、ビブラフォン、弦5部。
 「サントラ第1集/眠りより」の後半と「サントラ第2集・戦場で/艦隊宇宙へ」の主題がモチーフになっている。戦場を駆け抜ける、疾風の管弦楽だ。


A Allegro vivace con fuoco
 疾風のための序奏である。当初発売されたLPレコードでは、この「疾風のように」がB面最初の曲になっていた。レコード盤を裏返した後、再び疾走するための助走である。最終2小節「F〜C〜|E♭、B♭♪」の音は、管弦全員の演奏だ。


B
 「サントラ第1集/眠りより」の後半主題である。第1ヴァイオリンとチェロで奏でる主題には、sostenuteの指示がある。テヌートともいい、音を十分にのばす指示だ。第1ヴァイオリンとチェロにはさまれた第2ヴァイオリンとビオラは、2拍ずつ交互に16分のパターンを刻んで加速を与える。機関車の動輪のように。
 やがてトランペットの号令「F#AED〜♪」を合図に、全管一斉砲火する。


C
 引き続き弦の主題。今度は木管が忙しく動き回って、ホルンと低管弦がリズムを担当する。


D Mono mosso
 十分に加速した疾風だが、ここでいったんスピードをおとす。グロッケン、ビブラフォン、ハープの上品なユニゾンだ。和音はC一発だが、第1ヴァイオリンが3部・第2ヴァイオリンが2部のディビジで計5声になっている。


E Andantino tranquillo
 ここから5/4拍子に変化する。「サントラ第2集・戦場で/艦隊宇宙へ」の主題である。哀しすぎず、明るくすぎないイングリッシュホルンのソロ。やがてビオラが、ヴァイオリンが、チェロが寄り添ってくる。


F
 同主題の後半で、木管群(フルート、オーボエ、バスーン各1)による演奏。


G
 再び同主題の前半。今度は弦楽合奏である。コントラバスが加わるのは、クレシェンドする最後の1小節(6小節目)のみだ。


H Temp I°
 ここでいったん冒頭とほぼ同じ演奏を繰り返す。


I Andantino tranquillo
J Mono mosso
 Iパートの1小節目は、1/4拍子の休符として書かれている。2小節目からは5/4拍子で、オーボエソロから始まって、楽器の数を増していく。IパートからJパートにかけて、拍子は4/4、2/4、4/4と目まぐるしく移り変わる。しかしこれは単なる記譜上の事と考えて、地獄の業火にもがき苦しむかの如き展開に酔いたい。一人残ったティンパニは屍のロールか。


D.C.〜Coda
 音数を増やしてA,B,Cパートを繰り返す。そしてDの2小節前から4小節のコーダへ。やがて疾風は休止する。


K Andantino tranquillo
 ラスト7小節は、最後まで5/4拍子で書かれている。トランペット、トロンボーン、チューバによる「CD↑A♪」音は哀悼の叫びだ!。ラスト、ホルンの和音Fは、煙のようにたなびいて残る。




VII 女たちよ


作曲・編曲:渡辺岳夫


 フルート、オーボエ、トランペット(B♭)、ハープ、弦5部。
 弦楽器以外の演奏者はわずか4人という編成。全4ページのスコアに思いのたけが込められている。TVや映画のサントラ曲と共通したテーマが現れない。弦楽合奏のパートは、TVD「白い巨塔」('78年)の愛のテーマとも言うべき曲と雰囲気が似ている。「白い巨塔」サントラ発売までは、この曲を聴いて期待しよう。


A Lento
 冒頭、トランペットソロが問いかける。彼の世界で共に暮らした女たちへの呼びかけだろう。オーボエのソロが答える。後半4小節では心を合わせ、寄り添うように歌う。この間、他の楽器はいっさいの音を出さないで、二人の対話を見守っている。


B Andante
 弦楽合奏のパートである。第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリン・ビオラで和音を作って、メロディーはチェロによる。高い音の和音+低い音のメロディーは、暖かく柔らかに響くものだ。「C|C|Dm|G|F|F|G|G#5」という展開。8小節目では5度のD音が半音上がって、後半へ思いをつなぐ。
 後半12小節はコントラバスが加わる。和音とメロディーの境界が無くなってきて、「これが主題でこれが伴奏」という形にはなってない。


