管理者: 水谷 喬次
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COLUMN'99

「ディーゼル車NO!」

「ベンツが飛んだ!!」

「ちょっとご用心」

「トリプルAの意味」

「税制改革の目的は?」

「最近の車の保険」

「車からでる廃棄物」

「車のメンテナンス性について」

「車ってどうなるの?」



1999年9月

「ディーゼル車NO!」

東京都がとんでもないことを言い出した。新聞等の報道によると、ディーゼル車について都内での不売買・不使用運動や軽油の優遇税制見直しの検討などを盛り込んだ作戦を開始すると発表した。名付けて「ディーゼル車NO作戦」というらしい。東京都は「自動車から出る窒素酸化物の七割、浮遊粒子状物質のほとんどをディーゼル車が排出し、東京の空気を汚す最大に要因になっている」と指摘。対策として、

ディーゼル車には乗らない、買わない、売らない

代替車があればガソリン車などへの代替を義務づけ

排ガス浄化装置の開発

ガソリンより安い税制を是正排ガス規制の前倒し

以上、五項目を提案している。これは、うがった見方をすれば石原慎太郎東京都知事の彼一流のパフォーマンスと見ることもできる。一地方行政都市がそこまでやれるとは思えないし、当然自動車業界の反発も広がるだろう。ましてや、納入業者のディーゼル車使用状況や黒煙を出して走る車の目撃通報システム設置などの策を考えるに至ってはファシズム的ですらある。しかし、東京都が深刻な環境汚染に成りつつあるのもまた事実なのかもしれない。ここは彼一流のリーダーシップを発揮して都民に環境意識を高めてもらいたいというのが本音ではないだろうか?

近い将来、必ずガソリンと、ディーゼルが共存できる日が来ると思う。何といってもディーゼルは燃焼効率がよいのだから。そのためにも自動車メーカーには排ガス浄化装置の開発を急いでほしいと思う。都知事もそれを見越しての今回の発表になったような気がする。

1999年8月

「ベンツが飛んだ!!」

今年のル・マン24時間耐久レースは、最近にない白熱したものになった。テレビで見た人も多かった事と思う。かってはル・マンといえばポルシェといわれた時代があった。それが今年はベンツ、トヨタ、ニッサン、BMW、アウディといった世界の自動車メーカーが参加した。これは伝統のあるレースで勝つことにより自社のブランドイメージを高められるということがあるのだろう。各メーカーともに、ヨーロッパでの販売促進のひとつとしてこういったモータースポーツに参戦している。つまり、商売としての宣伝モータースポーツだ。勝てそうなら出場するし、そうでなければやめておくといったところだ。ポルシェがワークスとして出なくなったのもこういったところが原因かもしれない。しかし、実際に現場でやっているチームの監督、ドライバー、メカニック、エンジニア等もろもろの人達はそんなことは忘れて、レース中は無我の境地でやっているのだと思う。それがモータースポーツの醍醐味だと思う。

さて、今回ベンツ、トヨタ、ともに勝つことはできなかった。ベンツはレース中に車が空を飛ぶという事故を起こした後、すぐにレースを撤退した。過去にもベンツはレース中の事故の引き金になったとして全車棄権させたことがある。現場は一般道で路面がアップダウンしており飛ぶには条件が良いところだ。過去にも予選中に最高速だけをねらって出場した車がやはり空を飛んでいる。車が空を飛ぶということに驚いた人もいたかもしれない。しかし、グランドエフェクト(地面効果)を使うとこうしたことは起こり得る。過去には日本のグラチャンレースでもよく飛んでいた。グランドエフェクトというのは、車体下面と路面の間の空気の流れを制御することによって車体を地面に押さえつける効果(ダウンフォース)のこと。ベンツの場合は、路面の凹凸によって少し浮き上がったフロントから空気が一気に入り込み、この力により全体が浮き上がったということだろう。トヨタは適切な空力処理とサスペンションのチューニングで飛ぶことはなかった。テレビを見ていた人は気が付かれたことと思う。

