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姉歯元建築士による構造計算書偽造に関連しての意見について

欠陥住宅を正す会
専門委員 山上勇二郎 ( 一級建築士 )

 みだしのことについて、当会は、約 27 年間、欠陥住宅に係ったことにより、人生も、生活も大きく狂った多くの消費者の最後の駆け込み寺として、ささやかながら草の根の地道な活動を続けている団体です。

 今回の姉歯元建築士による構造計算書偽造について、事件中途にして、今後の推移を見ないとなんとも言いがたい点はあるものの、今現在の時点での世に情報発進することにより、人の生涯での最大の買い物である住まう場所=本居が、構造耐力不足の欠陥住宅とならないために、いかばかりかの改革につなげていただけるヒントの一つにもしていただければと願う者であります。

第 1 、人間、家族にとって、安住の地 = 住まう家を求めるに当って、消費者は、何を尺度として、家を求めたらよいかの判断基準を明らかにすること。

@ 欠陥住宅の被害者の多くが、安易に、人の繋がりや、大手だから信用できるとしてその被害者となる例が多くある。
A 間取りが広く、大空間を求め、いかも廉売の住宅での被害者が多い。
B  相談者の多くが確認済証、検査済証を手交されておらず、しかもその意味さえも初めて知った人=相談者が多い。
C 入居後に、壁の剥離、雨漏り、漏水、床の軋み、結露等々のクレームに対して、誠実に対応でき、対応した販売者 ( 請負人を含む ) が少ないこと。 売り逃げの生産者=販売者 ( 請負人を含む ) が後を絶たない現況であります。

第 2 、販売者 ( 請負人を含む ) の契約時、引渡し入居時及びその後一定期間 ( 概ね半年 ) まで、契約要件並びに引渡し入居要件つき明確化を図ること及び補修等決済猶予期間(仮称)を創設すること。

@ 民事法の、請負契約制度、なかんずく請負人の瑕疵担保責任のあり方を見直す。
  今回の構造計算書偽造では、その証明は行政 (= 建築研究所、特定行政庁、民間指定機関 ) で行われたが、従来の構造耐力不足の欠陥住宅での構造耐力不足の挙証責任は、買主=消費者にある。 買った建物の構造耐力不足を証明することは不可能に近い。
  挙証責任の転換を考えなければ、売買 ( 請負 ) 契約での当事者の権衡は確保されていない。 構造耐力不足の欠陥住宅を生み出す (= 助長する ) 原因の一つではないか。
A 宅建業法上、居住用住宅の売買について、買主にクーリングオフ制度を導入する。
  売主 ( 仲介者を含む ) に、契約要件の書類に確認済証 ( 構造図、構造計算書を含む ) 、中間検査合格証及び検査済証を含める。 入居後の 1 年目点検、 5 年目点検並びに 10 年目点検の義務化と維持管理、メンテナンス、税金、火災・地震保険の説明責任を法定する。
B 共同住宅については、住宅の性能と保険とを連動させる。 耐火・耐震等級に対応した火災・地震保険とする。

第 3 、物造りに携わる者の「自己責任の原則」を明らかにし、義務と責任を明確にすること。

@ 構造設計 ( 構造計算を含む ) 者を、意匠設計者からの従属性を排除し、意匠設計 ( 建築設備を含む ) 者と構造設計 ( 構造計算を含む ) 者の契約当初からの分離、独立し責任の所在を明らかにする。売買契約時に必要な契約要件を書類に明示することを義務化する。
A 施工者、元請施工者、下請け ( =専門 ) 施工者の責任範囲を明確にする。 売買契約時に必要な契約要件を書類に、明示することを義務化する。
B 工事監理者を、施工者からの従属性を排除し、工事監理者を、施工者から分離、独立した責任と義務が遂行可能なように、社会・経済的自立が可能な制度の拡充を図る。 その上で、工事監理者の建築主への工事監理報告書の手交を、売買契約の契約要件とする。
C 確認検査機関の専門性と第三者機関としての独自性を再検討する。 設立母体からの完全な (= 人的・資産・経済的 ) 独立、指定評価機関の兼業の排除など、国民から信頼を得られるような再生制度化を図る。
D 今回の構造計算書偽造という倫理違反の卑劣な行為によって、仕様規定から性能設計へと時代の進歩への加速を鈍化させてはならない。 保有耐力設計、限界耐力設計、エネルギーの釣合い設計等々、より合理的な設計法の定着が望まれるところである。 構造計算解析にコンピーュタプログラムが無くてはならないものである。開発用プログラムのは別として、少なくとも実際に建物の構造設計や、構造審査に使用できるプログラムの評定、認定制度の見直しが必要である。

(1)  従来の図書省略の為の評定制度から、誰にでも入力やモデルや計算結果が判る認定制度に移行する。
(2)  従来の一貫プログラムだけの評定制度から、部分プログラムを含んだ認定制度に移行する。
(3)  従来の構造設計者の誤用や、利便性重視の余り実際に有り得ない、いわゆる構造計算遊びが可能なプログラムから、メッセージが有れば、具体的な処置なしには先に進めない等の誤用防止機能、実在照応機能、解析結果のフィードバック機能の充実を義務づける認定制度にする。

 E 建築物の耐震性能は、全国同一レベルでなければならない。 過去の地震発生確率から例えば沖縄県は、その耐震性能は 0.7 でよしとするのはおかしい。 又地域によって、構造設計の指針等の差が大きいのはおかしい。 例えば、高層 RC 造指針等が、東京と大阪で極端に差があることは、見方によっては、今回の構造計算書偽造を超える問題を内蔵している。

第 4 、構造耐力上重大な欠陥が明らかになった場合の、緊急退去等の総合的支援制度の創設すること

@ 今回の震度 5 程度の地震の耐えられない建築物に対しての使用禁止命令等は、建基法や、品確法などの現行法の枠を超えた、政府での緊急避難的な処置思われる。
   建基法第 11 条の「公益上著しく支障がある場合に」とする発動要件、発動した場合の「通常損の時価保障」とする損害補填額、品確法での性能表示建物に対する紛争支援制度、或いは激甚災害時の指定等の災害時の一時救済制度などと権衡を欠くものである。
A 人命危険をあらかじめ、把握した居住建物に使用禁止命令や、その緊急退去等の支援は、今回限りの措置であってはならない。 現行法との権衡を配慮しつつ、構造耐力不足による欠陥住宅の被害者の救済も視野に入れた総合的支援制度の創設 = 法制化を願うものであります。

今回のような卑劣なで、不幸な出来事が再び起こることがないよう願うものであります。

(平成18年1月16日)

 

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