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構造計算偽造を防止する対策について

欠陥住宅を正す会 専門委員
一級建築士 村岡 信爾

多数の新築マンション、ビジネスホテルの構造計算を偽装して使用鉄筋量を減らし、構造上の安全性を無視してコストダウンを図った事件がおこっている。 これらの事件を防止する対策について、欠陥住宅を正す会の専門委員として私見を述べる。

1 指定確認検査機関設置の指定基準を改正する。

 規制緩和、国際調和、建築物の安全を一層確保する要請に対応するため、建築基準法を改正して民間機関(指定確認検査機関)による建築確認・検査制度を制定し、指定基準を満足すれば、非営利法人、営利法人を問わず、確認検査機関を開設することができることにしている。
営利法人が確認検査業務をできるようにすると、営利法人である建設業者が社名を伏せて使用している有資格者の名義で確認検査機関になれるので、営利を優先(確認のスピードアップ等)し、確認業務が疎かになり、姉歯事件にみられる構造計算の偽装を見抜けなくなりがちになるから、改正前の確認制度に戻すべきだとの意見がある。 しかし、従来どおりの制度にしたからといって偽装を見抜けるとは限らない。 そこで防止する方法として、確認検査機関を開設できるのは、営利法人は除外して、その影響を受けない非営利法人及び個人にして、厳しく公正な機関にする。 更に行政以外の中立の監査機関を制定して、予告なしに監査を実施して制度の実効性を確保できるようにする。 又、適正な料金を設定して経済的に自立できるようする等が考えられる。

2 情報を公開する。

 行政、確認検査機関は、確認図書(確認申請書、同通知書、設計図書、構造計算書)、型式適合認定書及び工業化住宅認定等別添図書を、注文建築(各種構造の建築物)、建売住宅(売りたて住宅共)に限らず、注文主(建築主)、買主の要求があれば直ちに開示しコピーできるようにする。
更に、行政、確認検査機関による中間検査合格証、完了検査証を交付する。

3 罰則を強化する。

建築基準法に違反しても最高1年以下の懲役または50万円以下の罰金では罰則が軽すぎるので、罰則を重くすると違反者が減るのではないかとの意見がある。
罰則を重くして違反者を減らす方法は最良の方法とはいえないが、当面の対策としては有効なものと考えられる。

4 設計・監理・施工は分離して行う。

  営利法人である建設業者に建築事務所の開設を許可しているので、建設業者は、使用している有資格者の名義で建築事務所を開設すると設計・監理・施工ができることとなっている。 注文者には「自社で設計するから設計料を不要になり、その分だけ工事費を安くできる」と宣伝して工事を受注する。 しかし、設計料が不要になる訳ではなく、目に見えない形で工事費に含まれているし、営利を優先するので、施工の段階で自社の都合によいように建築主に無断で勝手に設計を変更することが大になり、構造上安全なもの及び設計と違う仕上げになりやすい。
建築は本来、設計・監理・施工は分離して行うものなので、営利法人である建設業者が有資格者の名義を使った建築事務所を開設できないようにして設計・監理ができなくするのがよい。
また、施工者、設計者に利害関係がない経験豊富な建築士を工事監理者に起用し、設計図どおりに施工されていない場合は施工者に注意し、従わない場合は、建築主に報告するとともに、建築主の同意を得て工事を中止できるようにするのがよい。 また、設計に不具合がある場合は速やかに設計者、建築主に報告するとともに、不具合の是正対策を講じて施工者に提示して実行させるようにする。

5 構造耐力上の安全の認定者を明確にする。

  施行令の構造規定のただし書きで「国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって構造耐力上安全であることを確かめられる場合はこの限りではない」としているが、安全であることを検討し認定する者を明確にしていない。 このため一建築士が計算して安全を確かめたから安全だと主張することがおこる。 これら弊害を除去するため安全の認定者を明確にすることが望まれる。
また、構造計算は現状の施工が法の規定を守った設計どおり完全なものになっているのを前提として行うものであり、手抜き施工を前提にした構造計算は成立しない。 従って、手抜き施工を正当化するために行って安全であると主張しても机上の空論にしかならない。

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