レースのほうはトヨタがBMWを22秒差まで追いつめたが痛恨のタイヤバーストで優勝はできなかった。モータースポーツは運も必要なのだとつくずく思った。ベンツとトヨタの戦いは始まったばかりだ。両メーカーとも結果に左右されることなくこれからも出場し続けていってほしい。

1999年7月

「ちょっとご用心」

先日、意外なものを見た。あるガソリンスタンドでお客と店長が一台の車を囲んでなにやら相談している様子。聞くとも無しに聞いていると、どうも車検に出した後のクレームのようである。今はやりのユーザー車検の代行をスタンドに依頼したものらしい。

車を見ると、ヘッドランプのレンズが白く濁っている。触ってみると白く濁った部分がボコッと盛り上がっていて、さらに黒く焦げた様な跡が見られた。どうもレンズが溶けたようである。車検の項目の中には光軸のチェックがあり、ずれていると調整しなければならないのだが、その調整に手間取ったようである。最近の車は、ヘッドランプにクリアなプラスチック製レンズを採用したものが増えてきている。ところが、調整するために片側のランプを覆うと、熱が逃げないでレンズ内に溜まってしまいレンズが溶けてしまうという事態を招く。以前のガラス製のものだったら大丈夫だったのだが。

せっかく整備費用を安くしようとしたのが裏目に出たことになる。巷では、光軸チェックがユーザー車検で不合格になる事が多いと言われているが、車が生産されたときの状態に近ければ狂うことはあまりないと思う。しかし、最近ではドレスアップのためにタイヤを替えたりサスペンションをいじったり、沃素球を変えたりすることが多い。思い当たる人で自分でやってみようと思っている人は注意しよう。

1999年6月15日

「トリプルAの意味」

先月、運輸省と事故対策センターが平成10年度の自動車安全情報を発表した。結果はTVのコマーシャルでも流されているように日産やマツダの車が運転席、助手席ともトリプルAだった。これを見るとこれらの車が他社より優れていると思ってしまうのだが一概にはそうともいえない。

なぜなら衝突試験の条件が時速50qでのコンクリートバリアに対するフルラップ前面衝突(俗に言う正面衝突の状態)だからだ。事故の形態には他にオフセット衝突、側面衝突、後面衝突、それに横転事故も見受けられる。しかし、これらのすべてに対応できるボディはない。フルラップは左右のサイドメンバーでエネルギー吸収を分担できるので前部を壊れやすくするがこの状態でオフセット衝突をすると車体の一部に大きな力が加わるため、事故の時にボディが潰れて乗員の生存空間が確保できないといわれている。

潰れないように作ると、フルラップ試験の場合にはボディが綺麗に潰れてくれないために、乗員に対する衝撃は大きく成らざるを得ないという。つまり、フルラップとオフセットの両立は難しくボディ強度のバランスをどのあたりに取るかによって今回のような結果になったようである。(ちなみにトヨタは事故対の発表があった後、東富士研究所にジャーナリストらを招いてオフセット衝突の公開実験をしている)そもそも自動車事故対策センターが行っている評価方法は、当初最高評価がAでありダブルA、トリプルAはなかった。評価がAなら十分安全な車といえると思う。しかし平成7年の初めての試験に全車の評価が最高のAだったためさらに細分化された経緯がある。基準ができれば最高の評価を取りたいと思うのが人情だろう。しかし、トリプルAにこだわってほかが犠牲になるとしたら本末転倒ではないだろうか?

1999年5月

「税制改革の目的は?」

政府は税制改革の中に燃費によって自動車税、重量税に格差をつける方針を打ち出している。燃費の良い車両は軽減、逆に燃費の悪い車両は増税しようというものだ。今回は二酸化炭素の排出量を押さえる為に燃費の良い車の購入を促すのが目的といっている。排気量、燃費、重量税と合わせて進めると二酸化炭素の排出の削減効果があるとなっているが、そうなるとメーカーはこぞって税金の軽減が受けられる燃費のよい車を開発、生産、販売するだろう。

