管理者: 水谷 喬次
mail: mizutani@sun-inet.or.jp

COLUMN'05

「05年、私のゆく年、来る年」

「全ては慣性の法則で起きた」

「定期点検してますか?」

2005年12月30日

「05年、私のゆく年、来る年」

今年も、あと残すところ1日となった。05年を振り返ると今年も色々なことがあった。2月には、車検延長問題のフォーラムが東京で開かれ、それに出席する機会を得た。別稿参照)表向きは、「定期点検の実施率が低い。だから、延長は出来ない」と言うことなのだが、本音は別のところにあるようにも見える。つまり、メーカー、整備業界等々の思惑が見え隠れしている。メーカーはクルマを買い換えてほしいし、整備屋さんとしては車検整備を自分たちがすることによって利益を上げているのが現状である。もっとも、最近では昔みたいな過剰整備はなくなりつつあるようだが。
ユーザーとしては、点検をキッチリ実施して、しなければいけない整備だけをしてもらうのが結果的には経費がかからないのだろう。

2月の終わりから3月にかけては群馬県のアイスサーキットまで雪道の練習に出かけた。私はスキーはしないので、それまで雪道はあまり走ったことがなかった。ダートの経験は多少あったので、基本的に車はまっすぐには走らないということは理解していたが、アイスバーンにはビックラこいた。あとで、インストラクターが言うには「アイスバーンではスピードを落とすのが鉄則」だって。
それにしても、雪国の人間は感覚でドライビングしてしまうようだ。ごく普通のクルマで(もちろん4駆であるが)オバチャン達は、バンバン走りまわる。げに、恐ろしきは女性かな。

4月になって暖かくなってきたので、スタッドレスから、夏タイヤに交換した。それまではメーカー標準のタイヤを履いていたが、減ってきていたこともあって今回、ちょっとスポーツ系のタイヤに変えてみた。これが私のサイフを脅かすことになろうとはつゆ知らず。
ご存じのように、タイヤには、転がり抵抗なるものがあり、スポーツ系のタイヤはグリップはよいが燃費は悪くなる。メーカー標準のタイヤとスタッドレスタイヤでは燃費にあまり変化はなかったのだが。このご時世、リッター当たり1qのダウンは痛い。おまけにハイオクだぞ〜。メーカーのタイヤ設定は地味な仕事のようだけど重要なのだと変な感心をしてしまった。

9月の終わりから10月の始めにかけて、WRC「ラリージャパン」が開催された。今年は、三菱とシュコダも参戦し、6ワークスが勢揃いした。今年も観戦したが、結果はソルベルグのまさかのリタイヤ、ローブのチャンピオン決定となった。スバルは、今年はツキがなかった。「ツキも実力のうち」といわれるように勝負事はいかにツキを呼び込むかが重要なのであろう。それにしても、三菱の来年からの不参加のニュースは残念だ。今年はフル参戦をし、安定した成績を残してきただけに惜しまれる。
来年はマニュファクチュアラーズには6チームがエントリーしているが、完全なワークスとして参戦するのはスバル、フォードだけだ。シトロエンはクロノスというサテライトチームを使って参加、プジョーやシュコダも同じような方法で参加する。さらに、ラリージャパンは主催者の毎日新聞がスポンサーを降りた。何とも寂しい限りだが、いちラリーファンとしては、また観戦したい。チケットも入手しやすくなるかも。JTBのいいとこ取りはゆるさんぞ〜。

11月には東京モーターショウに行ってきた。今年のモーターショウは、50周年ということで懐かしいクルマやバイクが展示されていた。
自分としては、プリンスのスカイライン2000GTB、日産のフェアレディー2000(SR311)、日野コンテッサ、いすゞのベレット1600GT、そして、私が初めて乗ったトヨタのパブリカ等を見たかったのだが残念ながら展示されていなかった。特に、スカイラインは今でこそ日産車だが、1960年代前半はプリンス自動車工業で生産・販売されていた。この2000GTB(S54B-U型)誕生のいきさつは、日本のモータースポーツ黎明期である1964年、鈴鹿サーキットでの第2回日本グランプリGTクラス出場のため、プリンス自工は、グロリアの直6エンジンをボディのフロント部を200mm延長して搭載し、ホモロゲーション用に100台を生産し、販売した。レースでは、砂子義一が2位に、生沢徹が3位になっている。このレース仕様の市販バージョン版を2000GTの名で販売した。ウェーバー製のツインチョーク・キャブを3連装し、125psを発生していた。その後、シングルキャブのデチューン版であるGTAの追加により、今までの2000GTはGTBと名称変更されたのである。ちなみに当時、GTクラス優勝のポルシェ904は、プリンスの日本グランプリ3冠を阻止するべく、トヨタが取り寄せた、との噂が出回った。当時の自動車メーカー同士の競争が伺えるような噂ばなしではある。そして、このクルマこそがその後のスカイライン2000GT−Rへと続くのである。

