管理者: 水谷 喬次
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COLUMN'98

「上抜き派? それとも 下抜き派?」

「“軽”ではなくなった軽自動車」

「車を自分で作る?!」

「「不適切なドライバー」にならないために」

「プリウスってどんな車?」

「やりすぎに注意!」

「携帯電話と車の運転」

「ガソリン Vs ディーゼル環境にいいエンジンはどっちだ」



1998年12月

「上抜き派? それとも 下抜き派?」

車のメンテナンスで皆さんが良くやられていることの一つに、エンジンオイルの交換があると思う。最近、町のカーショップやスタンドなどでレベルゲージの穴からオイルを吸い取るやり方が多くなっているみたいだ。一方、従来の方法にこだわりを持って、下からドレンプラグを抜いて交換する人も多い。どちらが良いかはそれぞれの言い分があり、その人のメンテナンスに対する考え方が見えて興味深いものがある。

まず最初に言っておきたいのは、上抜きにしろ下抜きにしろオイルの全量は排出されないことである。これは、ヘッドのオイル溜まりや各部の油膜という状態でオイルが残っているからである。そうなると簡単で汚れなくて済む上抜きのほうが有利に思うが、中には、チェンジャーのチューブが底まで入りにくい車種もあるらしいし、自分でチェンジャーを買って抜くにしろ、店で抜いてもらうにしろお金がかかる。お金をかけたくない人は下抜きになるのであるが、時間と手間がかかる。それだけでなく、ドレンプラグの位置によっては、チェンジャーで抜くよりも多くオイルが残ることがある。また、プラグのパッキンは再使用しないことになっているが、金属パッキンが使われるようになってからは交換する人はあまりいない。(私も交換したことがない)。これが飛んだ落とし穴になることがある。パッキンを交換しないのでオイル漏れが怖い。そのため、ドレンプラグを知らないうちに力いっぱい締め付けてしまう。締めすぎると変形する。単に変形で収まっているうちはオイル漏れも発生せずに済んでいるが、これを何度も繰り返すと亀裂が入り漏れ出すようになる。

以上のようにそれぞれにメリット、デメリットがあり、あとは個人の好みの問題といえそうだ。ただ、最近の新型車では、上抜き下抜き論争に終止符を打つようなエンジンも登場しつつある。例えば、プリウスの1NZ−FXE型エンジンの解説書の一部には「チェンジャーの抜き取りパイプがオイルパン最深部まで届く位置にレベルゲージパイプを配置した」と記載されている。オイルフィルタの取り付けを下向きにし、外した時にオイルがこぼれないようにもされている。
このように、これからはリフトアップの必要が無く、早くて簡単な上抜きを確実にする車が増え、チェンジャーも改良されていくものと思う。上抜きが当たり前になるのかもしれない。しかし、自分が下抜き派だから言うわけではないが、車の下にもぐってみれば今まで気が付かなかった不良個所を発見できるかもしれない。上抜きなら発見不可能なトラブルを、早期に見つけて大きな故障にならないうちに整備すれば、無駄なお金を使わずに済むと思うのだが。

1998年11月

「“軽”ではなくなった軽自動車」

10月になって軽自動車の新衝突安全基準に合わせて、メーカー各社から続々と新規格車が発表された。8年ぶりに小型車と同じ安全基準が適用される。この新規格を驚異と感じているのは、リッターカーだろう。日産マーチやスターレット等リッターカーが人気を博しているが、サイズ・内容ともそれらに迫るものがある。この規格が決まるとき、メーカーは排気量のアップも目論んだのだが、運輸省に認めてもらえなかったという経緯がある。そうなると、新規格になって、車重は当然増えるわけだし、排気量が据え置きでは走行性能や燃費の悪化が予測されたのであるが、各社のデータを見てみると旧車以上の性能アップになっているようだ。改めて自動車の技術革新の凄さが実感できる。

そういえば昔、ホンダがF−1で連勝していた頃、あまりの強さにFIAがレギュレーションを変更しようとしたとき、本田宗一郎氏が「大賛成だ!これでホンダの連勝は続く。」というような意味のことを言っていたのを思い出した。それだけ日本の技術力、特にコンピュータ制御のうまさは特筆するものがある。今の世の中、経済不況で個人消費が極力抑えられている中、起爆剤になれるのか、今後の動向に注目したい。私個人としては、国内で乗るのならば価格・維持費を考えれば新規格軽自動車は一番ぴったりくる車だと思っているのだが。