これは逆に生産に必要な電力等を使うことになり二酸化炭素の排出量が増えてしまう事になる。また、ユーザーも当然、新車の購入を考えるに違いない。新車になればドライブにも出かけてみたくなる。そうすると新車等の販売や観光地から法人税の増収、当然ユーザーからは新車購入時に取得税、ガソリンの使用で揮発税の増収がみこまれることになる。最初から景気回復と税金の増収が目的なら今回の「燃費で税金に格差」もわかるのだが。

本当に二酸化炭素の排出量を押さえるのが目的なら別のやり方があるのではないだろうか?私個人の意見だが、例えば、今は自動車税、重量税、強制保険は固定制になっている。年間数百qしか使用しない人も年間数万Km使用する人も同じ金額だ。これを走行距離に応じて徴収すれば(ガソリン価格に上乗せするとか)ユーザーも二酸化炭素の排出量削減に無関心ではなくなると思う。ガソリンを燃やさなければ二酸化炭素は排出されないのだから。但し、税収は確実に減るし景気もさらに低迷する恐れもでてくるだろう。特に石油会社は打撃を受ける。しかし、将来を見据えれば未来永劫ガソリン車があるとは限らない。究極のエコカーといわれる燃料電池車の実用化も始まろうとしているのだから。

1999年4月

「最近の車の保険」

車の任意保険が自由化に成って、保険業界は競争が激しくなってきているみたいだ。ある外資系の会社は「今より安くなります」というようなPRを盛んにしている。しかも、今までにない17等級があるらしい。しかし、契約する我々にとって一番気になるのが、万が一の事故の時にきちんと対応してくれるのだろうかということだと思う。

宣伝文句にあるように24時間いつでも専門のスタッフが対応してくれるのだろうか?いまいち信用できないところがある。事故が起きてから初めてわかることで、「契約するんじゃなかった」と思っても後の祭りだ。ただ、割引率が大きいのは魅力ではあるが・・・。 また、最近になって「・・・・・保証」といって5〜10万円の修理費を保証するシステムも登場してきている。

コマーシャルを見ていると免許を取ったばかりのドライバーに勧めているみたいだが、いまどきの車でこの金額で直せるところはバンパーくらいだろう。日本の道路事情から考えてみると狭い路地などを走るときなど左側を電柱にこすったり、右左折の時に両サイドをこすったりしてしまう。このような場合は10万円以上かかると思う。しかも、一度しか使えないらしい。運転に慣れていない人にはいいかもしれないが、経験が長い人でもうっかりやってしまうものだ。できれば、保険を使わなくてすめば、それに越したことはないのだが、今の世の中いつ事故に遭うかわからない。そんなときに確実に対処してくれる保険会社がこれから求められていくと思う。「安かろう、悪かろう」では困る。

1999年3月

「車からでる廃棄物」

最近は、特に環境問題が新聞やテレビ等で連日のように報じられ、一般国民である我々も無関心ではいられなくなってきた。家庭からでる生ゴミや危険物は一般廃棄物と呼ばれるらしい。これらは徐々にではあるが、自治体や地域のスーパー等が協力しあって分別収集してリサイクルしたりゴミの量を減らす工夫をしている。

それに対して、工場等からでる廃棄物を産業廃棄物と呼んでいる。車のオイル等もこれに当てはまるらしい。この産業廃棄物の処理問題が遅々として進んでいないようだ。今まで個人でオイル交換をするときはカー用品の店でオイルを吸収させる箱を買ってきて、処理をしたら一般廃棄物として燃えるゴミと一緒に出すパターンが多いと思う。しかし、環境という観点から見たとき廃油を生ゴミ等と一緒に燃やしても良いのか疑問が残る。

そこで、今回試しに産業廃棄物として出してみようと思い調査してみた。その結果、ガソリンスタンドはどこもOKであった。ただ一軒だけ、ガソリンを入れてくれれば無料にするが廃油だけなら処理費を取るところがあった。ディーラーは、自分が車を購入したところ以外は引き取りそのものを断られてしまった。あと、カー用品の店は引き取ってくれるところもあるし、処理費を取るところもあるし、オイルを買って、そのレシートを見せれば引き取ってくれるところといろいろあった。