話がとんだ昔ばなしになってしまった。(歳をとってくると誰もがこのようになるのだ。ご容赦あれ。)
何の話だったっけ?そうそう、モーターショウの話だったね。話を元に戻すと、今年のモーターショウは電機メーカーの出展が多かった。理由は、クルマの電子化。これからもこの傾向は続くのだろう。ユーザーにとっては安全で快適なカーライフが実現するというものだ。だが、現状ではクルマ屋の技術者と電気屋の技術者とではクルマに対する考え方が少し違っている。この辺を今後どのように煮詰めていくかが鍵になる。

今年は12月になったら、急に寒くなった。気象庁も暖冬傾向の予報を修正した。私の住んでいるところでも何十年ぶりの大雪だなどと言っている。ここにきて、年始めの群馬での雪道特訓が効果を発揮しているが、ひとつ気がついたことがある。それは、その土地の雪質の違いで微妙にタイヤのグリップ感が変わってくるのである。タイヤメーカーは出荷先の雪質にあったコンパウンドで製造・出荷するとも聞くが、実際はどうなんだろう?

ここにきて、エンジンルームから異音がしだした。調べてみると、どうもインタークーラーのケースとタワーバーが当たっているようだ。タワーバーを取り外すと音は止まるので間違いないと思う。エンジンが過剰に動いている。このような現象は、以前にも経験している。(また昔ばなしかよ・・・)そのときは、ロータリーエンジン搭載車に乗っていた。ご存じの方もいると思うが、ロータリーエンジンはレシプロエンジンと違って回転運動なので、エンジンのトルク反動で一定の方向にトルクがかかる。その結果、エンジンマウントが切れてオイルパンとオイルパンガードが接触するようになった。今回はレシプロエンジンではあるが、エンジンマウントと思い点検してみたが、亀裂や切れは見つからなかった。あとは、マウントブッシュの“へたり”が考えられるが、たかだか35,000q走っただけで“へたる”ものなのだろうか?(ひょっとして、北海道でのあのジャンプが原因か?それとも、通勤途中に1カ所ジャンプするところがあるのだが、そこのジャンプの繰り返しか?)と、いろいろ考えてしまった。
確認のためディーラーに聞いたところ、ありましたよ、対策品が。今のクルマは、コストダウン、軽量化等でかなり、ぎりぎりの設計をしていると聞いてはいたが。以前は、120%の設計をするのが普通だったのだが。それにしても不愉快なのはリコールとまではいわないが、このような不具合をユーザーにも知らせず、聞かれたら「対策品がありますよ」ではメーカーの体質が問われるのではないだろうか。とりあえず部品を購入して交換することにした。

ここまで1年を振り返って書いてきたが、1年は本当に短く感じるようになった。(歳のせいかな?)クルマとの付き合いもこれからずっと続くだろう。世の中はミニバブルとかいって、景気が上昇傾向にあるが、先行きはまだ不透明だ。我々庶民の税金も上がることはあっても、下がることはないだろう。必要なところに必要なだけのお金をかけるのが賢明のようだ。ということで、来年はエンジンマウントの交換から始めるとしようか。

それでは皆さん、よいお年を!

2005年6月27日

「全ては慣性の法則で起きた」

2005年4月25日、JR西日本の脱線事故が発生した。最終的に107人の方が亡くなられた。被害に遭われ亡くなられた方々にはお悔やみ申し上げるとともに、ケガをされた方々にお見舞い申し上げます。
多くの専門家が連日、メディア等の報道番組で、事故の原因等を説明されていたので色々な要素が絡み合い事故が起こった事は、皆さんもある程度の事は認識されていると思う。「超」が付くほどの過密ダイヤ、時間通りに走らせなくてはならないというプレッシャー、そのプレッシャーから起きるミス、ミスをした場合の「日勤教育」と称する「懲罰的で不合理」な再教育プログラム、といった「負の連鎖」が起きやすかった職場環境、もちろん、ハード面での整備の遅れも確かにあった。