1998年10月

「車を自分で作る?!」

キットカー部品先日、ある雑誌を見ていたら車を自分で組み立てるキットカーの記事が載っていた。国内で10番目の自動車メーカーとして、ユニークな車を数々制作し販売している光岡自動車から、50t1人乗りの超小型車が発表されたという内容だ。興味があったので、少し詳しく調べてみたらMC−1,K−1&2の2系統があり、MC系は完成車として販売され、車いじりの好きな人向けにはキットカー「K」シリーズが販売される。さらにこのキットカーには、エンジンが組み立てられた「エンジン完成キット」とエンジンまですべてを自分で組み立てる「組立キット」がある。ボディ/シャシー/足まわり/エンジンなど、部品点数は約1000点で、メカニズムに詳しい人なら約10時間で組み立てられるそうだ。

さて、問題はユーザー自身が組み立てたキットカーの安全性についてどうするかだ。一番問題と思われるのが部品の「締め付けトルク」だろう。トルクレンチを持っている人が世の中にざらにいるとは思えないのである。運輸省では、「従来なら行政指導という方法もあったが、これを規制する法律はなく、規制緩和の時代でもあり、当面はユーザーの自己責任にゆだねる」考えのようだ。運輸省の柔軟な姿勢を評価したいが不安もある。世の中にはトルクレンチを使わなくても自分の指先(腕先?)で、結構正確なトルクを出してしまう達人みたいな人もいるのだが全部が全部そうではない。レンチを買って作ってみたい気もするが、どうしたものか?
なお、このキットカーは原付と同じで各市町村の役所に申請し、普通自動車免許で公道を走ることができる。
ちなみに、車両本体価格は32万5000〜あるそうだ。大人のプラモデルとして1台如何かな?

1998年9月

「「不適切なドライバー」にならないために」

今月のタイトルは、某国大統領の「不適切な関係」ならぬ「不適切なドライバー」。これについて一言。

最近の車は、安全を重視して開発されている。ABSしかり、SRSエアバックしかり、何々ボディしかり。さらに、各種センサーによって車の挙動制御が行われ、車をより安全な乗り物にする方向で開発が進んでいる。これはこれで、まことに結構なことと思う。(将来的には、単なる移動体になるかも?)これに対して運転するドライバーの「開発」は進んでいるのだろうか?車の能力とドライバーの能力が反比例しているような気がしてならない。車のほうで勝手にやってくれるものと錯覚しているところがある。 一つの例を挙げるなら、ABS付き車で思い切りブレーキングできない人がいる。メカニズムから言えばABSは設定値以上の油圧が発生して初めて効果を発揮するものである。なのにその圧力までブレーキペダルを踏めない。結果、事故ってしまう。(ちなみに、舗装の乾燥路面では時速80qまでは4輪フルブレーキングしたほうが停止距離は確実に短くなる。)この事はどこに原因があるのだろうか?

今の交通事情ではなかなか経験できないとか、自動車学校等で教育されていないとか、そんな危険な運転はしないとか、自分は事故を起こさないとか、色々あると思うが、一番肝心なのは、ドライバーが車の運転に対して危機感を持っていないことである。鈍感になっていることである。ざっと思いつくだけでも、携帯電話を使用しながら、ひげを剃りながら、化粧しながら、スリッパを履きながら、新聞を読みながら、等々の「ながら」運転しているのをよく見かける。

私事で恐縮なのだが、私は免許を取るときに「絶対交通事故は起こさないぞっ」と思った。そうするにはどうしたらよいかを考えた結果、ラリーをやりだしたのであるが、(ラリーは一般の道路を使用して行われ、日常の運転よりも高いレベルの環境下で運転することが多い。)今になって思うと非常に役に立っていると思う。抽象的な表現で理解しにくいかもしれないが、まず「車と話ができるようになった」こと、「他の車とのコミュニケーションがとれるようになった」こと、「臆病になった」こと、この三つのことで今の自分があると確信している。車の運転とは、常に先を読むことだと思う。「ながら」運転をしていては対応が遅れるのは当たり前だ。