要は、産業廃棄物は俗に言う産廃処理業者が認可を受けて専門に処理しており、引き取ったところは、産廃処理業者に処理費を払って処理を依頼しているという構造になっているようだ。これからも無料で引き取ってくれるかはわからないがとにかく、無料で引き取ってくれるところがあればそこで引き取ってもらい決して家庭からでるゴミとは一緒にしないようにしたいものだ。

1999年2月

「車のメンテナンス性について」

新しい年を迎えたと思っていたら、もう2月になろうとしている。新年早々私の地域でも雪が積もり、板金屋さんは忙しかったみたいだ。何せお金をかけずにカーライフを楽しむのをモットーにしているので、我が家でも息子が左のフェンダーをへこましてくれて正月早々ハンマーとジャッキと馬鹿力で、板金屋のまねごとをする羽目になった。

今年はこの車の5回目の車検がある。もう1台別の車も最初の車検になっているので、点検整備の準備を少しずつ始めている。ユーザー車検の辛いところは、まとめて休みが取りにくいので一気に整備できない。少しずつ自分の休みの日にやっていくしかないのである。

それにしても、最近の車は横置きエンジンのFF(前輪駆動)が主流をなし、補機類の配置や吸気ダクトのレイアウトが複雑化、エンジンルームをきれいに見せるために取り付けられたカバー類などのしわ寄せが、メンテナンス性の悪化につながっているようだ。メーカーとしては、そこまでやる必要はないという自信の表れと取ることもできるが、(確かに故障しにくくはなっている)ベルト交換、プラグ交換、ウオッシャー液の点検等々最小限のメンテナンスさえもやりずらいか特殊工具がないと出来なくなってしまっている。何とも困ったものだ。とボヤいてみても始まらないので、整備書と睨めっこしながら持っている工具で出来る方法を思案している今日この頃である。

1999年1月

「車ってどうなるの?」

今、除夜の鐘を聞きながらこのコラムを書いている。この一年世の中は不況の嵐が吹きまくった。証券会社の倒産や銀行の破綻が相次ぎ、巷にはリストラされた人たちが「アテのない」再就職先を探している。また一方では毒物混入事件が相次ぎ、人々の心をすさんだものにしようとしている。さらに、ここにきて札幌と東京を結ぶ毒物宅配事件も発生した。まさに世紀末の様相を呈してきた。こんな暗い一年ではあったが、自動車を取り巻く環境を見てみると、そこには少しばかりの光が見える。

昨年末になって軽自動車の規格変更があり、小型車と軽自動車との差がほとんどなくなってきた。メーカーにとっては、1300tクラスまでの車は売りにくくなるのではないだろうか?環境面にも配慮した車も登場してきており優遇措置がとられている。またトヨタからはアルテッツァなるFRスポーツセダンも発売された。(これは全くの余談だがアルテッツァのチーフエンジニアの片山信昭氏は、若い頃(20数年前)駆動設計を担当していて、社内のチームTASCに所属してラリーをしていた人です。)

車は外から見ると進歩したように感じないが、着実に変わってきている。大気汚染の元凶といわれた排ガスも、ガソリンエンジンに関して言えば、家庭用石油ヒーターよりクリーンなものもある。21世紀の車は環境、省資源がキーワードになってくると思う。これらのことからこれからの車は棲み分けが進むものと思われる。街乗りや買い物用には燃費の良い軽自動車、通勤や仕事には排ガスの綺麗な車、ドライブには走りを堪能できる車と一家に二、三台の車が常識になるのかもしれない。そしてそれらを長く乗り続ける。(メーカーにとってはサイクルが短いほうが都合がよいだろうが)そうなると、肝心なのはユーザーの“車を見極める目”と言うことになってくると思う。自分に必要な車はいったい何なのかをじっくり考える必要があるのではないだろうか。コンビニに行くのにセルシオに乗って行ったりしていないだろうか?とにかくこれからもいろんな車が発売されてくるだろう。ユーザーとしては惑わされることの無いようにしたいものだ。

1999年は、安全や環境に対する技術が一段と進むだろう。景気は依然として悪いが徐々に明るい話題も増えるのではないだろうか。
“それにしても、景気が良くならないとどうにもならないよ〜”と思いつつ1999年を迎えて、新たに気合いを入れているところである。

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