しかし、私は、23才で11ヶ月の実務経験しかない運転士と運転させていたJR西日本に最大の要因があったように思う。運転士の技量を非難するつもりは無い。逆に同情しているが、やはり経験不足は否めないと思う。直線は誰でも加速は出来る。しかし、コーナー手前のブレーキングのタイミングとブレーキングの為のブレーキのかけ方は経験と沈着冷静な判断力が求められると思う。事故原因がだんだん究明されているが、現時点では、コーナー手前でのオーバースピード、そして車両が不安定になった時点での急ブレーキ、まさに慣性の法則に従って、車両はマンションに突っ込んでいった。
自動車ならオーバースピードでコーナーに侵入した時、スピンしてしまうのと同じ事。自動車免許取り立ての若者が、乗車定員いっぱい乗り込んで、オーバースピードでコーナーを曲がりきれず事故となるのと同様の事。今回、JR西日本の発表だと、このコーナーは100q以上のスピードでも曲がれるとテスト報告していたが、その時点での車両は、乗車ゼロであったようだ。1人体重60sとして、100人乗っていれば約6トン。乱暴な言い方をすれば、停車状態でも、その6トンの力で横から押したらひっくり返るかも・・・。F1レースなんかをテレビで見ていると、コーナーリング中イン側の車がアウト側の車両にチョット当たっただけで反動で外側に弾き飛ばされるのを目にするが、あれと同じ状態だ。電車の場合、オーバースピードでコーナー侵入した場合(自動車のように運が良ければスピンして済むが)どこにも逃げようがない。このような事は、専門家であれば充分予測できていたと思うが、運転士の教育期間中にどのような教え方をしたのか疑問を感じてしまう。それともこういった力学的な教育がされていなかったのかも知れない。そして事故は起きてしまった。

慣性の法則について、ここで詳しくは説明しないが、動いている物体を止めるには、慣性の法則を無視できない。昔、スズキのフロンテクーペ(2サイクルエンジン、3連キャブレター)に乗っていたことがあるが、この車はRR(リアエンジン・リアドライブ)だった。車重の大部分がリアにかかる。その上、後輪を駆動する。コーナーリング中は絶えずリヤの挙動に気を付けてステアリング修正と一定のアクセリングを必要とした。もちろん腕に自信ある人は、ドリフトでカウンターを当てながらコーナーを攻められるが、私みたいにリヤが滑り出すと、頭と気持ちでは分かっているのだが一瞬、アクセルペダルから足が離れてしまう。そうするとコーナーリング中、車両はタイヤのグリップ限界で踏ん張っていたものが、トラクションが急に無くなるとエンジン重量で、時計の振り子のようにコーナーの外側に滑り出す。中学時代に習った「力の合成」を思い浮かべてもらえれば分かりやすいかと。

自動車だとシートベルトしていれば大きな事故でもかなりの確率で生存できるが、電車はシートベルトが無い。ましてや吊革に捕まって立っている状態で、突然強い衝撃を外部から加えれば、ひとたまりもない。電車の性能は向上しているのだろうが、安全面ではレールの横造も含め、以前から大きく進歩しているとは思えない。テレビでの実験では、電車はレールの上で横からの力と慣性力で、いとも簡単に脱線していた。スピードが増してもコーナーリング性能が以前と同様であれば、最近の自動車がナロータイヤを装着してコーナーリングをしているのと同じ事。恐くて隣の席に座る勇気が起きない。

それでは、こういった事故(電車ではなく自動車)をなくすにはどうしたらいいのか?
まず、車を運転するには免許が必要だが、今の自動車学校は、悪く言えばところ天方式だ。最低限自動車を動かすことさえできれば卒業。車の特性を教えたりせず、ましてや急ブレーキ・急ハンドルは厳禁。スピードを出そうものなら助手席から強制ブレーキがかかる始末。このような若者(歳は関係ないか・・・)が免許証を手に入れて公道を走るようになる。余談だが、自分が普通免許を取得したのは35年以上前だが、その当時は自動車学校での実技免除で取る今の方式はあまり無かったような気がする。一般道路が練習場みたいなものだった。そんなドライバーが一昔前ならレーシングカーといってもおかしくない今の自動車を運転することになる。その結果、若者が定員いっぱいの5人乗車でカーブをスリップし、激突して全員死亡という記事を目にする事になる。これは起こるべくして起きた事故なのだ。

経験者及び年輩の方は、もうお気づきだと思うが、これは慣性の法則によって起きたもの。1名の重量と5名の重量では、車両の限界は極端に変わる。よくレースカーで重量制限している車のドライブフィールをレーサーが、「50s重くなったら加速、ブレーキ、コーナーリングと全く違った車になる」と言っている。これが、一般市販車にも当てはまる。ましてや4名増えることは、300s弱増えることになり限界を越えた走りをすれば何処へいくか分からないほど特性が変わり、コントロール出来なくなるのは当然で、ましてや経験の少ない運転者であれば、なおさらパニック状態になる。
まず、熟練者であれば、そのような状態でスピードを出すとか急激なコーナーリングは、その前から不安定な状態になっていると思うので無茶をすることはない。原因としては、事故の怖さ、自分の対応能力の低さを知らない為、自分のコントロール出来る限界を超えた場合のとっさの判断が出来ず、事故が起こる。運転経験の長い人は、怖さを知っている為、自分の能力に即した運転をしている。自分では気づいていないのかも知れないが・・・。若者、特に免許を取得して大きな事故の経験のない輩は、なんともならない。