車はあくまでも「走る凶器」なのです。全知全能、自分の五感を働かせ、「引くときには引く!」感じでセルフコントロールし、車に運転してもらうのではなく、自分が車を操れるようになる事。事故はコンマ何秒、数pの差で回避できることが多い。現在では、危険回避のトレーニングをしている所もボツボツ出来始めている。インストラクターもいてみっちりトレーニングできるし何よりも自分の技量が把握できる。こうした経験をどんどん積めば事故はもっと減ると思う。ぜひ自分の能力を「開発」して安全で快適なカーライフを楽しんでいただきたいと思う今日この頃である。

1998年8月

「プリウスってどんな車?」

世界初のハイブリッドカーであるプリウスが97年12月末に発売されてから半年以上が経過した。広報の話では、現在8000台の受注があり、すでに4500台がユーザーに渡っているが、この6月から月産1000台が2000台に引き上げられたと言っている。車については、すでにいろいろマスメディアによって紹介されているので省略するとして、走り方(走らせ方)で燃費がどのように変化するかについて、今回ディーラーの御好意で試乗できたのでレポートしてみたい。

車輌はディーラーの試乗車。燃費計測用に診断用テスタS2000を使用した。これを、運転席の足元付近にあるデータリンクコネクタに接続する。今回は、燃料噴射パルスから消費量を計測。そのほか平均車速や走行距離などが表示される。コースは、一般市街地、山岳路、流れの良い幹線道路、高速道路、の4パターンを普通の走り方と、エコラン的な走り方の二通りで実施した。個々のデータは省くが、普通の走り方で、19.8q/g、エコラン的な走り方で28.1q/gであった。この結果からいえることは、

  • 「とにかくモーターだけで走る!」 プリウスは、発進の時と45q/h以上になるとエンジンがかかるから、まず発進したら一度アクセルを離してエンジンを切る。それからアクセル開度を少なくして、モーターだけの走行に徹する。
  • 「回生ブレーキを積極的に使う!」 モーターだけで走っているとバッテリの容量が少なくなりエンジンがかかるから、赤信号の手前や下り坂では回生ブレーキを使ってエネルギーの回収に努める。DレンジよりもBレンジのほうが、回収率がよいのでシフトチェンジをする。

以上、2点が燃費を伸ばす上で重要であることが判った。今回テストしてみて実感したのは、アクセルの踏み加減が燃費に大きく影響すること。エコラン的な走り方は、あくまで燃費を伸ばすために微妙なアクセルワークを必要とする“ガマン運転”による結果である。メーカーが言っている従来車の2倍の燃費は、達成しているかに思える。しかし、本来は元気に走っても良好な燃費が得られることが必要だ。日本は山国なので道路のアップダウンが多く、交通状況やドライバーの運転技術など条件はいろいろであり、車には大きな対応力が求められる。プリウスのさらなる熟成を期待したい。

1998年7月

「やりすぎに注意!」

今回は、車のメンテナンスについて考えてみたいと思う。ある日、私の友人からTELがあった。「車が動かなくなった。」とのこと。駆けつけてみるとエンジンが焼き付いている。本人にいろいろ聞いてみると、7年落ちの中古車を購入したのでメンテナンスには気を使っているとのこと。その内容はと言うとエンジンオイルは最高クラスのグレードのものを3000qで交換、エンジンフラッシングは毎回実施、エンジン及びガソリン添加剤使用、エアフィルターもこまめに点検している。

以上が主なものである。その他いろいろメンテナンスしているみたいである。そこで、詳しい状況を聞くと「高速を走ってきてインターを出たところで突然油圧低下のランプがつきエンジンがロックしてしまった」と言うことである。そこでオイルパンを外してみるとオイルを吸い込む網のところにスラッジがびっしり付いていたのである。推測してみると、前のオーナーがあまりメンテナンスをしていなかったとしたらこびりついていたスラッジが度重なるフラッシングと添加剤で一気にはがれ落ちたものと推測される。(間違っているかもしれないが)これに似たようなことは自分も過去に経験している。キャブクリーナーを使用してエンジン不調になったり、燃料添加剤を使用して残量警告灯がつかなくなったりした。それ以来、添加剤は使わないようにしている。

