ちかごろ思う事

 

子育てについて その2

平成17年9月17日

目    次

○ 今、日本の子供の置かれた現状はどのようになっているでしょうか?
1 豊かな生活環境
2 少子化


○ 今の子どもの問題点
1 自己主張の欠如
2 耐性の未発達
3 人間関係が希薄


○ 解決策
1 第一反抗期が最初のポイント
2 耐性の獲得
3 遊び下手
4 思いやり
5 善悪の判断


○ 終わりに

○ 今、日本の子供の置かれた現状はどのようになっているでしょうか?

1 豊かな生活環境

私は昭和17年に生まれました。
父親は軍医として第二次世界大戦に出征し戦死しました。
しかし、祖父が医師として頑張ってくれたため、
当時としては恵まれた生活をすることができました。
そのため周囲の人からはお坊ちゃんと言われました。
理由はあの子はお米のご飯を食べている。
当時は麦御飯がほとんどでした。実際は私の家でも麦御飯を食べていました。
もう一つは朝牛乳を飲むということでした。確かに毎朝牛乳を飲んでいました。
そしてあまり家事の手伝いをせず勉強をしているということでした。
当時は農繁期といって農業が忙しい時は学校を休んでよいことになっていました。
今のあまり恵まれない子供でも当時の私よりずっとよい生活をしていると思います。
それは大変よいことであり、そのためによくなったことも多いのですが、
なかには逆に失ったものもあると思います。
では、どんなことを失ったのでしょうか?
まず、昔は暖房というものは火鉢くらいでした。
その中には炭や練炭が入れてありましたが、それで暖まるのは手くらいでした。
もちろん冷房などはありません。
ラジオはありましたがテレビはありませんし、ファミコンなどあるわけがありません。
ですから、家の中なんかいられなかったので毎日外へ遊びに出ました。
そして小学校1年生から6年生くらいの年代で集団を作り、
夏は矢作川へ魚採りや泳ぎに行き、冬は校庭や田圃の中でたこ揚げやいろいろな遊びをしました。
そして遊びの名人がいて新しい遊びを編み出し、みんなを上手にまとめてくれたものでした。
しかし、今は暖冷房の効いた快適空間で2,3人の同年代の子どもが集まり、
ファミコンなどで遊ぶのがやっとのようです。
また、文明が発達していなかったので、何をするにも時間がかかりました。
例えば、お風呂を沸かすにしても、風呂に水を入れて、ガスに火をつけて、
タイマーが鳴ったらガスを切って終わりというわけには行きません。
私は矢作町でしたのでまだ水道がなく、風呂に水を張るのが一仕事でした。
私も10円欲しさによくやったものです。
それから、火をおこします。そして湯加減を見ながら徐々に消して行くわけです。
ですから子どもの仕事もいっぱいありました。
それが今は、塾通いや宿題が子どもの仕事になってしまいました。

2 少子化

日本の1人の女性が子供を産む数の平均が1.34人になってしまいました。
これには2つの問題があります。
1つは1人の女性が2人子供を産んで1人も死なさないで育てて初めて人口が維持できるわけです。
この1.34人が続きますと、次の世代では人口が1.34/2以下つまり33%(1/3)以上減少してしまいます。
1億3千万人の1/3すなわち約4300万人の人がいなくなってしまうわけです。
東京、大阪、名古屋など大都会が空っぽになってもまだ足りないくらいの人口の減少になります。
これも大問題なのですが、これは別の機会に取り上げるといたしまして、
もう一つの問題は1人子、2人子の家族が大半を占めてしまうことだと思います。
親の側から見れば少なく産んで大切に育てる。
子供の側から見れば兄弟間の関係から得るものが少ないということになります。
ですから親、特に母親は少ない子どもを大事に育てようということになります。
それが高学歴期待につながります。
試験勉強以外のほとんどを犠牲にすることにより、いろいろな問題が生じてきても不思議ではありません。

○ 今の子どもの問題点

それらのことから今の子どもの問題点を述べてみます。

1 自己主張の欠如

第一反抗期のない子どもが多いのです。
私は登校拒否(不登校)の子どものカウンセリングを行っていますが、
その子達の大半はこれがないのです。
その子達は自我の芽生えがなく育ってきてしまったような気がします。
これからの社会は自己主張の出来ない人は置いてきぼりになるのではないでしょうか。

2 耐性の未発達

次に我慢する力の極端に少ない子供が増えてきました。
昔は、暑さに耐え、寒さに耐え、何をするにも不便で手間と労力がかかる。
そんなところから忍耐力が生まれてきたと思います。

3 人間関係が希薄

家族の絆が弱まっているように思われます。
また、友達関係においても上の子が下の子に遊びを教えながら育っていくという文化が途切れたことと、
友達を作ることの下手な子が増えたということだと思います。