しかし、若者の中には、上手い人もいる。その人たちは、やはりミニサーキットや山道等で練習しているようだ。
このような事実を見たり聞いたりすると自動車学校の教習に、サーキット走行とパイロンを使ったスラロームの出来るコースが有り、そこで自動車の特性を経験させるのが一番有効だと思う。
サーキット(山道でも同じだが他人に迷惑をかけないことが絶対条件)を走ることは、まず高速時での車両の横方向へのアンバランスが体験できるし、コーナー手前では速度のコントロールの難しさが学べ、連続コーナーでは次のコーナーの為のコース取り、また、前に遅い車両がいた場合の追い越し方等、先を読むことを勉強できる。その際、速度はめいっぱい出す必要はない。このサーキット・山道を経験すると間違いなく今までと違った自分に気が付く。そうすると一般道においてやはり恐怖感を感じ、その恐怖感からまず速度を落とす。又、見えないことに対し確認出来るまで無謀な行動をしなくなる。スラロームでは、車両の挙動変化を体験でき、いかに簡単にテールスライドするかが習得できる。

交通事故は誰もが起こそうとして起きているわけではない。事故を未然に防ぐには自分自身が車輛の限界を越える走行を体験したことがあるか、自分の技量及び車両の特性を充分に知って運転しているかにつきると思う。

2005年2月7日

「定期点検してますか?」

2月4日、東京に於いて、国土交通省主催のフォーラムが開催された。これは、平成16年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3カ年計画」に於いて「車検の有効期間の延長を判断するための調査を平成16年度中に取りまとめ、その結果に基づき速やかに所用の措置を講ずること」とされたのを受け国交省で「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」を設置し、自動車検査証の有効期間等の見直しを行ってきたが今回、その内容がまとまったのでフォーラム「車検について考える」を開催し検討内容を公表して広く一般から意見を言ってもらおうと企画されたもの。結論から言うと4輪車の車検延長はない。その最大の要因としてあげられたのが「定期点検の実施率」。(定期点検とは車検時の定期点検を除いた1年点検のこと)

基調講演の中で座長の下川浩一氏(東海学園大学大学院経営学研究科教授)は「定期点検実施率は、どの車種に於いても平成9年調査の時と同レベルであり、ユーザーの点検整備に対しての意識が向上しているとは言えない。」と指摘している。調査では、自家用乗用が41.6から43.4%で、貨物車に至っては8トン未満が30.9から32.2%、8トン以上が15.8から12.3%といった内容である。

基調講演のあと開かれたパネルディスカッションでは、各方面の専門家によるディスカッションが繰り広げられたが、そのなかでメーカー代表として元ホンダの金子光男氏(現日本自動車工業会サービス部品部会部長)は「自動車は初期の性能や耐久性を維持するために、メンテナンスの実施を前提に造っており、過去10年間、メンテナンスにかかわる装置及び油脂類・部品などの耐久性に大きな変化はない。保守管理責任はユーザーにゆだねられているが、現状では定期点検を行わない人が多いのが実態であり、ユーザーの保守管理責任が全うされていない。」と指摘している。我々ユーザーには耳の痛いところである。

では、点検整備をしないのはなぜだろう。義務はあるが罰則がない、車のことはよくわからない、今の車は故障しない、お金をかけたくない、点検する(してもらう)時間がない等あると思う。しかし、定期点検していれば車検の時の重量税・自賠責の割引等の優遇措置ができるかもしれないし、現在のIT技術を持ってすれば近い将来、その車固有の点検情報がディスプレイに表示されるようになるかも知れない。ただ、そのために価格が高くなるのは困るが。

私なりに思うのは、定期点検も重要だが日常点検をきちっとしていれば故障は防げると思っている。タイヤのへこみ具合、ブレーキの踏んだ感じ、ステアリングを切った感じ、車の振動、足まわりからの異音、エンジンの掛かり具合、どれも自分の五感を働かせれば異常をつかめると思う。そのうえで、整備をするなり、してもらうのが結果的に安全で費用もかからないのではないだろうか。
  ※基礎調査検討会の詳細資料については、
こちらのホームページまで

copyright©2011 Kyouji Mizutani all rights reserved.