メーカーの技術者に聞いてみると、「ここ10年ぐらいの車は”取説”どうりにメンテナンスしていれば大丈夫。それ以上しても無駄な出費だ」とのこと。特に添加剤は相性みたいなものがあり使用に当たっては注意を要する。 メンテナンスをするときはくれぐれもやりすぎないように必要最小限にとどめたほうがよいようである。

1998年6月

「携帯電話と車の運転」

最近というか以前から気になっていることがある。それは運転中の携帯電話の使用方法である。確かに携帯は便利で、広く普及しているがその使い方は千差万別のようだ。メディアを通して運転中の使用を控えるように注意を促してはいるが、実体は大多数の人が運転中でも使用しているようである。

先日も私の目の前でそれらしき車が事故っていた。後ろについて走っていたのであるが、数百メートル手前から急に挙動がおかしくなり、道路脇の電柱に衝突した。本人が動けなかったので処置を手伝ったのだが、(女の子だったので)後で聞いてみると携帯がかかってきて目線を一瞬、離したらしい。このような事故は警察庁の統計でも増える傾向にある。事故にならないまでも、スピードが不安定になったり路肩に停車したり結構周りに迷惑をかけている。メーカーでもいろいろ対策を考えているようだが、現状ではこれだという機種はまだ無いようである。それでは、運転中の使用をやめればいいのだろうか?。確かに、やめれば事故は減るだろう。しかし、それでは携帯を持つ意味が無くなってしまう。利用者にとっては、いついかなる時でも電話をかけたり受けたりできることに最大の利用価値がある。

昨年のモーターショウにナビゲーションシステムをプレゼンテーションしていたメーカーがあった。アメリカのメーカーだが、会場で見たビデオによると、人間の声で指示を言えば情報を音声と画面で教えてくれる物だった。運転しながら同乗者とお喋りしているような感覚である。これに携帯も使えるようにすれば事故や迷惑運転も減るのではないだろうか?目線が離れないし、何よりも手を使わないのがよい。技術的には近い物があるみたいだが(VICS対応のナビゲーション)インフラが整備されていない。お役所の゛規制緩和゛に期待してみましょう。それまでは、自分で考えて迷惑にならないようにしたいものだ。

1998年5月

「ガソリン Vs ディーゼル環境にいいエンジンはどっちだ」

今は満開の桜も散り、春らしい空気を胸一杯吸いたいと窓を全開にしてドライブしたい今日この頃。しかし、室内に入ってくる空気はなんだかとても臭い。そう。言わずとしれたバスやトラック四輪駆動車のあの黒い煙である。何しろディーゼル車は、発進や坂道で黒煙を吐くし、NOxもたくさん排出する。おまけに使用燃料の軽油に通称“麦(むぎ)”と呼ばれる燃料もあるらしい。どう見ても、ガソリン車のほうが環境に良さそうだ。ところが、ディーゼル車は燃費がいい。燃費がいいということはCO2の排出が少ないということで、地球の温暖化を抑えられる。もし、排気ガスをもっとクリーンにできれば最高のエンジンになる。ネックになっているのが、触媒がまだ無いということ。これさえできればガソリン車なみのクリーン度になると言われている。さらに、排気管の途中に付けて黒煙を集めるフィルターも、大きな効果が期待される。しかし、どちらも時間がかかる。

そこで、最近盛んに宣伝しだしたのが、コモンレール式と呼ばれる燃料噴射方式である。すでに、ヨーロッパでは、メルセデス・ベンツのC220CDIがある。コモンレール式の最初は、イタリアのアルファロメオだったが、ボッシュがそれを開発したイタリアのメーカーを買収してメルセデスに採用したのである。燃料を高圧にしてコモンレールに貯めておき、インジェクターはバルブとして働く。噴射圧は1350気圧となっている。日本では、いすゞが乗用車レベルでの小型コモンレール式直噴エンジンの4JX1−TCを初めて実用化した。こちらは、USキャタピラー社のパテントによる油圧アシスト噴射。1400気圧で噴射する。どちらも、DOHC化し高効率を目指している。これらの技術は、ディーゼル車の排気ガス規制をクリアーするためのもの。来年10月に規制の強化が完了すると、それ以降の新車販売のディーゼル車は、黒煙が見えなくなると言われている。早くそうなって欲しいと願うのは、私だけではないと思う。

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