C
 フルートのソロ演奏である。これはまったくのソロで、他の楽器はいっさい鳴らない。この純粋な音楽を文章で語っても、何も始まらない。すべてをフルートが語っているからだ。とにかくお手元の音盤を今一度再生して、じっくりと聴いていただきたい。最後にハープがフォローする。


D
 再び弦楽合奏のパートである。ここでも後半の12小節にコントラバスが加わって厚みを増すのだ。しかし決してうるさくは鳴らない。旋律的な動きは第1ヴァイオリンが担当する。しかし、第1ヴァイオリンからコントラバスまでの全部で和声を構成している。決して「メロ+伴奏」という編曲ではなく、弦全員で一つの流れを作りだすのだ。
 やや大雑把な分析で申し訳ないが、終わりにかけての進行を示す。「FM7|Em7|Dm7|FM7|E♭M7|Gmadd9、Am7|Gm|C|B♭|C、B♭、C|C|F」最後はCで終わると思わせておいて、Fで終わってしまう。音楽にはこういう終わり方もアリだし、演奏も静かに終わっている。しかし、和声的には「続く」感じなのだ。そして、次の曲が大きなスケールで始まる「戦場空域」というわけである。やはり「交響詩ガンダム」は、曲と曲のツナギを計算した構成になっているのだと考えられる。




VIII 戦場空域


作曲・編曲:松山祐士


 フルート、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット(B♭)2、バスーン2、ホルン(F)4、トランペット(C)4、トロンボーン4、チューバ、ハープ、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、ハイハット、ギロ、拍子木、キハダ、タム、弦5部。
 サントラ第1集の「戦いへの恐怖」と「颯爽たるシャア」の主題がモチーフになっている。松山祐士が存分に腕をふるったスコアは、スペクタクルな展開で聴かせる構成だ。


A Allegretto misteriouso
 冒頭。闇にうごめくティンパニのA音とD音!。戦いへの恐怖をかきたてる。


B
 迫る。迫る。突撃ラッパで一気に迫る。ホルンの咆吼はG↑C↑G(実音)の主砲三連撃。瞬間、戦場は静まり返る。


C Allegro con brio
 便宜上Cパートは2小節のみで、3小節目からC'になっている。C'のアタマの小節にセーニョ記号がついている関係だ。戦いへの恐怖は、弦のテーマとなって再開する。ここでの調はCだ。


D
 ホルン、トランペット、フルートが主題を受け持って、オーケストラ全員による総攻撃。駆け下る五連符の連続で、さらにテンションを高める。繰り返し時は、Eパートの2小節前からコーダへ飛ぶ。


E Tempo I
 再びティンパニの呻き。このティンパニは冒頭と違って、A音とD♭音である。この音の違いには長らく気づかなかった。


F Allegro vivace energico
 主題は「颯爽たるシャア」へ移る。Fパートは前奏に相当し、新しいリズムを開始する。


G
 トランペットの主題には「Grew」の指示がある。唸るように吹けの意か。


H,I
 引き続き同主題だが、半音上がっての演奏だ。トランペットは「Nomal」とあるが、これはNormalの誤記かも。


J
 「颯爽たるシャア」の弟二主題。このパートは繰り返しになっていて、二回目にはホルンと木管がメロディーを演奏する。


K,L
 味方の体勢を立て直して、再び「戦いへの恐怖」である。このメロディーには恐怖を通り越えた、半ばヤケクソ気味の勇ましさがある。ガンダム屈指の名旋律だ。ここではF調で演奏される。弦のメインメロにトランペットがからみ、立体的な攻撃フォーメーションを展開する。


M
 ホルンと木管が主題を引き継ぐ。


N,O,P,Q
 再び「颯爽たるシャア」の主題になる。メロディーを演奏する楽器がどんどん変わるだけでなく、調性もどんどん変わる。凝った構成だ。


R Espressivo sonoro
 Rパートの3拍前は、ストリングスの5連符、5連符、7連符という記譜になっている。そしてRパートは思い入れタップリの交響詩オリジナル部分だ。ダルセーニョでC'へもどる。


Coda
 このラストもRパート同様に交響詩オリジナル部分だ。ともに映画音楽的な広がりを感じさせる。特にラストは全艦隊突撃シーンの様な華やかさがある。しかし戦いの「カッコヨイ」はここまでだ。この後には、いよいよ最後の二曲が待っている。




ホームにもどる