○ 解決策

それでは私が今行っている解決策について述べたいと思います。

1 第一反抗期が最初のポイント

自我の芽生えと自己主張の出来る子にするために先ほども申しましたように第一反抗期がまず最初のポイントとなります。
この反抗期が出なければいけないかというと、それはよく分かりませんが、
それを母親が上手に処理しますと、反抗期がなくても自我が芽生えてくるのかもしれません。
しかし、何らかの原因で反抗期が抑制されてしまった場合どうすればよいでしょう?
そんな時私はもう一度赤ちゃんからやり直すようにお願いしています。
もう一度赤ちゃんに戻してべたべたしていると、しばらくして反抗期が訪れます。
第一反抗期はどうしても親子のべったりする時期が終わってから来るもののように思います。
また自己主張の出来ない子には日常生活のあらゆる場面でそれを促します。
たとえば、
「今日何が食べたい?」
「カレーライス」
「じゃあ、一緒に作ろうか」
「どう?おいしかった?」
「うん、もうちょっと辛いのが好き」
「じゃあ、こんどルーをかえてみようか!」
という具合にどんどん考えを引き出していくことが大切だと思います。
「今日何が食べたい?」「なんでもいいよ」「おいしかった!?」「まあまあ」では
ちょっと問題があるかもしれませんね。

2 耐性の獲得

昔は、暑さ寒さに耐え、また不便な生活に耐えてきたために自然に我慢する力が身についてきました。
しかし、不便な生活に戻ることは出来ません。
そこで私は次のことを推奨しています。
まず、顔を洗う、歯を磨く、3食きちんと食べるなどの生活習慣を身につけることです。
こんなこと当たり前だと思うかもしれませんが、私の所へ通っている不登校の子のなかには、
顔を洗わない子が何人かいるのです。
そんなことは大したことではないのですが、毎日やるためにはけっこう努力が必要です。
それが簡単に出来るようなったら、お手伝いを開始します。
それも1回だけなら大したことはないのですが、
毎日するのにはちょっと努力がいるものを選びます。
やりたくない日もやることに意義があります。
そしてそれも簡単に出来るようになったらもう少し大変なことをやって貰います。
そうすることにより我慢する力が身に付くことと、
世の中にはやりたくなくてもしなければいけないことがあるのだよということ、
あなたも小さいながら我が家の一員だよということを教えていきます。

3 遊び下手

これはもう遊んで貰うしかありません。
基本的には保育園に入る前に(乳児保育は別)他の子どもと会っても怖じけずかないようにし、
学校へ入る前に友達と遊べるようになっていなければなりません。
そのためには公園デビューを果たしたり、お絵かきやスポーツの塾を利用するのも致し方ないかと思います。
なるべく色々な年代の子と遊んで下さい。
それが耐性の獲得にも自我の形成にも役に立つと思われます。
それからなるべく喧嘩は止めないで下さい。
自分たちが引き起こしたことは自分たちで解決させて下さい。兄弟喧嘩も同じです。
それによって強い方は何処までやってもよいかを学び、
弱い方はどうしたらこの窮地から逃れられるかを学びます。
ファミコンをどうするかという問題ですが、
全面禁止では子供が友達の話題についていけなくなります。
あまり全面禁止も如何なものでしょうか。

4 思いやり

いじめが横行しています。
うちの子はいじめる側だから心配ないと思わないで下さい。
現在はいじめる側にも十分責任をとって貰います。
この思いやりの心は親が教えていったり、親を見習ったりして身につけていくものだと思います。
その他に私は植物を育てることを薦めています。動物でもかまいません。
例えば、朝顔の種をまきます。
芽が出てきます。
毎日水や肥料をやり大きくなって待望の花が咲きます。
そんなことからも思いやる気持ちが出てくるのではないでしょうか。

5 善悪の判断

善悪の判断がわかるのは3才くらいからと言われています。
これも親が教えるものです。
お母さんとスーパーなどへ行ったとき、お店のものを持ってきてしまいます。
それは自分のものと他人のものの区別が付かないからです。
そんな時、お母さんはお店の人にちゃんと謝り、これはあなたの物じゃないんだよと教えていきます。
また電車で靴のまま座席に上がったときはここは人が座るところだから駄目ですよと、
座席をきれいに払ってやります。
そんなことで「やっていいことと悪いこと」を教えていきますが、
言ってるそばから親がタバコを捨てていては何にもなりません。
子供は親を見て育ってきます。

○ 終わりに

最後に「子育ては失敗と微調整の連続である」ということを忘れないで下さい。
失敗した!ああすればよかった!もう遅い!などということは決してありません。
必ず間に合います。
冷静に何処が悪かったかを考え微調整すればよいのです。
その時、右だ左だと舵を切りすぎては子どもが何がなんだか分からなくなってしまいます。
そんなときは信頼できる人に相談して慎重に舵を切ることをお奨めします。

Akihiko Fukada